Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

同情心と宗教: ダーウィンの掻き切れない痒み

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デニーズ・オレアリー
2021/10/24

 

先週の日曜日、私は『The Comprehensive Guide to Science and Faith: Exploring the Ultimate Questions About Life and the Cosmos (English Edition)』(2021) に書いた進化心理学の章について指摘しました。進化心理学とは、完全に人間ではない祖先から私たちが受け継いだ心理学として最も良く理解されるものです。

 

「完全に人間ではない祖先」?そうです、従来の進化論を少しでも信じるならば、私たちには完全に人間ではない祖先がいると考えなければなりません。したがって、心臓・脳卒中財団への寄付や人気科学雑誌の購読といった形質の起源を理解するためには、そのような機関が存在する前の、ある種のおぼろげな可能性があった時点まで戻らなければなりません。しかし、先週の日曜日に述べたように、精神の化石というものは存在しないので、実際にはそんなことはできません。

 

初期の人間の精神について、古代文化から得られる情報はこの質問に実際には答えていません。もし、5万年前の永久凍土からネアンデルタール人を解凍して、コミュニケーションをとったとしたら、何が起こるでしょうか?

 

これはひとつの可能性です。彼はフットボールとビールとフレンチフライが大好きなことが判明しました。彼は鹿狩り用ブラインドの中では最高の仲間です - とても静かで、射撃もうまいのです。そしてある日、吹雪の中でキャンプに戻り、夜通し何時間も座っていると、彼は自分の宗教について語り始めます・・・さらには、今は永遠に失われたある女性が自分をもっと理解してくれていたら・・・と。

 

私たちが接しているのは本当に人間心理の最底辺でしょうか?そんなことはまずないでしょう。彼は、1964年にカナダのオンタリオ州で生まれ、ピーターバラの近くのどこかで鹿狩り用のブラインドから出てきたということもありえるでしょう。

 

そして、初期の人類の工芸品や表象物を少しでも解釈できる限り、それらは人間の工芸品や表象物なのです。

 

現存するすべての人間は人間の心理を持っています。では、基本的な形質の進化を理解するのに役立つ、完全に人間ではない者の心理についての確固たる証拠を得るにはどうすればいいのでしょうか?自然主義者が同情心や宗教のような形質を完全に進化論的に説明するには、少なくとも最初は、それらが必要になるでしょう。

 

研究者の中には、遺伝的に私たちと近い関係にあるということに基づき、チンパンジーに注目する人もいます。残念なことに、チンパンジーは宗教や組織的な慈善活動、芸術、科学など、私たちがまさに説明を求めているトピックを発明しませんでした。したがって、私たちの行動が、現在の状況ではなく人類以前の過去に由来すると言われると、進化心理学は依然として対象のない学問です。しかし、進化心理学者が同情心と宗教についてどのように言っているかを見てみましょう。

進化心理学の観点からは、同情心の目標は常に利己的な遺伝子を広めること

思いやりは、「ダーウィンの脇腹に刺さった異常なとげ」、「生物間の冷酷な生存闘争についてのダーウィン的見解からすると、解決しなければならない難問」と呼ばれてきました進化心理学者は、同情心、自己犠牲、静かなヒロイズムなどと呼ばれる資質を再構成するための最初のステップとして、それらの名称を変更しました。現在、これらの資質は大まかに「利他主義」と呼ばれています。これらは、精神を持たない働きアリが自分の子孫を残す代わりに女王に仕えることで自分の遺伝子を伝えるのと同じ範囲の一部であるとみなされています。

 

進化論者のウィリアム・ハミルトンは、この考え方を数学的に記述し、「包括適応度」と呼び、ご覧の通りにそれが科学になりました。その後、このアイデア大規模な論文戦争に発展しました。この論文戦争は、多くの第三者にとっては理解しがたいものでした。肝心なのは、進化心理学の見解では、

 

利他主義についてのあまり厳密ではないダーウィン的な説明も数多くあり、大抵はリチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」の意見を借用している。人間は、社会性の昆虫、細菌、ウイルスとともに、「遺伝子産物を共有し、寛大としか言えない仕方で振る舞う」のである。その他にも、利他主義は単なる操作の一形態であるとか、私たちの遺伝子に組み込まれているのではないか (「結局、人間は生物有機体に過ぎないのだ」) と言われている。あるいは、利他主義は交配のシグナルであり、実際にセックスパートナーを増やすことができるという見解もある。それにより、協力的な繁殖や子育てが可能になるなど、「集団の必要性」に仕えることができるというのだ。

