Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

著名な宇宙学者による宇宙の始まりを回避する別の試みが検証の結果崩壊する

This is the Japanese translation of this site.

 

ブライアン・ミラー
2022/1/11 17:13

 

以前の記事で、物理学者による最近のいくつかの記事が、宇宙には始まりがなかったかもしれないと主張していることについて記述しました。その際、それぞれが提示する論議がスティーブン・メイヤーの著書『Return of the God Hypothesis: Three Scientific Discoveries That Reveal the Mind Behind the Universe (English Edition)』や拡張研究ノートで既に十分に扱われていることを説明しました (こちらこちらこちら)。最近、『The Conversation』というサイトに、科学哲学者のアラステア・ウィルソンによる「How could the Big Bang arise from nothing?」というタイトルの記事が掲載されました。ウィルソンは、数理物理学者で宇宙学者のロジャー・ペンローズが構築した、始まりを回避するとされる「共形サイクリック宇宙論」(conformal cyclical cosmology、CCC) と呼ばれる宇宙論モデルを紹介しています。

 

ペンローズは、現代における傑出した物理学者の一人とみなされています。彼は、宇宙の始まりにおけるエントロピーのファインチューニングは10の10乗の123乗分の1であるという有名な計算を行いました。この数字は、可視宇宙のすべての粒子に0を置いたとしても書けません。真の天才であるペンローズは、宇宙の始まりを回避するために大変な努力を払ってきました。しかし、CCCは大いに疑わしい数々の仮定に基づいており、経験的証拠と矛盾しています。

ペンローズのモデル

ペンローズは、宇宙が永遠に膨張し続けることを想定しています。そして宇宙は、「クロスオーバー現象」によって、太古の宇宙の残り火からビッグバンによる新宇宙の創始へと周期的に移行しているとしています。クロスオーバーは、すべてのブラックホールが蒸発し、すべての粒子の質量がゼロになった後に起きます。このとき、宇宙全体のエネルギー分布は、前回のクロスオーバー後と同じように均質に見えます (図をご覧ください)。

 

各クロスオーバーでは、仮説上の「ファントム場」が、純粋に数学的存在から、急速に質量を獲得して他のすべての場に優越する物理的な場へと転移します。ある時代の終わりの時空の幾何学は、次の時代の始まりの時空の幾何学と一致します。しかし、長さはリスケールされ、古い時代の巨大な体積がビッグバン後は極小の体積として扱われます。このリスケールによって、古い時代の終わりには極低温で光子が拡散していたのが、ビッグバン後には極高温・高密度な状態として現れます。「有効エントロピー」も、私たちの宇宙で観測される低エントロピーと一致する必要に合わせて小さく見えます。

 

ペンローズは「The Big Bang and its Dark-Matter Content: Whence, Whither, and Wherefore」で次のようにコメントしています。

 

この共形的な自由度により、次のアイオーンの熱いビッグバンを引き伸ばし、前のアイオーンの遠未来を押し縮めることが可能になる — ただし、エネルギーと運動量のスケールは空間と時間のスケールと正反対であることに留意せよ。つまり、共形的な伸張によって、高温は低温に、高密度は低密度になる。・・・

 

すべてのブラックホールが蒸発したとき、クロスオーバー3面では、有効エントロピーが次のアイオーンを開始するのに必要な非常に低い値まで低下している。それゆえ、第二法則には違反していない。有効エントロピーの定義が、新しいアイオーンに関連するものへと切り替わらなければならないという意味で、第二法則は超越される。

 

ペンローズは、自分のモデルは宇宙マイクロ波背景放射 (CMBR) で観測されたパターンによる証拠で支持されていると論じています。特に、彼が特定した同心円と「異常な点」は、最近のビッグバン以前の宇宙の痕跡を提示していると主張しています。

ペンローズとその批判

しかし、CCCは他の宇宙学者からの厳しい批判に直面しています。CMBRにおける同心円は、他の研究グループには識別できませんでした。また、CMBRのデータは、CCCよりも他の宇宙論モデルにはるかによく適合しているという意見も多いのです。さらに、電子が最終的に質量を失うという仮定は、素粒子物理学標準模型と整合していません。物理学者のジュリアン・バーバーは、「Inside Penrose's Universe」で次のように述べています。

 

この提案には克服すべき問題が数多く存在し、それには第二法則についてのペンローズ自身のアイディアを根本的に再考することが関係する。1つの重大な問題は、電子の質量を含むすべての粒子の質量が、非常に遠い将来に正確にゼロになることに大きく依存していることである。多くの素粒子物理学者がこの点に疑問を持つだろう。しかし、最大の難点は、たとえアイオーンの形が一致したとしても、クロスオーバー前の無限に大きなスケールからクロスオーバー後の無限に小さなスケールへの移行はどのように起こるのだろうかということである。ここが論証と数学が大変になるところだ・・・。

 

クロスオーバーには純粋に数学的な共形変換を伴うため、ペンローズはクロスオーバーの前に「ファントム」と呼ばれるスカラー場を用いてクロスオーバーを実現している。そしてこの場はクロスオーバーの後に物理的なものになる・・・。純粋に数学的なものから物理的なものへと「直ちに」行われるその変換は、物理学において他に類を見ないことである — 量子力学における悪名高い波動関数の収縮になぞらえるのでなければ。

 

宇宙物理学者のイーサン・シーゲルはさらに遠慮がなく、「No, Roger Penrose, We See No Evidence Of A ‘Universe Before The Big Bang’」で次のように述べています。

 

ペンローズはホイルのように自分の主張において孤立してはいないが、データは圧倒的に、彼の主張に反対している。ペンローズの予測はデータによって反証されており、彼が主張するこれらの効果は、科学的に不健全で非論理的な仕方でデータを分析した場合にのみ再現可能である。何百人もの科学者が、10年以上にわたって繰り返し、一貫してこのことをペンローズに指摘してきたが、ペンローズはこの分野を無視して、自分の主張を進め続けている。

疑しい仮定

付加的な問題として、ペンローズのモデルは、いくつかの非常に疑わしい仮定を必要とします。まず、膨張する宇宙には絶対的な始まりがあることを証明するボーデ-グース-ビレンキンの定理が示唆するものを克服しなければなりません。この結論を避けるために、ペンローズは宇宙が無限の過去に無限に大きかったと仮定しなければなりませんが、これには哲学的な問題があります。その他の証明されていない仮定として、以下があります。

  • すべての粒子の質量がゼロになる。
  • 適切なタイミングで活性化してクロスオーバーを誘発するスカラー場が存在する。
  • スカラー場の質量はクロスオーバー後に急速に増加する。

支持を与える証拠の欠如とその場しのぎの仮定からして、CCCは宇宙には始まりがあったという証拠への重大な挑戦を提供するものではありません。したがって、時間と空間の外側にある何かが、もっと可能性が高いのは誰かが、宇宙を創造したに違いありません。