Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

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COVID-19とインテリジェントデザインの出会い

This is the Japanese translation of this site.

 

コーネリアス・ハンター
2022/3/16 6:53

 

現在世界的に流行しているCOVID-19パンデミックをもたらしている重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2 (SARS-CoV-2) に関する根本的な科学的疑問は、それがどこから来たのか、ということです。この疑問は単なる学問的な課題ではありません。その答えにより、このウイルスと闘うもっと良い方法だけでなく、将来の生物学的脅威から社会を守る方法に光を当てることができます。そのため、この疑問は非常に注目されています。

 

早くも2020年初頭から、この研究にはデザイン検出が多用されてきました。5人の科学者の国際共同研究によって行われた影響力のある研究が、2020年初頭に『Nature Medicine』誌に掲載されました。その結論は、「ウイルスはデザインされていない」というものでした。これより顕著かつ重要な形でのデザイン推論の応用を見つけることは難しいでしょう。また、これより欠陥のある破滅的なデザイン推論の応用を見つけることも難しいでしょう。2020年4月上旬に、私はこの研究について以下のようなレビューを書きました。

 

研究チームは、ベイズ的なアプローチを用いて、SARS-CoV-2が実験室での操作によってではなく、自然主義的な起源を持つと結論しました。ベイズの定理は、18世紀のトーマス・ベイズ牧師にちなんで名付けられたもので、何らかの新しい証拠が与えられたときに、ある事象の確率を計算するものです。学生であれば、壺やカラーボールが関係する問題を解くのにベイズの定理を使った記憶があるでしょうが、事実として、現実世界で実用的な幅広い応用があります。

かなり扱いづらい

ベイズの定理は、仮説、特に起源の理論の評価にも使われてきました。しかし、起源の問題では、ベイズの定理の使用はかなり扱いづらいものがあります。例えば、仮説の事前確率、つまり、新しい証拠が得られる前の仮説の確率を知る必要があります。また、新しい証拠の確率も知る必要があります。そして最後に、仮説が正しいとしたときの、新しい証拠の条件付き確率を知る必要があります。

 

これらの3つの量があれば、ベイズの定理を使って、新しい証拠が与えられたときの仮説の条件付き確率を計算することができます。これは簡単そうに見えるかもしれませんし、確かに計算は簡単なのですが、必要な確率は決してそうではありません。例えば、ベイズの定理を使って、進化論が真実である確率を計算することを想像してみましょう。進化の事前確率はどこにあるのでしょうか?あるいはまた、新しい化石の発見が証拠だとします。進化があったとして、その化石の条件付き確率はもちろんのこと、その化石の確率はどこに見出せるでしょうか?

 

ベイズ的アプローチは、科学、工学、経営、製造などの実用的な問題では驚くほど有用です。しかし起源の研究においては、この実用的で簡単な方法は突然難しくなり、危険を伴うようになります。不当な、あるいは誤った結果を容易に産み出してしまいます。

問題の改善

ベイズの定理を理論評価や起源研究に用いる場合のこの問題を改善するために、様々な戦略が試みられています。例えば、ある理論が真である確率を計算するのではなく、対立する2つの理論を比較する戦略があります。この方法では、2つの対立する理論を互いに比較するため、最初に必要となる確率は少なくなります。

 

この単純化の代償として、2つの対立する理論は相補的であると仮定します。つまり、一方が真で、もう一方が偽でなければなりません。それ以外の可能性はあり得ません。しかし、通常はこれを知ることは不可能です。例えば、このベイズ的アプローチで、進化論とデザイン論を比較することを想像してみましょう。この2つの対立する考え方が、唯一の可能性でなければなりません。なぜなら、他の選択肢や中間的なものは一切許容されないからです。

 

しかし、なぜそれが唯一の可能性であると言えるのでしょうか?進化とデザインを組み合わせたハイブリッド理論が物理的に可能かもしれません。あるいは、私たちがまだ考えもしないような別の理論もあり得るかもしれません。実際、残念なことですが非常に現実的な問題として、ベイズ的アプローチの使用によって、自分が好むように計算を操作してしまうことがあります。確率は恣意的に調整でき、反対理論には藁人形を使うことができます。

 

このように、ベイズ的アプローチは、不当な事前確率、不当な反対理論、相補性の不当な仮定など、様々な落とし穴を伴います。このような問題意識から、私は科学者がベイズ的アプローチを理論評価にどのように用いるかに常に関心を持っています。彼らは落とし穴を避けるでしょうか、あるいは落とし穴にはまるのでしょうか?

暗黙のベイズ的アプローチ

ここで、先ほどのSARS-CoV-2の研究に話を移しましょう。筆頭著者はクリスチャン・G・アンダーセンです。この論文はそれほど長くはなく、ウイルスの起源に関する彼らの調査についてのセクションはさらに短いものです。その上、彼らの理論評価法 (ウイルスが自然主義的な起源を持つという理論の確率を決定する彼らの方法) は、どこにもその概要が書かれていなかったので、単純な話ではありません。言い換えると、この論文のどこにも、ベイズの定理や、ベイズ的アプローチを用いていることは言及されていません。それは暗黙の了解なのです。

 

まあ、それは許容できるかもしれません。結局、ベイズ的アプローチは、使われている方程式を見れば一目瞭然なのです。しかし、ここにもう一つの懸念があります。この論文には、そのような方程式がないのです。これも暗黙の了解なのです。

 

まあこれも、おそらくは、悪意のない見落としか、スペースの制限による編集が必要だったのでしょう。結局のところ、事前確率そのものに重要な情報が含まれており、それがあれば、アプローチと方程式を再構築できるのでしょう。