 

あなたには、これが科学のように感じられますか?私には、ダーウィンのゴミ箱を空にするような感覚です。

 

オックスフォード大学の生理学者であるデニス・ノーブルは、リチャード・ドーキンスの「利己的遺伝子」には科学において経験的根拠がないと述べています。「利己的遺伝子」は、「これまでに発明された中で最も成功した科学のメタファーの1つ」ではありますが、実際の遺伝子の働きとは一致していません。デビッド・ドブスもAeonで同様の点を指摘しています。

 

例外的に利他的な人が、自分の遺伝子を広めたいという欲求に支配されているかどうかは明らかではありません。多くの人が信念を持って独身を貫いています。しかし、これまで見てきたように、進化心理学的な説明は、特に有益である必要はありません。完全に自然主義的であり、ダーウィニズムから逸脱していない限り、明白な事実を説明できなくても及第点なのです。このことは、進化心理学による宗教の説明を見たときにもわかるでしょう。

進化心理学: 宗教は良いものでも、悪いものでも、役に立たないものでもありえるが、現実に正確であることだけはできない

人間の振る舞いのあらゆる側面をダーウィン化することが「科学的」であることは、進化心理学者の間では疑われていません。彼らにとっての問題は、宗教が生存のための進化的適応としてどのように機能しているかということであって、それに真実の主張は関係ありません。

 

第一に、宗教が有用な適応である可能性です。心理学者のジョナサン・ハイトは、「人類の進化では、自己を失い、他者と融合することが適応的であった期間が長かった。個人がそうするのは適応的ではなかったが、集団がそうするのは適応的だった」と推測しています。また、宗教は有用な形質に寄生している副産物と考える人もいます。

 

しかし、宗教を悪い適応と考える理論家もいます。進化生物学者のジェリー・コインは、アメリカ人がダーウィン進化論に疑念を抱いているのは宗教的な信仰が原因であるとし、それは社会的機能不全と高い相関関係があると主張しています。私たちの周りで観察できる宗教と適応の関係は雑多なもので、どちらかの理論を好む理由はなく、また、理論化の根拠である「宗教は生存を助けるために始まった」という説を受け入れる理由もありません。

 

宗教についてのこれらの理論 (有用、無用、有害) には、2つの共通点があります。まず、これらの理論は概して、現実の宗教とは噛み合わずにこぼれ落ちています。例えば、最近のある研究では、信者は無意識のうちに、論争の的になるような問題について自身の信条を神に付与していると主張しています。しかし、もしそれほど単純なことならば、信者が好まないこと (断食、貧しい人への多くの寄付) を行い、本当に好きなこと(マリファナの吸引、軽薄なセックス) をあきらめるように要求する宗教の多くの信者は、なぜもっと寛容な信条を神に付与しないのでしょうか?

 

ある人の研究が深い穴にはまっているのなら、掘り下げをやめてもいいはずです。もっとも、進化心理学の場合は、その穴が本業です。宗教が単に利己的な遺伝子の広がりではないという程度のものなら、進化心理学者には必然的に見えなくなります。

 

進化心理学の成果を見渡すと、考えさせられます。人間についてのすべてが進化論関係で説明できるわけではないという考えを真剣に受け止める、最も強い理由になるかもしれません。

精神の化石というものは存在しない

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デニーズ・オレアリー
2021/10/17

 

今月、『The Comprehensive Guide to Science and Faith: Exploring the Ultimate Questions About Life and the Cosmos (English Edition)』(Harvest House、2021年) が発売されました。このハンドブックの基本テーマは、編集者であるデザイン理論家のウィリアム・デムスキジョセフ・ホールデンが語るように、「科学とキリスト教はしばしば対立するものとして提示されるが、実際には宇宙の秩序と生命の複雑さがインテリジェントデザインを力強く証言している」というものです。

 

私は「What is evolutionary psychology?」という章を書きました。進化心理学 (EP) には、人間以前の(「進化的な」) 過去に訴えることで、人間の心理を理解する努力が関係しています。それゆえに進化心理学は、人間の様々な振る舞いを、完全に人間ではない者の間での、脳のモジュールに組み込まれているダーウィン的な生存のシナリオの無意識の実演として説明します。

 

したがって、私たちが物事を行う理由は、私たちが想定しているものとは全く異なるのです。

 

