Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

デボリューションの目撃: マラリアが足を噛み切る

This is the Japanese translation of this site.

 

マイケル・ベーエ
2021/9/30 17:09


機械的な罠にかかった動物は、自暴自棄になって、押さえつけられた手足を噛み切って自由になることがあります。その哀れな動物はその肢を失ったまま生涯の残りを過ごさなければなりませんが、少なくとも生き延びることができます。

 

歩みの遅い進化の類型が、この切迫したリアルタイムのジレンマに存在します。すなわち、ある種の何らかの特徴が、現在の環境において競争上不利な立場にある場合、その特徴を消去する突然変異が、将来の世代がよりよく生き残るための方法として選択されることがあり得ます。その悲しい例が、違法な象牙密猟の圧力を受けて、アフリカで牙のない象が急増していることです1

 

細胞・分子における同じ現象が最近ニュースになっています2。私たち人間も、マラリアの最悪の形態を引き起こす単細胞寄生生物であるPlasmodium falciparumを追い詰めて殺します。マラリア原虫に感染している疑いのある人は、多くの場合、クリニックで迅速診断テストによりふるいにかけられます。テストが陽性の場合、その人は抗マラリア薬で治療されます。テストが陰性の場合は、治療を控えます。

有益な損失

最も頻繁に使用される診断テストキットは、pfhrp2またはpfhrp3と呼ばれる2つの類似したマラリアタンパク質のいずれかが患者の血液中に存在するかどうかを調べるものです。『Nature Microbiology』誌に掲載された新しい論文「Plasmodium falciparum is evolving to escape malaria rapid diagnostic tests in Ethiopia」によると、これらのタンパク質をコードする遺伝子を削除したマラリアの変種がエチオピアで広まっています3。象の牙のように、これらのタンパク質は、他の条件が同じであれば、寄生虫にとって有用であると考えられます。しかし、環境が変化してそのタンパク質が正味では不利益になった場合には、それらを取り除くことが最も早い進化的解決策となります。これは生物学的に興味深い事実であり、医学的にも重要になり得ます。しかし、これはデボリューション (遺伝情報の有益な喪失) のもう一つの例に過ぎないことに留意するのは重要です。

 

また、デボリューションは人間が他の生物を狩る場合に限ったものではないことに留意するのも重要です。むしろ、遺伝情報の消失は、どんな状況や瞬間であっても、それが役立つのであれば発生すると期待されます。私はこの基本的な進化的概念を、2019年の本『Darwin Devolves: The New Science About DNA That Challenges Evolution (English Edition)』の中で、私が呼ぶところの「適応進化の第一法則」、すなわちその損失により子孫の数が増えるような遺伝子の破壊あるいは鈍化として捉えています。

参考文献

  1. Maron, D.F. (2021) Under poaching pressure, elephants are evolving to lose their tusks. National Geographic. 3 May. www.nationalgeographic.com/animals/article/wildlife-watch-news-tuskless-elephants-behavior-change (日本語版 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/111300246/)
  2. Page, M.L. (2021) Parasite evolution is making it harder to detect and treat malaria. New Scientist. 29 September. www.newscientist.com/article/2291463-parasite-evolution-is-making-it-harder-to-detect-and-treat-malaria/
  3. Feleke, S. M. et al. (2021) Plasmodium falciparum is evolving to escape malaria rapid diagnostic tests in Ethiopia. Nature microbiology. 6 (10), 1289-1299. www.nature.com/articles/s41564-021-00962-4