Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

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スパイダーマン、多元宇宙、そしてインテリジェントデザイン

This is the Japanese translation of this site.

 

ケイシー・ラスキン
2022/1/4 13:28

 

最近、友人に説得されてスパイダーマンの新作映画を見に行ったのですが、多元宇宙が登場するだけでなく、プロット上でも重要な役割を担っていることに驚かされました。ネタバレしないようにしますが、ベネディクト・カンバーバッチ演じるドクター・ストレンジは、「多元宇宙は、我々が驚くほど知らない概念だ」と言明しています。彼は正しいです。そしてこれが、宇宙のファインチューニングについての驚異的な証拠を説明するために多元宇宙を引き合いに出す唯物論者の問題の一部なのです。まず、その証拠を概観してみましょう。

微細調整された宇宙

宇宙の多くの物理法則や定数は、生命が存在するために微細調整され、「ちょうどいい」状態になっています。ここでは、注目に値するいくつかの例を挙げます。その多くは『Return of the God Hypothesis』から引用したものです。

 

パラメータ ファインチューニングの度合い 参考文献
電磁気力の強さ 25分の1
強い核力の強さ 200分の1 ツソト他、「Fine-Tuning the Basic Forces of Nature Through the Triple-Alpha Process in Red Giant Stars」、『Nuclear Physics A』688巻/1-2号 (2001年): 560-562ページ。
クォークの質量 1021分の1
  • ルーク・バーンズ、「The Fine-Tuning of the Universe for Intelligent Life」、『Publications of the Astronomical Society of Australia』29巻 (4号)、2012年: 529-564ページ。
  • スティーブン・メイヤー、『Return of the God Hypothesis』、137、472ページ。
重力定数の値 1035分の1 ジェレイント・ルイス、ルーク・バーンズ、『A Fortunate Universe: Life in a Finely Tuned Cosmos』(イギリス、ケンブリッジ: ケンブリッジ大学出版局、2016年)、 109ページ。
宇宙定数の値 1090分の1 ジョン・レスリーは、『Universes』(イギリス、ロンドン: ラウトレッジ、1989年)、5ページと31ページで、10120分の1という値を与えています。しかし、宇宙定数のファインチューニングについての今日の最良の推定値は、1090分の1です。『Return of the God Hypothesis』の拡張研究ノートをご覧ください。
中性子と陽子の質量比

1000分の1

ルイスとバーンズ、『A Fortunate Universe』、79ページ。
弱い核力と強い核力の比

10000分の1

  • マーティン・リース、「Large Numbers and Ratios in Astrophysics and Cosmology」、『ロンドン王立学会フィロソフィカル・トランザクションズ A』310巻 (1983年): 317ページ。
  • ルイスとバーンズ、『A Fortunate Universe』、78ページ。
電磁気力と重力の比 1040分の1 デイヴィス、『The Accidental Universe』、71-73ページ。
プランク時間での宇宙の質量密度 1060分の1
  • ポール・デイヴィス、『The Accidental Universe』(イギリス、ケンブリッジ: ケンブリッジ大学出版局、1982年)、 89ページ (邦訳: 『魔法の数1040 偶然から必然への宇宙論』、田辺健茲訳、地人書館、1990年)。
  • レスリー、『Universes』、29ページ。
宇宙の初期膨張の割合 1017分の1 ポール・デイヴィス、『Superforce: The Search for a Grand Unified Theory of Nature』、ニューヨーク: サイモン&シュスター、1985年、184ページ。
宇宙の初期密度 1024分の1 ルイスとバーンズ、『A Fortunate Universe』、167ページ。
宇宙創成時の初期エントロピー 1010123分の1
  • ロジャー・ペンローズ、マーティン・ガードナー、『The Emperor’s New Mind: Concerning Computers, Minds, and the Laws of Physics』、(イギリス、オックスフォード: オックスフォード大学出版局、2002年。邦訳: 『皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則』、林一訳、みすず書房、1994年)、444-445ページ。
  • レスリー、『Universes』、28ページ。

デザインの証拠としてのファインチューニング

『New Scientist』の最近号で、ポール・デイヴィスは、なぜ宇宙が私たちの存在のために微細調整されているように見えるのかを説明しています。

 

