Japanese Translation of "Science and Culture Today"

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ケイシー・ラスキンへの「デイブ教授」の不条理な攻撃を検証する

This is the Japanese translation of this site.

 

ギュンター・ベヒリー
2022/5/31 6:56

 

インテリジェントデザインを攻撃する最近の動画の中で、人気の無神論者のYouTuber、「教授」デイブ・ファリーナは、地質学者ケイシー・ラスキンを特別な憤りを持って槍玉に挙げています。ラスキンへの攻撃は、この非教授の動画の中で間違いなく最も滑稽な部分であり、ファリーナはある時点でラスキンが人類の進化についての『Science Uprising』のエピソードで「犯罪行為」を犯したと主張しています。ラスキン博士を警察に通報すべきでしょうか?さて、見ていきましょう。

 

以前にこちらこちらで指摘したように、ファリーナは事実関係に著しく杜撰です。この件での彼の糾弾も例外ではありません。

 

ファリーナは、ラスキンの専門性を嘲笑することから始めています。「ああ、彼は本を書きましたね・・・おお、地質学の博士号を持っていて・・・化石について何も知らない人ですね」。

 

これがラスキンの論議の真価とは全く関係ないことはさておき、これがファリーナの適用したい基準なのであれば、ファリーナ自身の化石に関する専門性は何なのかと問うべきでしょう。もし、博士号を持つ地質学者が化石についてほとんど、あるいは全く知らないはずだとしたら、科学教育の修士号だけを持つ人はどれほど知らないのでしょうか?ファリーナの発言は、古生物学の博士号を持たないが、化石を収集し、準備し、研究する実践的な技術文献に精通している献身的な化石コレクターやアマチュア古生物学者にとっては、それだけで大きな侮辱になるはずです。高名な科学者とともに査読された科学論文を発表する人も多いのです。もし、その分野の博士号を持っている人だけが、科学について批判的に考え、話すことが許されるのであれば、なぜYouTubeのチャンネル『Professor Dave Explains』は存在するのでしょうか?私は古生物学者で、その分野では国際的に認められている権威です。ラスキン博士との会話から、彼はファリーナよりも化石について非常に多くのことを知っていると私は確信しています。

真価について

ファリーナに古生物学での専門的能力はないかもしれませんが、私は彼の論議をそれ自身の真価に基づいて判断することに満足しています。上で示したように、古生物学の専門的能力を持たなくても、その分野の知識を持つことはできます。ファリーナにとって残念なことに、彼の発言は、彼が自分の言っていることについて本当はほとんど知らないことを示しています。

 

例えばファリーナは、進化論が「人間の形態はゆっくりと出現したはずだ」と予言していたと言います。どうやら彼は、類人猿のようなアウストラロピテクスと私たちホモ属の間の明確なギャップを知らないようです (これについてはラスキン、2017でレビューされています)。私の言うことが信じられませんか?ここにあるように、世界的に高名な古人類学者ジョン・ホークスが同じことを言っています (ホークス他、2000)。「要約すると、最古のH. サピエンスの遺骨は、大きさも解剖学的詳細もアウストラロピテクスとは著しく異なっている。我々が言える範囲では、その変化は急激であり、漸進的ではなかった」。この研究のプレスリリースでは、「人類進化のビッグバン理論」とまで呼ばれています (スワンブロー、2000)。

 

ファリーナはまた、ケイシー・ラスキンの言うことを習慣的に誤って伝えています。ある時点で、彼は現代人がネアンデルタール人から進化したことをラスキンが提言していると言及しました。ラスキンは本当にこのことを主張しているの でしょうか?私は『Science Uprising』のエピソードを何回か見て確認しましたが、そのような主張らしきものは何も見当たりませんでした。どうやらファリーナは、視聴者がわざわざ事実を確認することはないと確信しているようです。

 

おそらくファリーナによる最も過大な誤報は、オーウェン・ラブジョイ博士が有名な標本であるルーシーの腰骨の復元において「巨大な欺瞞」を働いたと非難したことで、ラスキンが「訴訟に値する犯罪行為」を犯したという主張です。ただ、ラスキンはラブジョイをこのことで非難したことは一度もありません。

