Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

ホモ・ナレディが死者を埋葬し、ロックアートを作り、火を使ったという主張を学術誌が却下する

This is the Japanese translation of this site.

 

ケイシー・ラスキン
2023/11/15 6:40

 

私は9月に、古人類学者リー・バーガー率いるホモ・ナレディの研究者たちのチームが、Netflixのドキュメンタリーの中で、この種は死者を埋葬し、火を使い、道具を使い、ロックアートを作ったと主張したことを報告しました。ホモ・ナレディはチンパンジーより少し大きい程度の脳しか持っていなかったため、この証拠は人間例外主義に対する攻撃を補強するために使われました。あるいは、Netflixのドキュメンタリーが決め台詞で述べたように、「私たちはそれほど特別ではありません」 ということです。

 

しかし、ホモ・ナレディの高度な知的活動についての主張は、根本的に時期尚早であることが判明しました。それらの主張は、証拠が査読を受ける前になされたものであり、査読された際には、査読者は非常に懐疑的でした。現在、『Journal of Human Evolution』のある論文では、「No scientific evidence that Homo naledi buried their dead and produced rock art」とされています。この論文はさらに踏み込んで、H. ナレディのチームが推進した「強力なメディアキャンペーン」と「メディアの誇大広告」の批判すらしています。このような告発が、科学論文から出てくるのは非常に異例のことで、何が起こったかについての話を伝えています。

 

2023年6月に『eLife』誌が、ライジング・スター研究チームによる、ディナレディとヒル・アンテチャンバーの骨格遺骸が計画的埋葬の習慣および関連するロックアートの制作を示唆すると主張する3つの査読済みプレプリントを掲載した。査読済みプレプリントと以前は未査読だったプレプリントの両方が、強力なメディアキャンペーンに伴われ、ライジングスター洞窟系の奥深くで発見された脳が小さい (~450-600cc) ヒト族に、脳が大きい (~1400 cc) ヒト族の種であるホモ・サピエンスやホモ・ネアンデルターレンシスに起因するのと同等の複雑な埋葬行動をする能力があったという革新的なアイディアが瞬時に広まった。これを書いている時点では、未査読および査読済みのプレプリントは両方とも今のところ修正されてはいないが、それらに伴うメディアの過剰な宣伝により、「現代人の行動」だけでなく、科学的研究の伝え方や大衆の受け止め方についても強力な公の論争と即席の討論が引き起こされた。ここでは、3つの査読済みプレプリントに提示されている埋葬とされるものと岩絵といわれるものの証拠について、それらと並んで発表されたオープンレビューの考察も交えて検討する。査読は、現在の形では証拠が不十分であると考えている点で一致していた。それにもかかわらずこれらのバージョンは、未だに査読者のコメントを取り入れることもなく利用可能なままで、出版物やソーシャルメディアによって伝えられている。

 

しかし、『Journal of Human Evolution』の論文の著者たちは懐疑的です。彼らは、「これまでに提示された証拠には、H. ナレディによる死者の計画的な埋葬や、彼らが彫刻と言われているものを作ったことを裏付けるに十分な説得力はないと論じて」います。彼らはこれらの主張をそれぞれ詳しく取り上げています。

死者の埋葬?

この論文では、死者の意図的な埋葬に反論しています。それは、埋葬には通常、関節がつながった骨格が関係しますが、この事例では「ヒト族の骨は関節がつながっておらず、散乱している」ことに基づいています。彼らは、いくつかの死体部分に限定的に関節がつながった部分があるとはいえ、これは自然死のシナリオでも起こりうることだと指摘しています。いくつかの遺骸の「ほぼ垂直の姿勢」も、誰かが遺体のために墓を掘った場合に予想されるものとは非常に異なります。

石器のデザイン推論の却下

バーガーと彼のチームは、骨格の近くの岩に石器が包まれており、ホモ・ナレディが道具を使っていたことを示していると主張してきました。この論文は、「この石の物体がジオファクトであるという強い可能性を排除することは不可能である」と論じています。つまり、(知的行為者によって彫られた石であるアーティファクトとは対照的な) 自然の岩石の特徴があるということです。彼らは、この石が「洞窟の壁と同じ物質」でできており、その表面は「自然の断裂」や「浸食」を示していると指摘しています。この岩石は堆積物に包まれたままなので、適切な判断を下すのに必要な種類の研究を現在のところ誰も行うことができず、したがってホモ・ナレディのチームの主張は検証できない、と彼らは論じています。

