Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

天体物理学者イーサン・シーゲルは宇宙の始まりを避けようと再び必死に試みる

This is the Japanese translation of this site.

 

ブライアン・ミラー
2021/11/8 4:02

 

先日、私はウェブサイト「Big Think」に掲載された天体物理学者イーサン・シーゲルの記事「Surprise: the Big Bang isn't the beginning of the universe anymore」に返答しました。私は、シーゲルが無神論者であり、宇宙の始まりが創造者を指し示すので、宇宙が永遠ではないという結論を避けたいと考えるのは理解できると述べました。私は、永遠のカオス的インフレーションとして知られる宇宙論的モデルに基づいて、宇宙には始まりがなかったかもしれないとシーゲルが論じたことを記述しました。最後に、ボーデ-グース-ビレンキン (BGV) 定理によって、永遠のインフレーションダイナミクスによってモデル化された宇宙にも絶対的な始まりがなければならないことが証明されているので、シーゲルの論議は失敗することを説明しました。シーゲルは、「Does modern cosmology prove the existence of God?」というタイトルの2番目の記事を「Big Think」に載せて私の批判に返答しました。この記事で、彼は自分の無神論的動機をはっきりと明らかにしつつ、またしてもスティーブン・メイヤーがすでに十分に扱っている論議を提示しています。

量子力学と因果関係

記事の最初でシーゲルは、メイヤーが『Return of the God Hypothesis』で詳述した、神についてのカラームの宇宙論的論証を概説しています。

  • 「すべての存在し始めたものには原因がある。
  • 宇宙は存在し始めた。
  • したがって、宇宙の存在には原因がある。」

シーゲルは次に、量子現象は原因なしに起こるように見えると主張して、第一の前提への挑戦を試みます。

 

・・・この原子がいつ崩壊するかという現象には原因がない。まるで宇宙には、ある現象を根本的に非決定かつ不可知にする、ある種のランダムで因果関係のない性質があるかのようだ。実際、もつれているスピン、不安定な粒子の静止質量、二重スリットを通過した粒子の位置など、同じようなランダム性を示す量子現象は他にも多く存在する。

 

この主張は、決定論と因果関係を混同しているため、非常に誤解を招く恐れがあります。量子力学は、二重スリット実験における光子の通り道のように、ある事象が起こる確率を記述しているだけなので、決定論的ではありません。しかし量子力学の法則は、私たちの宇宙において、そのような事象すべての因果的作用として働いています。量子理論家のジャコモ・マウロ・ダリアーノは、「Causality re-established」という論文の中で次のように述べています。

 

因果関係の観念は、誤認されている「決定論」という概念とは論理的に完全に独立しており、量子論の帰結として、物理学のいたるところに存在している。

 

一方、宇宙が存在する前は、量子力学的プロセスも他の物理法則も働いていませんでした。そのため、シーゲルが提唱するように宇宙を誕生させることはできなかったのです。

宇宙の始まりの回避

シーゲルは、宇宙には始まりがなかったかもしれないと再び主張して、2つ目の前提条件に挑戦しています。最初の記事と同じように、彼はインフレーション理論に訴えていますが、ここでは別の方針を取っています。彼は膨張している宇宙の体積は指数関数的に増大し、時間を遡っていく指数関数的な曲線が完全にゼロになることはないと論じています。したがって、宇宙は始まりがなく永遠に膨張してきているのかもしれないというのです。しかしこの論議も、宇宙の体積がプランクスケール以下になると、インフレーションモデルが破綻するという事実を無視しているため、失敗します。

 

この領域では、量子重力モデルのみが適用されます。量子宇宙論モデルの一分類には、スティーブン・ホーキングやアレキサンダー・ビレンキンが構築したような、宇宙の始まりを前提とするものがあります (こちらこちら)。モデルの他の分類では、宇宙は、収縮している宇宙から膨張している宇宙へと移行するバウンスに対応する最小のサイズまでしか収縮できないと仮定しています。例えば、ループ量子重力に基づくモデルです (こちらこちら)。これらの循環モデルでも、エントロピーが常に増加するため、始まりが必要です。現実的な量子モデルでは、永遠の宇宙は許容されません。

ボーデ-グース-ビレンキン定理

次いでシーゲルは、ボーデ-グース-ビレンキン (BGV) 定理が宇宙の絶対的な始まりを決定的に示しているという主張を否定しようと試みます。

 

確かに、20年ほど前に、常に膨張している宇宙が過去に無限に膨張していたはずがないことを証明する定理 (ボーデ-グース-ビレンキン定理) が発表された。(これは過去の時間的不完全性を表現する別の方法である。) しかし、インフレーション宇宙の前に、同じように膨張している段階があったことを要求するものは何もない。この定理には同様に、時間の矢を逆にすると定理が破綻する、重力の法則を特定の量子重力現象に置き換えると定理が破綻する、永遠にインフレーションする定常宇宙を構築すると定理が破綻するなど、多くの抜け穴がある。

 

具体的には、彼は天体物理学者のアンソニー・アギーレとスティーブン・グラットンが発展させた定常的な永遠のインフレーションモデルを紹介しています。提唱された宇宙では、ビッグバンの事象を表す、エントロピーが極めて小さく、空間が圧縮された特殊な状態が中心となっています。その宇宙は時間的に前方にも後方にも膨張しています。宇宙が過去に向かって無限に膨張しているので、BGV定理を回避し、始まりを必要としません。

 

ここでもシーゲルは、スティーブン・メイヤーがすでに徹底的に取り組んでいる論議を提示しています。メイヤーは著書の中でこう述べています。

 

BGV定理は、インフレーション宇宙論モデルが示唆する条件を含む、非常に一般的な条件を満たすあらゆる宇宙に適用される。アレキサンダー・ビレンキンが説明しているように、「この定理の驚くべき点は、一般性が非常に高いことです。・・・私たちが仮定したことはただひとつ、宇宙の時間的な膨張率はゼロでないなんらかの値を決して下回ることがない、というものです」。

- RETURN OF THE GOD HYPOTHESIS、125-126ページ

 

また、メイヤーは拡張研究ノートの注6cで、アギーレとグラットンのモデルが全く非現実的である理由を説明しています。収縮から膨張へ移行する際に、このような低エントロピーで圧縮された特別な状態に収縮するためには、無限の過去において宇宙への想像を絶するレベルのファインチューニングが必要です。もしこのモデルが妥当であれば、必要とされるファインチューニングのレベルは、始まりを取り除くことで避けようとしたものよりもさらに大きなデザインの証拠を提示することになるでしょう。シーゲルはこのモデルに訴えることで、哲学的なフライパンから火の中に飛び込んだようなものです。