これらの定数の多くを変更しても、何も起こらない。「しかし、他の定数では、致命的とまでは言いませんが、劇的に変化します」と、アリゾナ州立大学の宇宙学者ポール・デイヴィスは言う。例えば、重力と電磁気の相対的な強さを少し変えるだけで、星や銀河は形成できなくなる。陽子と中性子の質量のわずかな差をひっくり返して陽子を重くすると、安定した原子を得ることさえできなくなる。

 

「これらの数字を変更すると、おそらくどんな生命も宇宙に存在できなくなるでしょう」とデイヴィスは言う。ツマミがいじられたように見えると言っても、過大な飛躍ではない—まるで、宇宙が私たちの存在のために微細調整されたかのように。

 

しかし、このファインチューニングをどう説明すればいいのでしょうか?微細調整された宇宙の法則や定数は、自然界における特定された複雑さの一例です。それらは、その値や設定になる可能性が極めて低いという点で複雑です。それらは、生命に必要な特定の要件に合致しているという点で特定されています。では、私たちの普遍的な経験において、高度に特定された複雑さの唯一の既知の原因は何でしょうか?それは、インテリジェントデザインです。

 

実際、この結論は最高レベルの科学者たちによって支持されています。ノーベル物理学賞受賞者のチャールズ・タウンズは次のように説明しました。

 

科学的見地から見たインテリジェントデザインは、かなり現実的であるように思われます。この宇宙は非常に特殊であり、このように現出したのは注目に値します。もし、物理法則が今あるとおりでなかったら、私たちがここにいることはできなかったでしょう。太陽がそこにあることはなかったでしょうし、重力や核の法則や磁気の理論、量子力学なども、私たちがここにあるためにはその通りでなければならないのです。

 

(「'Explore as much as we can': Nobel Prize winner Charles Townes on evolution, intelligent design, and the meaning of life」、カリフォルニア大学バークレー校ニュースセンターのボニー・アザブ・パウエルによる記事 (2005年6月17日)。)

必要でも十分ではない

微細調整された自然法則は、生命が存在するための必要条件ではあっても、十分条件ではないことを理解することが重要です。生命を創造したり、存在させたりするのにこれらの法則だけに頼るのは、「ケーキは小麦粉と卵と牛乳とオーブンによって存在する」と言うようなものです。それらの特別な材料や器具はケーキに必要ですが、ケーキを「創造」したり、ケーキを「存在させる」には十分ではありません。材料を正しい順序で組み立てる人、つまりシステムに情報を付加する人も必要です。言い換えると、パン屋さんも要求されます。

 

このように、ファインチューニングは生命にとって必要ですが、生命を産み出すのに十分ではありません。生体分子を適切な形状に配置し、生命に情報を付加するためには、他の何かが要求されます。ファインチューニング (必要条件) と情報 (十分条件) の両方が必要です。インテリジェントデザインなしでそのいずれかを説明できるとするのは困難です。

多元宇宙という回答

この論議に対して、唯物論者はどのように回答するのでしょうか。彼らは、自然法則が生命のために特定されていることを否定できません。しかし、彼らは多元宇宙に頼ることにより、それらを必然的なもの、つまり、それほど起こりにくくはなく、それほど複雑ではないものにしようとします。チャールズ・タウンズはこの戦術を以下のように説明しています

 

科学者の中には、「そうだ、莫大な数の宇宙が存在し、それぞれ少しずつ異なっているのだ。この宇宙はたまたま適切になっただけだ」と論じる人もいます。そうです、これは仮定であり、そしてかなり途方もない仮定です。本当に莫大な数の宇宙が存在し、それぞれで法則が異なっていると仮定するのです。もう1つの可能性は、私たちの宇宙は計画されたもので、それゆえにこれほど特別になったというものです。

 

多元宇宙が提唱しているのは、潜在的に無限に近い数の異なる宇宙が存在し、それぞれが異なる値の物理法則や定数を持つ場合、偶然にもそのうちの1つが微細調整されて、生命に必要なパラメータや条件が実現するということです。ジョージ・エリスとジョー・シルクは、多元宇宙の背後にある動機が、ファインチューニングを説明しようとすることであると『Nature』誌で説明しています

 

多元宇宙は、ある謎が動機となっている。粒子間の電磁相互作用の強さを特徴づける微細構造定数や、宇宙の膨張の加速度に関係する宇宙定数などの自然界の基本定数は、なぜ生命が存在できるわずかな範囲にある値を持っているのだろうか。多元宇宙論は、これらの定数のすべての可能な値が発生しうる、観測不可能な姉妹宇宙が何十億と存在すると主張する。つまり、私たちの宇宙のように生物に優しい宇宙は、どんなにありそうになくても、どこかに存在するであろう。