例えば、私たちが買い物をする理由は、進化によって次のように説明されます。「栄養も暖かさも快適さも与えてくれないものの中から有用なものを選別する採集民の技術が、やがて快適なショッピングモールやクレジットカードにつながった」。またゴシップは、「昔は、何が起こっているかを知ることに注意しないなら死ぬ可能性が高かったので、好奇心のない遺伝子を受け継ぐ可能性は低かった」。そういえば、些細なことで怒るのも、かつては私たちの生存の鍵だったのでした。

 

上記の例が示すように、EPは人間の困惑させるような振る舞いを説明するというよりも、従来の行動に対してダーウィン的な適者生存の説明を提示し、伝統的な説明に取って代わるものです。

 

例えば、なぜ私たちは性的に嫉妬するのか (見捨てられることへの恐怖ではなく、「精子の競争」)、なぜ私たちは目標に固執しないのか (進化は私たちに応急処置的頭脳を与えた)、なぜ私たちは音楽を発達させたのか (「サバンナに小さなパヴァロッティたちを点在させる」ため)、なぜ芸術は存在するのか (失われたサバンナを取り戻すため)、なぜ多くの女性が排卵日を知らないのか (知っていたら子供を持たないだろう)、なぜレイプしたり殺したりいろいろな相手と寝たりする人がいるのか (私たちの石器時代の祖先はこうした形質を介して遺伝子を受け継いだ)、なぜ大銀行が不正を働くことがあるのか (私たちは何が起きているのかを理解できるほど進化していないのだ)、となります。

 

EPはまた、 (繁殖適性を高める)、偽記憶 (あの背の高い草むらに虎がいるかもしれない...)、閉経 (男性が若い女性を追い求める)、一夫一婦制 (女性を支配するか、さもなければ嬰児殺しを防ぐ)、月経前症候群 (不妊の関係を解消する)、恋愛 (生殖への「組み込まれた」意欲)、傷ついた感情の反芻 (私たちの脳は悪い経験からは早く、良い経験からはゆっくり学ぶように進化した)、微笑み (以前は卑屈な反応だった)、宇宙への驚嘆の念 (初期の人間の生き方で説明される)なども説明します。

 

私は上記の章で、人生の側面や人間の行動を狭い意味での「ダーウィン的」な方法で説明しようとする現在の努力について、さらに多くの例を挙げています。これらの説明は、自分の行動を「科学的」に説明したいという多くの人のニーズを満たしています。しかし多くの場合、進化心理学の背後にある科学とは、説明を提供している人々が心理学の1つまたは複数の分野の学位を持っているという事実と、大衆メディアで簡単に売り出せるアイデアを思いつく才覚に過ぎません。その結果、多数の懐疑的な意見が出ています。

 

もちろん、望むのであればこのようなその場しのぎの進化心理学的な説明を受け入れるのは自由です。占星術や手相占いのように、会話の種にはなります。しかし、それらが「科学」であると主張してもそれらを強化することも信憑性を高めることもありません。

 

最近、アメリカの哲学者サブレナ・E・スミスは、進化心理学に対して鋭い攻撃を仕掛けています。彼女は、進化心理学が意味をなすような脳のモジュールやシステムを、神経科学が特定したことはないと指摘しています。

 

問題を簡単に説明すると、次のようになります。女性は月経前症候群のために苛立つかもしれませんが、彼女も相手の男性も、彼女が不妊であるために関係が壊れるべきだという意識はありません。あるいは、彼女が不妊症であるという意識さえないかもしれません。おそらく、彼らはどのみち子供を持とうとしていなかったのでしょう。彼女の不快感についての進化心理学的な説明は、彼女の不快感以外の何か (おそらくは脳内にある、より多くの繁殖につなげるために人類以前の祖先から受け継いだモジュールまたはシステム) が彼女の苛立ちを説明する場合にのみ意味をなします。しかし、そのようなモジュールやシステムは誰も見つけていません。彼女の苛立ちは、ホルモンの変動によるという従来の説明が依然としてより合理的です。

 

そして、仮定されたモジュール、あるいは研究可能な現存する人類以前の祖先がなければ、進化心理学は対象のない学問です。

 

進化心理学が焼いてしまおうとしている最大の魚は、同情心と宗教です。そして、そこから歯車が外れてしまうのです。

意識とはどこにあり、何であるか?