 

ビデオを見れば、ラスキンが正確には次のように言っていることを自分で確認することができます。「ルーシーの骨盤は、進化論的解釈と想像力をかなり駆使して再構築されなければなりませんでした」― これはまさしく起きたとおりのことです。ラスキンもビデオのナレーターも、ラブジョイが「欺瞞」を働いたとは断言していません。

 

ファリーナは、『Science Uprising』のエピソードのナレーター (ラスキンではない) が、「ルーシーを直立歩行させるためにラブジョイが化石を操作した」と言及している一方で、PBSのビデオでは、実際の復元は化石の石膏型で行われたことを大問題にしようとしています。これについては、ファリーナはつまらないことを言っています。『Science Uprising』のエピソードもラスキンも、ラブジョイが自分の仕事で貴重なオリジナルの化石を傷つけたとは主張していません。また、オリジナルの化石と石膏型のどちらを使ったかは、このエピソードで議論されている点からするとどうでもいいことです。

再構成の試み

しかし、ファリーナが石膏型の問題を提起したので、私はそのことを指摘したいと思います。復元を試みる際に、石膏型で行うとさらに悪くなります。というのも、型が均質な基質を持ち、化石の実体と周囲の堆積物との明確な区別がつかなくなるからです。そのため、不正確なプレパレーションの結果に誤りがずっと生じやすくなり、復元に影響を及ぼすのです。ルーシーの復元作業の全過程は、技術文献 (例えば、ジョハンソン他、1982; タギューとラブジョイ、1986) には適切に記録されておらず、学術会議の抄録 (ラブジョイ、1979) で簡潔に紹介されているだけです。これは科学的に良い方法とはかけ離れており、当然ながらこの復元の信頼性に疑問を提起するものです。では、進化論的な解釈や想像力が復元に一役買ったのでしょうか? もちろん、その通りです。それは、ルーシーの股関節の解釈について専門家の間で意見が分かれ、いくつもの異なった復元が製作されたという事実によって実証されています。

 

スターンとズースマン (1983: 図6) は、化石の歪みやラブジョイの復元を認識していましたが、それについて、ルーシーの骨盤についての彼らの研究では、「AL 288-1のチンパンジーとの著しい類似性は同様に明白である。AL 288-1aoの腸骨稜の中央部における死後の歪みを考慮に入れても、ヒトと同等の方向を得ることは不可能である」と結論しています。ベルジェ他 (1984) は、鏡面成形の方法を用いてルーシーの骨盤を独自に復元したものを発表しました。彼らは、人間の特徴的な部分と同時に「著しい相違点」を見出し、「胎児の頭蓋骨の大きさはチンパンジーの新生児と似ている」ことを指摘しました。ラク (1991) は、「したがって、ルーシーの骨盤は、単にチンパンジーに似たヒト上科の動物とホモ・サピエンスの中間段階を示すものではなく、また本質的に現代人の骨盤でもない。ルーシーは明らかに二足歩行で高度な地上生活をしていたが、彼女らが独自の解決策によってこの運動様式を獲得したことは明らかである」と結論しました。ホイスラーとシュミット (1995) は、ルーシーの骨盤の3つの復元、すなわちラブジョイ (1979)シュミット (1983)、そして筆頭著者のものを比較し、「Sts14とAL 288-1の間の、復元方法の違いでは説明できそうにない著しい差異を明らかにした」と述べています。キンベルとデレゼーヌ (2009) は、「A.L. 288-1の骨盤の原始的な要素は、A. アファレンシスの完全な絶対的二足歩行の欠如を論じるために使われてきた・・・他の人々は、A.L. 288-1の骨盤が完全に二足歩行に適応していると論じてきた」と認めました。クリュカス (2018) が見出したのは、「アウストラロピテクス・アファレンシスの骨盤の一般的な形状は、ホモ属と現存する大型類人猿の両方とは根本的に異なり、それらの中間型ではないことが確認された」ということでした。