 

本質的に、彼らは生命を許容する宇宙の存在の可能性を高めるために必要なだけの宇宙をたくさん発明して、宇宙的宝くじの当選確率を高めようとしています。私たちは、たまたま複雑な生命を許容する宇宙に住んでいるのです。

多元宇宙の問題点

しかし、マルチバースはファインチューニングの問題を解決するものではありません。それには多くの理由があります。

  1. これらの仮説的な宇宙を次々と生み出すメカニズムは何なのか、そしてそれはどのように生まれたのでしょうか?多元宇宙の原因についての説明がありません。
  2. この理論は、宇宙が互いに異なっているだろうという仮定に依存しています。もし複数の宇宙があるのなら、多くの、あるいはすべての宇宙が同じ特徴を持たないのはなぜでしょうか?
  3. 宇宙の外を観測することはできないので、多元宇宙論は100%哲学的な推測であり、科学ではありません。

最後の点は、多元宇宙仮説を却下する深い理由につながります。科学的な分析に含まれるある要件を、多元宇宙の概念は侵犯しています。それは、検証可能であることです。科学が私たちの宇宙の外側を観測できないことは、すぐに変わりそうにありませんし、これからもそうです。宇宙学者のジョージ・F・R・エリスが『Scientific American』で説明したように、潜在的な並行宇宙は「我々の地平線の外にあり、今もこれからも、どんなに技術が進化しても、我々の見る能力を超えたままである」ため、「観測的に検証する望みはない」のです。さらに彼は、多元宇宙のいくつかのバージョンはテスト可能な予測をしているものの、最終的な分析では、多元宇宙は検証可能ではないと、『Nature』で説明しています

 

多元宇宙論の検証可能な形式を考案した人もいる。物理学者レオナルド・サスキンドのバージョンは、もし宇宙の空間曲率が負であることが実証されれば反証できる。しかし、そのような発見があっても、他の多くのバージョンについては何も証明されない。基本的に、多元宇宙による説明は、まだ証明されていない弦理論や、異なる姉妹宇宙で異なる物理学を実現するための推測的なメカニズムに依存している。それは、我々の意見では、検証可能でないことはもちろん、強固なものでもない。

 

物理学者ヒュー・エヴェレットが提起した量子現実の多世界論は、量子の確率が巨視的に影響する究極の量子多世界である。エヴェレットによれば、シュレーディンガーの有名なネコはそれぞれ、死んだネコと生きているネコ、閉じた箱の中でランダムな放射性崩壊によって毒殺されたネコとされなかったネコが、自身の宇宙での現実に存在する。左に行くか右に行くかといったありふれた選択をするたびに、量子真空の中から別の宇宙が飛び出してきて、もう一方の行動を受容するのである。

 

何十億もの宇宙、そして銀河や我々各自のコピーが蓄積されるが、それらの間でコミュニケーションしたり、その現実を検証したりする可能性はない。

 

ドクター・ストレンジは正しかったようです。多元宇宙について知ることができる、あるいは知っていることははほとんどありません。これがまさに、多元宇宙論が適切な科学的説明の一部になり得ない理由です。

多元宇宙は科学を破壊する

「多元宇宙的思考」のもう一つの危険性は、自然を研究する科学者の能力を事実上破壊してしまうことです。なぜかを短い仮定の例で示しましょう。

 

ある研究チームが、人口1万人のある町全体の100パーセントが1年以内にがんになったことを発見したと想像してください。「ガンクラスター」です。論議のために、彼らがこの現象が偶然に起こる確率は1010000分の1と断定したとしましょう。通常、科学者たちは、このような低い確率は偶然では説明できず、この町にはガンを引き起こす何らかの物理的な要因があるに違いないと推論するに違いありません。

 

しかし、多元宇宙的思考の下では、「1010000個の宇宙があり、たまたま私たちの宇宙で、このありえないガンクラスターが発生したと想像しよう。純粋に偶然にだ!」と言うこともできるでしょう。科学者はガンクラスターの科学的説明を求めるべきでしょうか、それとも、この種の事象が起こりえるようにするため、単に1010000個の宇宙を発明すべきでしょうか?多元宇宙の支持者は、「1010000個の宇宙が外部にないとは言い切れないだろう?」と言うかもしれません。そうです。しかし、そこがポイントなのです。多元宇宙を検証する方法はありませんし、科学は検証不可能な理論を真剣に考慮すべきではありません。多元宇宙的思考は偶然性を排除できなくして、科学的な結論を導き出すための基礎を本質的に消去しています。