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デビッド・クリンホファー
2021/10/22 15:41

 

「Science Uprising」の挑発的なエピソードは、人間は「肉でできたロボット」にすぎないという進化論者ジェリー・コインの発言に端を発しています。もしコインが正しければ、意識の座は、全くの幻想ではないとしても、脳のどこかに位置していなければなりません。「Science Uprising」ではこの問題に、いつものように挑発的に、わずか7分余りで取り組んでいます。

この問題をさらに深く扱うために、「Theology Unleashed」チャンネルの新しいエピソードでは、2人の哲学的神経科学者、マイケル・エグナー (「Science Uprising」で紹介) とマーク・ソルムスが、人間の意識はどこにあるのか、あるいはないのかを議論しています。彼らは、意識の質は大脳皮質の投影ではないという点で一致しています。このことだけでも、二人は異端者だと言えるでしょう。また、エグナー博士とソルムス博士は、自己が純粋に物質的なものであるという考えを含む物理主義を否定しており、これもまた異端的な立場です。両者とも、哲学的な洞察力を持ち合わせています。ソルムス博士はバルーク・スピノンザの哲学、エグノア博士はアリストテレストマス・アクィナスの哲学というレンズを通して、自分の分野を考察しています。重なり合う部分と対照的な部分の両方が浮き彫りになる、魅惑的な対談でした。

私は以前はマーク・ソルムスについてあまり知らなかったのですが、非常に興味深い人物です。彼の新刊は『The Hidden Spring: A Journey to the Source of Consciousness (English Edition)』で、エグナーは、これまでに出会った神経科学に関する大衆レベルの著作の中では最高のものだと賞賛しています。

ハーバード大学出版局のコンピュータサイエンスの著者がAIに現実を突きつける

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ケーシー・ラスキン
2021/11/16 17:30

 

講演者は聴衆に、コンピュータは多くの印象的なことができるが、彼らは人工知能を実現することはできないと語りました。

 

今読んだ文の中で「彼ら」とは誰のことでしょうか?聴衆でしょうか、コンピュータでしょうか?

 

答えはすぐにわかりますね。コンピュータです。なぜなら、私たちはコンピュータに人工知能を持たせるにはどうしたらいいか、研究者たちが頭を悩ませていることを知っているからです。聴衆が人工知能を持っていると語ることに意味はありません。文中の「彼ら」の意味は、考えるまでもなく直感的に理解できます。

 

もし、この文章がこうだったらどうでしょう。

 

講演者は聴衆に、コンピュータは多くの印象的なことができるが、彼らは今年のモデルの1つを買ったことを後悔するだろうと語りました。

 

ここでも、「彼ら」が聴衆を指していることは、普通の人間には明らかです。しかし、驚くべきことに、コンピュータはこのような基本的な質問に答えるのが非常に難しいのです。それゆえ、「彼ら」が人工知能を実現することは決してないでしょう。

人間対機械の知性

このことは、今年ハーバード大学出版局から出版された『The Myth of Artificial Intelligence: Why Computers Can't Think the Way We Do』の著者であるエリック・J・ラーソンが、先週のDiscovery InstituteのCOSM 2021で行った講演の中心的メッセージです。

 

テキサス大学オースティン校でコンピュータサイエンスの哲学を学び博士号を取得したラーソンは、著書の中で次のように主張しています。「人工知能の神話とは、人工知能の到来は必然で時間の問題にすぎず、我々はすでに人間レベルのAI、そして超知能へとつながる道に乗っているというものだ。そんなことはない。その道は我々の想像の中にしか存在しない」。続けて、「すべての証拠が、人間と機械の知性は根本的に異なることを示唆している」と述べています。

 

ラーソンによると、コンピュータは計算することはできますが、機械の知性に欠けている重要な要素は、文脈を理解し、分析し、適切な推論を行う能力です。

 

「計算とは、既知の点をつなぐことであり、例えば代数の規則を適用することである。分析とは、点を理解し、それらを説明するための飛躍や推量を行うことであり、何らかの洞察が得られた場合には、計算を用いてそれを検証することである」と彼は書いています。だからこそ、コンピュータが文章の中の「彼ら」を識別するのは難しいのです。

 

彼は、定義が曖昧な代名詞を含む文章の例を次々と挙げています。人間は文章の文脈を見て、その代名詞が誰を指しているかを即座に理解することができます。コンピュータにはこの分析的な推論能力が欠けているため、行き詰まってしまいます。

 