火の「科学的証拠はない」

著者たちは、火についての主張は、ホモ・ナレディの個体が死者を埋葬する目的で洞窟に入り、洞窟の中で道を見つけるために火を必要としたと仮定した推論に基づいていると指摘しています。しかし、もし彼らがそこで死者を埋葬していなかったとしたら、火の必要性は消えてしまいます (言葉遊びで失礼)。しかし、経験的データは何を語っているでしょうか?火を使った証拠がそこにないことは明らかにされています。

 

さらに重要なのは、火床はおろか、原位置で焼かれた物質が発生したことを示唆する科学的証拠 (例えばフーリエ変換赤外分光法、微小形態学、古地磁気学) がないことである。火床のように見えるものの1つについて、現地の調査者たちにより以前に得られた放射性炭素年代の結果は非常に若い年代 (リー・バーガー、未発表データ) で、H. ナレディとの関連性に疑問が呈された。さらに、南アフリカの景観を含め、山火事が頻発するところでは木炭の発生は洞窟内でも一般的であるため、洞窟の環境において焼かれた物質が発見されたからといって、それが自動的に人為的な活動が示唆されることにはならない。

壁のマーキングは人工的なものか?

多くの批判者たちは、洞窟の壁のマーキングが芸術のように見えることは認めましたが、その落書きをホモ・ナレディと結びつける証拠については不確かだとしました。というのも、そのマークは年代が特定されていないからです。このマーキングはもっと最近、もしかしたらごく最近の歴史的な時代にヒトによって描かれたものかもしれません。この論文はその批判を肯定していますが、そもそもこのマーキングが人工的なものかどうかについてのより深い疑念も表明しています。彼らはこのように書いています。

 

この地域においてライジング・スター洞窟および他のすべての鮮新世から更新世にかけてのヒト族の化石を有する地層であるマルマニ・ドロマイトの至る所で、浅く斜交平行したり模様が付いたりしている自然の侵食線の例が数多く見られる。

 

私は個人的に、彼らが言っていることが真実だと証言できます。私は南アフリカのドロマイト、特にマルマニ・ドロマイトがその一部であるトランスヴァール超層群の炭酸塩の上を歩き回ることに多くの時間を費やしてきました。「象の皮」と呼ばれる風化において、これらの岩石に線状模様が付くことは非常に一般的です。それで、このマーキングは人工的なものだと私は信じたいのですが、自然起源という可能性もこの種の岩石ではあるようです。

批判者の側に立つコメンテーターたち

この科学論文は非常に強い結論を提示しています。

 

これまでに提示された情報に基づくと、H. ナレディがライジング・スター洞窟系で死者を埋葬し、ロックアートを制作したことを示唆する説得力のある科学的証拠はない。ここで説明したように、調査者たちは提起された疑問に答えるために考案された幅広い科学的手法 (例えば、年代学、タフォノミー、堆積学、微小形態学、地球化学) を採用していないし、計画的な埋葬を特定するための考古学の基本原則も適用していない。

 

これらの点は、科学コメンテーターに気づかれなかったわけではありません。これらの点は、科学コメンテーターに気づかれなかったわけではありません。『IFL Science』は、本質的にH. ナレディの高い知能を批判する側に立った、「Homo Naledi Probably Didn't Bury Their Dead Or Make Rock Art After All」と題する記事を掲載しています。

 

驚くことではないが誰もが納得したわけではなく、新たな研究が最近急増したホモ・ナレディマニアに健全な冷水を浴びせた。このことは、この華々しい主張の背後にいるチームが、彼らの研究の誇大な宣伝のために、すでにNetflixのドキュメンタリーを発表していることからすると、一般的な物語を大きく変えることはないだろう。

 

論争の一部は、証拠が南アフリカのアクセス不可能なライジング・スター洞窟内に秘匿されているという事実から来ている。論争の一部は、証拠が南アフリカのアクセス不可能なライジング・スター洞窟内に秘匿されているという事実から来ている。埋葬室とされる場所に通じる裂け目を通り抜けるために、ウィットウォーターズランド大学のリー・バーガー教授はまず体重を大幅に減らさなければならなかったが、それでも探索中に怪我をした。

 

ホモ・ナレディの骨に到達できないことにより、他の研究者の現場への立ち入りとバーガーの発見の検証が妨げられている。そしてライジング・スターチームは証拠を分析するための外部の専門家を一人も招いていない。さらに悪いことに、研究者たちの発見は査読を受ける前に広く報道されてしまった。

 

しかし、新たな批判の著者たちによれば、「査読は、現在の形では [ホモ・ナレディの埋葬とロックアートの] 証拠が不十分であると考えている点で一致していた」。

 

『IFL Science』は進化を大いに擁護する情報源なので、彼らがホモ・ナレディのプロモーターやNetflixのドキュメンタリーを「誇大な宣伝」や「ホモ・ナレディマニア」の後押しだとして非難するのは、実に言い得て妙でしょう。