あなたはボルツマン脳かもしれない

多元宇宙的思考がいかに合理的な探求の終わりを招くかを例示するもう一つのアイディアが、ボルツマン脳です。多元宇宙の支持者の主張によれば、生命に必要なパラメータがたまたま適正になれば、どんな宇宙にも必然的に生命が発生します。つまり、私たちがその宇宙にたまたま住んでいるのなら、ここにいてそれを見るのはそれほど「幸運」ではないことを意味します。もし私たちがその宇宙に住んでいなかったら、ここにいて私たちの幸運な立場を理解することはなかったでしょう。ボルツマン脳の問題は、実際には結局のところ私たちはかなり幸運であるという理由を示しています。

 

量子論によれば、時には非常に奇妙なことが起こりえます。これには、偽の記憶を持ち、科学を理解し、宇宙の内部の働きを見分ける能力があると思い込んでいる — 本当はすべてが幻覚に過ぎない — 脳が、偶然に存在するようになることも含まれます。実は、あなた自身がそのような「ボルツマン脳」かもしれません!。どうすれば反証できるでしょうか?スティーブン・メイヤーは『Return of the God Hypothesis』の中で、ボルツマン脳の持つ不穏な認識論的意味合いについて説明しています。

 

無限の数の宇宙には、無限の数のそのような [ボルツマン] 脳が存在し、そこに含まれる偽の記憶や知覚も無限であろう。さらに厄介なことに、我々自身がそのような脳であるかもしれず、信頼できる知覚と真の記憶を持ついわゆる自然脳ではないということになる。その結果、今や多くの物理学者が、ファインチューニングの問題や (それを認識する限りにおいて) 量子宇宙論を妥当なものにするのに必要な情報入力の問題を解決するために無限の数の宇宙を仮定すると、我々自身の精神の信頼性を疑うことにつながると懸念している。言い換えるなら、無限の宇宙という宇宙論を仮定すると、必然的に過激な認識論的懐疑主義につながる。

— 400ページ

 

多元宇宙論者は当初、自分たちの「多元宇宙」生成メカニズムによって、「ボルツマン脳」が自然脳よりも常にはるかに少なくなると信じていたことをメイヤーは説明しています。つまり、私たちは自分の感覚を信頼することができる本物の脳である可能性がずっと高いということです。しかし、「この提案された解決策はうまくいかないことが判明した」とメイヤーは説明しています。

 

それを提唱した物理学者たちはすぐに、インフラトン場は、膨張する空間のどの領域においても、我々のような極端に古い宇宙より、極端に若いあるいは短命の宇宙を天文学的に多く産み出すことに気がついた。・・・なぜこれが問題なのか?なぜなら、相対的に数少ない古い宇宙の1つで、意識ある知的生命形態 (すなわち、本当の記憶と正確な感覚を持つ自然の脳) が1つまたは数個進化するのにかかる時間の間に、若い宇宙では偽の記憶を持つそのようなボルツマン脳が自発的な量子揺らぎによって多数発生するからである。このように、インフラトン場の活動によって、信頼できる記憶を持つ通常の観測者を産み出すのに必要な種類の進化を許容するには若すぎる宇宙では、大部分の観測者はボルツマン脳であることが保証される。

— 401-402ページ

 

言い換えると、もしインフレーションモデルが多元宇宙を生成したのであれば、あなたは私たちが住む世界を理解しようとする自然の脳よりも、この記事を幻視するボルツマン脳の可能性の方がはるかに高いのです。ここでも再び、多元宇宙的思考は私たちの科学する能力を破壊します。

 

さらに、ボルツマン脳が生命に優しい幸運な空間を一区画だけ必要とするのに対して、自然脳が進化するためには、宇宙全体が生命に優しいものであることが必要です。前者の方が後者よりはるかに起こりやすいので、もし私たちが本当に宇宙を観察している本物の自然脳であるなら、結局のところ、私たちは本当にかなり幸運であるに違いないということを意味します。