ラーソンは講演の中で、訓練されたスーパーコンピュータは、ジョパディをプレイしたり食料雑貨店への道案内をしたりすることができると説明しました。その成果はメディアでもよく宣伝されています。しかし、「その間、誰もAlexaと話すことはできていません」。なぜなら、コンピュータには人間の会話の意味を理解するための直観力や推論能力がないからです。

 

これにより、コンピュータが達成できることには克服できない限界が課せられています。

 

ジョークを理解することも、新しいワクチンを発見することも、殺人事件 (ミステリー) を解決することも・・・単に世の中の雑多な出来事やコミュニケーションについていくことも、何らかの推論能力がなければ不可能なのです。

「失敗する運命にある」

ラーソンは、人間の技術に根本的な革新がない限り、人間にできることをすべて行える人工知能 (汎用人工知能) の作成を追求することは「失敗する運命にある」と聴衆に語りました。

 

この見解により、ラーソンの専門分野の人々からの彼の評判が良くなるということはありません。しかし彼は、AIの分野が進歩するためには、現実を突き付ける必要があると考えています。彼は著書の中で、人工知能の神話が、AIの進歩を可能にするブレークスルーをどのように妨げているかを説明しています。

 

それで、AIについての神話は悪いものだ。科学的な謎を継続的な進歩の終わりのない話で覆い隠してしまうからだ。その神話は、必然的な成功への信条を支えているが、科学に対する純粋な敬意があれば、私たちは最初からやり直そうとするはずである。核心的な謎を直視するのではなく、無視することを選べば、イノベーションを手にすることはないであろう。イノベーションのための健全な文化は、未知のものを探求することを重視し、既存の方法の延長線上にあるものを喧伝することはない。特にこれらの方法が我々をさらに進歩させるには不適切であることが示されているならば。

 

AIの成功は必然であるという神話は、人間レベルのAIがあろうがなかろうが、真の進歩に必要な発明の文化そのものを消滅させる傾向がある。

 

したがって、ラーソンは聴衆に次のように語ったのです。「究極の皮肉は、コンピュータ上で計算したり一般的な知能を作ったりする方法を解明するためには、人間のイノベーションが必要だということです。しかし、現在のAIは間違いなくその課題には不十分です」。

退化の目撃: マラリアが足を噛み切る

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マイケル・ベーエ
2021/9/30 17:09


機械的な罠にかかった動物は、自暴自棄になって、押さえつけられた手足を噛み切って自由になることがあります。その哀れな動物はその肢を失ったまま生涯の残りを過ごさなければなりませんが、少なくとも生き延びることができます。

 

歩みの遅い進化の類型が、この切迫したリアルタイムのジレンマに存在します。すなわち、ある種の何らかの特徴が、現在の環境において競争上不利な立場にある場合、その特徴を消去する突然変異が、将来の世代がよりよく生き残るための方法として選択されることがあり得ます。その悲しい例が、違法な象牙密猟の圧力を受けて、アフリカで牙のない象が急増していることです1

 

細胞・分子における同じ現象が最近ニュースになっています2。私たち人間も、マラリアの最悪の形態を引き起こす単細胞寄生生物であるPlasmodium falciparumを追い詰めて殺します。マラリア原虫に感染している疑いのある人は、多くの場合、クリニックで迅速診断テストによりふるいにかけられます。テストが陽性の場合、その人は抗マラリア薬で治療されます。テストが陰性の場合は、治療を控えます。

有益な損失

最も頻繁に使用される診断テストキットは、pfhrp2またはpfhrp3と呼ばれる2つの類似したマラリアタンパク質のいずれかが患者の血液中に存在するかどうかを調べるものです。『Nature Microbiology』誌に掲載された新しい論文「Plasmodium falciparum is evolving to escape malaria rapid diagnostic tests in Ethiopia」によると、これらのタンパク質をコードする遺伝子を削除したマラリアの変種がエチオピアで広まっています3。象の牙のように、これらのタンパク質は、他の条件が同じであれば、寄生虫にとって有用であると考えられます。しかし、環境が変化してそのタンパク質が正味では不利益になった場合には、それらを取り除くことが最も早い進化的解決策となります。これは生物学的に興味深い事実であり、医学的にも重要になり得ます。しかし、これは退化 (遺伝情報の有益な喪失) のもう一つの例に過ぎないことに留意するのは重要です。

 