 

しかし、ここでもまた、別の懸念があります。ベイズがどこにも言及されていないだけでなく、特定のベイズ的アプローチはどこにも言及されておらず、方程式も与えられておらず、実際のところ、どんな確率も与えられていないのです。

 

実際、彼らのかなり重要な結論の理論的根拠と説明は、驚くほど簡潔です。この論文は、ウイルスが実験室での操作によって生じたという説に反論するために、2つの証拠を用いています。そして、その理論的根拠はわずかな文章に過ぎず、ここに引用します。まず、1つ目です。

 

上記の分析から、SARS-CoV-2はヒトACE2との結合親和性が高いという可能性が示唆されるが、コンピューター解析からは、その相互作用は理想的ではなく、RBD (受容体結合ドメイン) 配列はSARS-CoVで示された受容体結合に最適なものとは異なることが予測される。

 

この論議を要約すると次のようになります。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質における受容体結合ドメイン (RBD) は、ヒトのACE2受容体や、他の種でのACE2との類似性が高い (この論文ではこの高い類似性を誤って「高い相同性」と呼んでいます) ものに対しては結合親和性が高いのですが、コンピューター解析ではこれを予測することに失敗し、むしろ「その相互関係は理想的ではない」と予測したということです。したがって実験室での操作仮説の可能性は低い、なぜなら、その仮説の下では、観察されたようなSARS-CoV-2のRBD配列をデザインすることはなかったであろうから、と彼らは推論しています。デザイナーはむしろ、より強い結合が予測されるような配列を選択したでしょう。

デザイナーはどのように行動するか

お分かりのように、この推論はデザイナーがどのように行動したかについての不当な仮定を伴っています。この推論は、デザイナーが結合強度を最大にしようと試みると仮定しているだけではありません。かつて『New York Times』の科学ライターだったニコラス・ウェイドが次のように説明しています

 

しかしこれは、ウイルス学者が実際にスパイクタンパク質を選択した標的に結合させる方法を無視している。それは計算によるのではなく、他のウイルスからのスパイクタンパク質遺伝子をスプライシングするか、連続継代することによって行われる。連続継代では、ウイルスの子孫を新しい細胞培養物や動物に移植するたびに、より成功したものが、ヒトの細胞に現実にしっかりと結合するものが現れるまで選ばれるのである。自然選択はこの困難な仕事をすべて行っている。アンダーセン論文にある、計算によってウイルスのスパイクタンパク質をデザインするという憶測は、ウイルスが他の2つの方法のいずれかによって操作されたかどうかとは何の関係もない。

 

2番目の論議も同様に弱いものです。

 

SARS-CoV-2の2番目の注目すべき特徴は、スパイクの2つのサブユニットであるS1とS2の接合部にある多塩基性切断部位 (RRAR) である。・・・多塩基性切断部位は、関連する「系統B」のベータコロナウイルスでは観察されていないが、HKU1 (系統A) を含む他のヒトベータコロナウイルスでは、これらの部位と予測されるO結合型グリカンが存在する。・・・もし遺伝子操作が実行されていたなら、ベータコロナウイルスで利用可能ないくつかの逆遺伝子システムの一つがおそらく使用されたであろう。しかし、遺伝子データは、SARS-CoV-2が以前に使われたどのウイルスバックボーンにも由来しないことを反駁の余地なく示している。

 

「おそらく使用されたであろう」?このいい加減な論議によって実験室デザイン仮説が否定されると信じろというのでしょうか?デザイン仮説が機能する強力な方法は複数あります。これはその1つではありません。

 

「遺伝子データは、SARS-CoV-2が以前に使われたどのウイルスバックボーンにも由来しないことを反駁の余地なく示している」という主張は、ほとんど意味がありません。この証拠の重要性は、デザイナーがそのような「以前に使われたウイルスバックボーン」を使ったであろうという仮定が条件になっています。著者たちには、これがありそうなことであると断言することしかできませんが、これは愚かなことです。再度、ウェイドは下記のように説明しています。

 

このようなDNAバックボーンは、科学文献には一定数しか記載されていない。SARS2ウイルスを操作した者は、これらの既知のバックボーンのいずれかを「おそらく」使用したであろう、そしてSARS2はそれらのどれにも由来しないので、したがって操作されてはいないとアンダーセンのグループは書いている。しかし、この論議は明白なほど決定的なものではない。DNAバックボーンはかなり容易に作製できるため、SARS2が未発表のDNAバックボーンを用いて操作された可能性も当然ある。

 

この2つの証拠のどちらにも、特に説得力はありません。そしてこのことは、「most likely」、「It is improbable」、「would probably」などの暫定的な言い回しに反映されています。

暫定的な言い回しが新たな確信に変わる

しかし、結論のセクションに達すると、この暫定的な言い回しは新たな確信に道を譲るのです。「証拠はSARS-CoV-2が目的を持って操作されたウイルスではないことを示している」、「我々はなんらかの形の実験室ベースのシナリオが妥当であるとは信じていない」とあります。

 

このように、弱く主観的な2つの論議を、偽りの確実性と権威で包むことによって、アンダーセンが正当な理由もなく、「SARS-CoV-2は自然の過程に起源を持つと確定できる」と発表している勝利のプレスリリースへの道を開いています。

 

要約すると、筆者たちはひどいデザイン仮説を使い、2つの弱い観察から断定的な主張を延々と拡大しています。この論文は非科学的な主張をしており、査読を通過すべきではありませんでした。