多元宇宙はさらにファインチューニングを要求する

多元宇宙を挫折させるものが最後に1つあります。多元宇宙を説明するために持ち出されるメカニズムや説明は、それ自体がファインチューニングを要求するのです!これは、多元宇宙によってファインチューニングから逃れられるといくら考えたとしても、実際には問題を押し戻し、さらにファインチューニングを要求し、解決しようとした問題を悪化させることを意味します。この重要な点については、スティーブン・メイヤーとブライアン・ミラーの「Physicist Sabine Hossenfelder Challenges the Evidence for Cosmological Fine-Tuning」、またはブルース・ゴードンの「Balloons on a String: A Critique of Multiverse Cosmology」(『The Nature of Nature: Examining the Role of Naturalism in Science (English Edition)』所収、ブルース・ゴードンとウィリアム・デムスキー編 (デラウェア州ウィルミントン: ISI Books、2011年)、558-585ページ) を参照してください。

オッカムの剃刀で切り捨てる

先ほど言及した2021年11月の『New Scientist』の記事は、多元宇宙は私たちが観測しているファインチューニングについての最も「単純な」説明だから受け入れるべきだ、と主張しています。

 

物理学者は長い間、なぜ我々の宇宙が生命にとって「ちょうど良い」ように見えるのかを推測してきた。最も複雑な答えが最も単純なのかもしれない — 他のあらゆる宇宙も存在するということだ。

 

どうやら唯物論のニュースピークの下では、私たちが観測できない宇宙の無限のアンサンブルを提唱することが「最も単純な」説明とされているようです。権威者の中にはそう感じない人もいます。多元宇宙論は決して「単純な」説明ではないと考えているのです。

 

オッカムの剃刀とは、科学者がよく使う論理原則で、最も単純な説明が正しいものであるという傾向があるとされています。最も単純な説明とは何でしょうか? (1) 宇宙のファインチューニングは、起源の説明がつかない未知のメカニズムによって産まれた無限に近い数の観測できない宇宙の結果である、または (2) 私たちの宇宙の特別で生命に優しい条件は、インテリジェントデザインの結果である、のどちらかです。理論物理学者のザビーネ・ホッセンフェルダー (インテリジェントデザインに友好的ではありません) は、多元宇宙は複雑すぎてオッカムの剃刀を切り抜けられないと説明しています

 

物理学者がここでやっていることをオッカムが見たら、理性を地球に戻してくれるよう神に祈ることでしょう。ええ、不要な仮定は取り除くべきです。しかし、観測結果を記述するために必要な仮定は確かに取り除くべきではありません。もしそうするなら、役に立たない理論、何も計算できない方程式が得られるだけです。

 

この、観測結果を記述するのに必要な仮定を欠いた役に立たない理論が、私たちが今多元宇宙と呼んでいるものです。そして、その有用性はオッカムの祈りと同じ程度です。

 

多元宇宙では何も計算できないので、物理学者が取り除いた仮定を何か他のものに置き換える必要があります。その「何か他のもの」とは、多元宇宙における確率分布であり、それは私たちが何を観測しているかではなく、何を観測する可能性が高いかを告げます。しかし、無限の数の宇宙とその上の確率分布よりも、一定の数を仮定する方が単純です。ですから、オッカムのカミソリは多元宇宙を削り取るべきです。それは余計なものです。残念ながらこの論議は、多元宇宙を評価する今日の多くの理論物理学者の間では、ほとんど重きをなしていません。なぜなら、それが際限のない憶測を許すからです。[強調追加]

 

結局のところ、自然法則のファインチューニングは、高いレベルの複雑で特定された情報を示しており、それゆえにデザインの論拠を与えています。

  • 自然法則は、生命に優しい宇宙を産み出すために要求される、信じ難くありえない程のファインチューニングを示しています。
  • このファインチューニングについて、現在のところ物理的な説明はありません。
  • 私たちは自分たちの宇宙を観測することはできますが、他の宇宙を観測することはできません。
  • このありえないファインチューニングは、自然法則に組み込まれた天文学的に高いレベルの特定された複雑さを表しています。
  • 多元宇宙に頼ることは、検証不可能なだけではなく、生命の起源を説明するどころか、生命の説明に必要な特定された複雑さの量を事実上増やしてしまうことになります。
  • では、私たちの普遍的な経験において、高いレベルの特定された複雑さの既知の唯一の原因は何でしょうか?インテリジェントデザインです。