 

骨盤とその復元の解釈について、専門家がこれほどまでに意見を異にしたということは、『Science Uprising』のビデオで指摘された点、すなわちその復元には「かなりの進化的解釈と想像」が含まれていることを十分に確証しています。これは論争にすらならないはずです。これは実証可能な事実です!決して意図した欺瞞を示唆してはいませんし、ラブジョイが間違ったことをしたという意味ですらありません。そういうことで、ナレーターがラブジョイ博士は化石の石膏型を操作して腰骨の原型を復元しようと試みたと言ったとして、その方が良かったのでしょうか?もちろん、それでも核心的なメッセージは変わりませんし、この作品は7分間の大衆向けのビデオであり、徹底的なドキュメンタリーとして意図されてはいないことを考慮するべきでしょう。

 

ルーシーの膝の関節

別の批判としてファリーナは、『Science Uprising』のエピソードがルーシーの二足歩行の証拠として膝関節のロックに言及していないと言っています。しかし、この論点は専門家の間でも決して満場一致で同意されてはいません。スターン (2000) は、ルーシーの標本AL 288-1について「膝をロックする終末回旋運動の欠如」を明確に指摘しました。ルーウィンとフォーリー (2003) は、彼らの核心的な教科書である『Principles of Human Evolution』で次のように書いています。

 

ニューヨーク州立大学の研究者により、A. アファレンシスの膝関節は現代人のように完全に屈曲した状態でロックできないことが提唱されたが、これは腰を曲げ、膝を曲げて歩く姿勢の論拠を完全にするものである。ケント州立大学の研究者たちは、この解剖学的説明の3つの点に異議を唱え、最終的にその機能的解釈を退けている。

ルーシーの足

同様に、ルーシーの足の骨格について『Science Uprising』のエピソードが提示していること対するファリーナの批判も根拠がありません。ファリーナは、ラエトリの足跡からの間接的証拠を強調していますが、これらは1000マイル離れているところで発見され、ルーシーや他の同種の標本のほとんどよりも46万年古い年代のものであり、ラエトリの化石断片 (模式標本LH4を含む) の同種性については科学的な論争があります (PBS、2001)。したがって、アウストラロピテクス・アファレンシスへの帰属は決して議論の余地がないわけではなく (タトル他、1991; ハーコート-スミス、2005)、ライクレン (2010) が「この仮説には、足跡の形態と足の化石の差異に基づく異論がある」と述べて明確に認めている通りです。さらに、最近の証拠では、ラエトリでは異なる二足歩行をする2つの異なるヒト族の種が足跡を残していたことが示されており (マクナット他、2021)、この同定はさらに疑わしくなっています。

 

ファリーナはまた、リトルフット標本についても言及し、あたかもこの標本がルーシーの足の形態を記録するものであるかのように言っています。彼は、この標本がルーシーの種であるアウストラロピテクス・アファレンシスではなく、独自の種であるアウストラロピテクス・プロメテウスに帰属することにさえ全く気付いていないようです (クラークとクーマン、2019)。さらにこの標本の左足は不完全な基部のみが保存されています。最後に、ファリーナはアウストラロピテクス・アファレンシスの標本が何百点も見つかっていることを述べていますが、そのほとんどが小さな断片や孤立した歯でしかないことに言及していません。ある程度完全な (それでも非常に断片的ですが) 標本は3つだけ見つかっており、そのうちの2つ、ルーシー (A.L. 288-1) とカダヌームー (KSD-VP-1/1) には足の骨格が一切保存されていません。3番目の骨格はセラム (Dik-1-1) と呼ばれる3歳の子供のもので、足の基部の断片が含まれています。この足の化石は最初、「二足歩行の明確な証拠」(アレムセゲド他、2006) とされましたが、最近になって再検討され、この化石には木登りする猿のような足が記録されていることが明らかになりました (デシルヴァ他、2018)。これは「予想外」と考えられました。なぜなら、アウストラロピテクス・アファレンシスの足の骨格の化石は、他に成人の単独の中足骨 (AL 333-160) しかなく、これは二足歩行に適応した土踏まずの証拠と解釈されてきたからです (ウォード他、2011)。研究者たちは、誤帰属や誤解の可能性を考慮する代わりに、幼体の標本はより樹上性のクライマーで、成体はより陸上性のウォーカーであると推測しています。ルーシーについてだけを扱っているのではない7分間のビデオに、このような物議を醸すような詳細のすべてを盛り込むことはまず期待できないでしょう。それで、ルーシーの足を人間に似たものとして復元することは証拠を超えていたと示唆する、このビデオの短い声明はかなり正確です。