また、退化は、人間が他の生物を狩る場合に限ったものではないことに留意するのも重要です。むしろ、遺伝情報の消失は、どんな状況や瞬間であっても、それが役立つのであれば発生すると期待されます。私はこの基本的な進化的概念を、2019年の本『Darwin Devolves: The New Science About DNA That Challenges Evolution (English Edition)』の中で、私が呼ぶところの「適応進化の第一法則」、すなわちその損失により子孫の数が増えるような遺伝子の破壊あるいは鈍化として捉えています。

参考文献
  1. D・F・マロン、2018年11月9日。「Under poaching pressure, elephants are evolving to lose their tusks」、『ナショナルジオグラフィック』。www.nationalgeographic.com/animals/article/wildlife-watch-news-tuskless-elephants-behavior-change (日本語版 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/111300246/)
  2. M・ルパージュ、2021年。「Parasite evolution is making it harder to detect and treat malaria」 、『New Scientist』。www.newscientist.com/article/2291463-parasite-evolution-is-making-it-harder-to-detect-and-treat-malaria/
  3. S・M・フェレケ他、2021年。「Plasmodium falciparum is evolving to escape malaria rapid diagnostic tests in Ethiopia」、『Nature Microbiology』。www.nature.com/articles/s41564-021-00962-4

天体物理学者イーサン・シーゲルは宇宙の始まりを避けようと再び必死に試みる

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ブライアン・ミラー
2021/11/8 4:02

 

先日、私はウェブサイト「Big Think」に掲載された天体物理学者イーサン・シーゲルの記事「Surprise: the Big Bang isn't the beginning of the universe anymore」に返答しました。私は、シーゲルが無神論者であり、宇宙の始まりが創造者を指し示すので、宇宙が永遠ではないという結論を避けたいと考えるのは理解できると述べました。私は、永遠のカオス的インフレーションとして知られる宇宙論的モデルに基づいて、宇宙には始まりがなかったかもしれないとシーゲルが論じたことを記述しました。最後に、ボルデ-グース-ビレンキン (BGV) 定理によって、永遠のインフレーションダイナミクスによってモデル化された宇宙にも絶対的な始まりがなければならないことが証明されているので、シーゲルの論議は失敗することを説明しました。シーゲルは、「Does modern cosmology prove the existence of God?」というタイトルの2番目の記事を「Big Think」に載せて私の批判に返答しました。この記事で、彼は自分の無神論的動機をはっきりと明らかにしつつ、またしてもスティーブン・メイヤーがすでに十分に扱っている論議を提示しています。

量子力学と因果関係

記事の最初でシーゲルは、メイヤーが『Return of the God Hypothesis』で詳述した、神についてのカラームの宇宙論的論証を概説しています。

  • 「すべての存在し始めたものには原因がある。
  • 宇宙は存在し始めた。
  • したがって、宇宙の存在には原因がある。」

シーゲルは次に、量子現象は原因なしに起こるように見えると主張して、第一の前提への挑戦を試みます。

 

・・・この原子がいつ崩壊するかという現象には原因がない。まるで宇宙には、ある現象を根本的に非決定かつ不可知にする、ある種のランダムで因果関係のない性質があるかのようだ。実際、もつれているスピン、不安定な粒子の静止質量、二重スリットを通過した粒子の位置など、同じようなランダム性を示す量子現象は他にも多く存在する。

 

この主張は、決定論と因果関係を混同しているため、非常に誤解を招く恐れがあります。量子力学は、二重スリット実験における光子の通り道のように、ある事象が起こる確率を記述しているだけなので、決定論的ではありません。しかし量子力学の法則は、私たちの宇宙において、そのような事象すべての因果的作用として働いています。量子理論家のジャコモ・マウロ・ダリアーノは、「Causality re-established」という論文の中で次のように述べています。

 

因果関係の観念は、誤認されている「決定論」という概念とは論理的に完全に独立しており、量子論の帰結として、物理学のいたるところに存在している。

 

一方、宇宙が存在する前は、量子力学的プロセスも他の物理法則も働いていませんでした。そのため、シーゲルが提唱するように宇宙を誕生させることはできなかったのです。

宇宙の始まりの回避

シーゲルは、宇宙には始まりがなかったかもしれないと再び主張して、2つ目の前提条件に挑戦しています。最初の記事と同じように、彼はインフレーション理論に訴えていますが、ここでは別の方針を取っています。彼は膨張している宇宙の体積は指数関数的に増大し、時間を遡っていく指数関数的な曲線が完全にゼロになることはないと論じています。したがって、宇宙は始まりがなく永遠に膨張してきているのかもしれないというのです。しかしこの論議も、宇宙の体積がプランクスケール以下になると、インフレーションモデルが破綻するという事実を無視しているため、失敗します。

 

この領域では、量子重力モデルのみが適用されます。量子宇宙論モデルの一分類には、スティーブン・ホーキングやアレクサンダー・ビレンキンが構築したような、宇宙の始まりを前提とするものがあります (こちらこちら)。モデルの他の分類では、宇宙は、収縮している宇宙から膨張している宇宙へと移行する跳ね返りに対応する最小のサイズまでしか収縮できないと仮定しています。例えば、ループ量子重力に基づくモデルです (こちらこちら)。これらの循環モデルでも、エントロピーが常に増加するため、始まりが必要です。現実的な量子モデルでは、永遠の宇宙は許容されません。

ボルデ-グース-ビレンキン定理

次いでシーゲルは、ボルデ-グース-ビレンキン (BGV) 定理が宇宙の絶対的な始まりを決定的に示しているという主張を否定しようと試みます。

 

確かに、20年ほど前に、常に膨張している宇宙が過去に無限に膨張していたはずがないことを証明する定理 (ボルデ-グース-ビレンキン定理) が発表された。(これは過去の時間的不完全性を表現する別の方法である。) しかし、インフレーション宇宙の前に、同じように膨張している段階があったことを要求するものは何もない。この定理には同様に、時間の矢を逆にすると定理が破綻する、重力の法則を特定の量子重力現象に置き換えると定理が破綻する、永遠にインフレーションする定常宇宙を構築すると定理が破綻するなど、多くの抜け穴がある。

 

具体的には、彼は天体物理学者のアンソニー・アギーレとスティーブン・グラットンが発展させた定常的な永遠のインフレーションモデルを紹介しています。提唱された宇宙では、ビッグバンの事象を表す、エントロピーが極めて小さく、空間が圧縮された特殊な状態が中心となっています。その宇宙は時間的に前方にも後方にも膨張しています。宇宙が過去に向かって無限に膨張しているので、BGV定理を回避し、始まりを必要としません。

 

ここでもシーゲルは、スティーブン・メイヤーがすでに徹底的に取り組んでいる論議を提示しています。メイヤーは著書の中でこう述べています。

 

BGV定理は、インフレーション宇宙論モデルが示唆する条件を含む、非常に一般的な条件を満たすあらゆる宇宙に適用される。アレクサンダー・ビレンキンが説明しているように、「この定理の特筆すべき点は、その圧倒的な一般性である。・・・我々が設けた唯一の仮定は、宇宙の膨張率がどんなに小さくてもゼロではないある値を下回らないということだった」。

- RETURN OF THE GOD HYPOTHESIS、125-126ページ

 

また、メイヤーは拡張研究ノートの注6cで、アギーレとグラットンのモデルが全く非現実的である理由を説明しています。収縮から膨張へ移行する際に、このような低エントロピーで圧縮された特別な状態に収縮するためには、無限の過去において宇宙への想像を絶するレベルのファインチューニングが必要です。もしこのモデルが妥当であれば、必要とされるファインチューニングのレベルは、始まりを取り除くことで避けようとしたものよりもさらに大きなデザインの証拠を提示することになるでしょう。シーゲルはこのモデルに訴えることで、哲学的なフライパンから火の中に飛び込んだようなものです。

宇宙の始まりを説明する試みが空想と現実の区別をつけられなくなる

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ブライアン・ミラー
2021/10/19 14:27

 

前回の記事では、宇宙物理学者のイーサン・シーゲルが、「永遠のカオス的インフレーション」と呼ばれる宇宙論的モデルに基づいて、宇宙に始まりがあることを否定する論議を提示したことを要約しました。結びに、スティーブン・メイヤーが『Return of the God Hypothesis』の中で、シーゲルの論議をどのように解体したかを説明しました。

 

ここでは、宇宙の始まりを避けようとするもう一つの必死の試みを取り上げます。これは宇宙物理学者のポール・サッターによるものです。彼はニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の高度計算科学研究所とニューヨーク市にあるフラットアイアン研究所の研究教授です。彼は最近、ウェブサイト「Live Science」に「What if the universe had no beginning?」という記事を掲載しました。サッターは、因果集合理論に基づく宇宙論モデルが、宇宙には始まりがなかったかもしれないことを示していると論じています。よく調べてみると、彼の論議も破綻しています。