 

とにかく私の見解では、アウストラロピテクス・アファレンシスにおける二足歩行という問題は相対的な論点です。なぜなら、たとえそれが十分に確立されていたとしても、ダヌヴィウスやルダピテクスのようなヨーロッパ中新世の類人猿に直立姿勢やある形態の二足歩行が存在していたという証拠が増えており (ベーメ他、2019; バウアー、2019; ディートン、2019; ウォード他、2019)、人類に近い関係を強固に確立したと考えることはもはやできないからです。このことは、ギリシャのクレタ島のトラキロスで発見された600万年前の二足歩行の足跡 (ギエリンスキ、2017; キルヒャー、2021) にもよく合致すると思われます。この足跡は、中新世のヒト族に似た類人猿グレコピテクスの後期近縁種によって作られた可能性が高いようです。ルーシーは二足歩行か、少なくとも部分的に二足歩行であった一方で、樹上運動やナックルウォークの適応をある程度有していたのかもしれません。しかし、上記に引用した何人かの専門家が認めるように、たとえ彼女が完全な二足歩行であったとしても、それはヒトのような形態の二足動歩行ではなく、彼女は私たちヒト属につながる明確な中間体にはなりません。

 

ファリーナがどうであれ、ラスキンと彼が出演している『Science Uprising』の動画は、真剣に議論するに値する多くの正当な問題を提起しています。しかし、ファリーナはそれに対処することができず、賛同できない相手に対して子供じみた侮辱を浴びせることを好んでいます。ファリーナの表現では、彼が相手しているのは「ペテン師」ということです。彼らは「有害で幼稚な行動」と「故意かつ悪意のある不正行為」に従事しています。特にケイシー・ラスキンは、「白々しい嘘を一貫して繰り返しついて」おり、「中傷」で有罪です。悲しいかな、ここでの唯一の中傷はファリーナ自身によるものです。

デイブ・ファリーナへの感謝?

ファリーナは、おそらく自分自身を大衆のために進化について教える擁護者と考えているの でしょう。しかし、彼のレトリックは、彼が望むような影響を与えないかもしれません。

 

反ID活動家による彼のような行動、すなわち論議を誤って提示すること (藁人形論法)、人格攻撃、事実の歪曲は、私に最初にインテリジェントデザインについて深く考察させたものの一つでした。科学者としての私は、ダーウィニストたちが本当に自分たちの側により良い論議を持っているなら、なぜこのようないかがわしい討論戦術を常用するのか、疑念を抱くようになりました。どんなときでも、一方がこのようなひどい振る舞いに頼らなければならないほど不安を感じているのであれば、彼らの立場に何か誤りがあることを確信できるでしょう。

 

私たちは、ファリーナのような人たちが、インテリジェントデザインのためにこのような効果的なPRを続けてくれていることに感謝さえするべきなのかもしれません。確かに、彼の貧弱な調査と誤った表現、そして明らかに教条的な世界観は、ファリーナのビデオの一般的な信頼性を疑問視させるはずです。もしあなたが、信頼できるソースから本当の科学について学びたいのであれば、デイブ教授の解説の配信を停止し、他の場所を探した方が良いでしょう。なぜなら、YouTubeには (特に『Discovery Science』には) たくさんの優れた科学コンテンツがあり、無料で利用できるからです。