因果集合宇宙論

因果集合宇宙論 (CSC) は、量子力学一般相対性理論の統一 (量子重力) への因果集合理論 (CST) の応用を基礎としています。このアプローチでは、空間は連続的ではなく、プランク長 (10-35m) のオーダーの大きさを持つ離散的な粒で構成されていると仮定します。空間の粒は、因果集合の元の形式を取り、元の間の関係は、空間が時間が離散的に増大する際にどのように変化するかを表現しています。

 

因果集合は、アインシュタイン一般相対性理論の場の方程式の数学的関係によって記述される動力学を、一般相対性理論が破綻する量子領域でモデル化するものです。因果集合の枠組みは、ブラックホールから出現する宇宙という文脈で宇宙学者によって採用されてきました。この文脈は、宇宙が崩壊し、ビッグバン現象で跳ね返って膨張状態になったことに対応しています。

サッターの論議

サッターは、物理学者ブルーノ・ヴァレイショ・ベントとスタブ・ザレルによるCSCを用いたプレプリント論文「If time had no beginning」を参照しています。彼は彼らの研究を次のように要約しています。

 

この論文では、「因果集合のアプローチにおいて、始まりは存在しなければならないかどうか」を検討したとベントは述べている。「本来の因果集合の定式化と動力学では、古典的に言えば、因果集合は無から現在の宇宙へと成長する。代わりに我々の研究では、ビッグバンという始まりはない。因果集合は過去に向かって無限に続くので、常に前に何かがあるのだ」。

 

・・・彼らの研究は、宇宙には始まりがなく、単に常に存在していたかもしれないことを示唆している。私たちがビッグバンと認識しているものは、この常に存在する因果集合の進化における特定の瞬間に過ぎず、真の始まりではなかったのかもしれない。

空想と現実の混同

サッターは、ベントとザレルの論文が宇宙の始まりを示す証拠に対して信頼できる反論を提供していると主張しています。しかし、この主張は、想像の領域で可能なことにのみ基づいています。参照された論文は高度に理論的で、物理的な現実からはほぼ切り離された、完全に推測的な宇宙論的モデルです。この点についてはサッターも認めています。

 

しかし、やるべきことはまだ多く存在する。この始まりのない因果的アプローチにより、我々が共働する物理理論が、ビッグバン中の宇宙の複雑な進化を記述できるようになるかは、まだ明らかではない。

 

ベントとザレルの論文が宇宙の始まりに対する信頼できる反論を提示しているという彼の主張は、ジャーナリストが新しい見込みのあるロケット燃料を想像している科学者にインタビューしてから、NASA冥王星に永続的なコロニーを設立できる方法をその科学者が実証したと主張するようなものです。このようなセンセーショナルな報道は、非常に無責任です。

振動モデルとエントロピー

また、仮にCSCの完成版がビッグバンを記述したとしても、宇宙の始まりを避けることはできません。CSCの支持者たちが想定できる振動宇宙では、ビッグバンの事象が因果集合の動力学に従って膨張段階へ移行しつつある収縮段階に相当します。このような場合、CSCは「跳ね返り」を記述するためにのみ必要になります。収縮も膨張も、振動宇宙の標準的な宇宙論モデルに従うことになります。スティーブン・マイヤーはその著書の中で、振動する宇宙にも絶対的な始まりが必要であることを説明しています。

 

具体的に言うとメイヤーは、宇宙学者のアラン・グースがエントロピーのために振動が無限に続くことはできないことをどのように実証したかを要約しています。

 

グースは、第二法則によれば、宇宙の物質やエネルギーのエントロピー (無秩序) は、各周期で時間とともに増加することを示した。しかし、エントロピー (質量エネルギーの乱雑分布) がそのように増加すると、各周期で仕事をするために利用できるエネルギーは減少する。そうなると、宇宙全体の質量エネルギー密度の不均質性が増大して、重力による収縮の効率が低下するため、膨張と収縮の周期がどんどん長くなってしまう。しかし、宇宙の時間が進むにつれて各周期の期間が必然的に長くなるのであれば、過去に遡れば各周期は次第に短くなっていくことになる。各周期の期間が無限に減少することはできないので、たとえ振動モデルであっても、宇宙には始まりがなければならない。

-『RETURN OF THE GOD HYPOTHESIS』、105ページ