This is the Japanese translation of this site.
ケイシー・ラスキン
2021/12/3 13:55
編集部注: これは、新しく発売された書籍『The Comprehensive Guide to Science and Faith: Exploring the Ultimate Questions About Life and the Cosmos (English Edition)』の一つの章からの抜粋です。
IDに対する最も一般的な反論は、IDは科学ではなく宗教だというものである。この反論になぜ欠陥があるのかを理解するには、まずID理論家がどのようにデザインを論じるのかを正しく認識しなければならない。
インテリジェントデザインとは、宇宙や生物の多くの特徴は、自然選択のような無方向性の過程ではなく、知的な原因によって最もよく説明されるとする科学理論である。IDは、物質的なメカニズムによって生成されたものと、知性によって引き起こされたものを識別することを目的としている。
人間の行為者を研究する
ID理論家は、知的行為者が物事をデザインするときに、どのように行動するかを観察することから始める。人間の知的行為者を研究することで、知的行為者が行動するとき、高レベルの情報を生成することを我々は知る。デザインを示唆するタイプの情報は、一般に「特定された複雑性」あるいは「複雑な特定された情報 (略してCSI)」と呼ばれる。この用語について簡単に説明しよう。
大雑把に言うと、あることがありそうにないのであればそれは複雑である。しかし、複雑さや可能性の低さだけでは、デザインを推論するのに十分ではない。なぜかと言うと、例えば、ポーカーゲームで5枚のカードが配られたとしよう。受け取った手は何であろうととてもありそうにないだろう。ストレートやロイヤルフラッシュのような良い手が出たとしても、必ずしも「ああ、デッキの積み込みがあった」とは言わないだろう。なぜだろうか?なぜなら、ありそうにないことは常に起こるからだ。単純にあることがありそうにないからといって、デザインを推論することはない。我々はもっと多くを必要としており、ID理論家のウィリアム・デムスキーによれば、それが特定性である。ある独立したパターンに一致していれば、それは特定されている。
特定性を理解するために、あなたが北米の山を訪れる観光客だと想像してみよう。まず、太平洋岸北西部にある巨大な休火山、レーニア山に出くわしたとする。この山はユニークで、岩石、峰、尾根、溝、割れ目、岩場などのあらゆる可能な組み合わせを考えても、その正確な形状は極めてありそうになく、複雑である。しかし、レーニア山が複雑な形をしているからといって、デザインを推量することはしない。なぜだろうか?なぜなら、浸食、隆起、加熱、冷却、凍結、融解、風化などの自然の過程で、その形状を簡単に説明できるからだ。レーニア山の形状には、特別な独立したパターンはない。その複雑さだけでは、デザインを推量するには十分ではない。
今度は別の山、サウスダコタ州のラシュモア山を訪ねてみよう。この山も、とてもありそうにない形状をしているが、その形状は特殊である。それは、4人の有名な大統領の顔というパターンに合致している。ラシュモア山の場合は、複雑さを観察するだけでなく、特定性も見出すことができる。したがって、その形状はデザインされたと推量される (図1)。
図1 この2つの山のうち、デザインを検出できる形状をしているのはどちらだろうか?レーニア山 (左) は、ありそうにない (複雑な) 形をしているが、特定されていないので、デザインは検出されない。一方、ラシュモア山 (右) は、複雑かつ特定される形状をしているため、デザインを検出する。著作権表示: レーニア山: ケイシー・ラスキン、ラシュモア山: ディーン・フランクリン、CC BY 2.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/2.0)、ウィキメディア・コモンズから。
科学的方法の使用
IDが宗教ではなく科学であることは、IDが科学的方法を用いてその主張をしていることからもわかる。科学的方法とは一般的に、観察、仮説、実験、結論の4段階の過程で記述される。IDはこの方法を正確に用いている。
- 観察: ID理論家は知的行為者が高レベルのCSIを産み出していることを観察することから始める。
- 仮説: もし自然物がデザインされたのであれば、高いCSIを持つはずだという仮説を立てる。
- 実験: 科学者が自然物に対して実験的なテストを行い、それらが高いCSIを含むかどうかを判断する。例えば、突然変異への感受性をテストすると、酵素はCSIに富んでいることが分かる。すなわち酵素は、機能するために必要な配列パターンに正確に合致する、大いにありそうにないアミノ酸の並び方を含んでいる1。遺伝子ノックアウト実験により、ある種の分子機械は還元不能なほど複雑であることが示されている2。
- 結論: ID研究者がDNA、タンパク質、分子機械に高度なCSIを発見すると、そのような構造はデザインされたと結論する。
生物学よりはるかに広い範囲
しかし、一般的な概念とは異なり、IDは生物学よりもはるかに広い範囲に及んでいる。物理学や化学の法則は、生命が存在できるように微細に調整されているため、デザインの証拠を示している (詳細は第20、21、22、23章を参照)。宇宙の法則は、ありそうにない設定を提示していることにおいて複雑である。宇宙学者の計算では、私たちの宇宙は生命にとって信じられないほど、1010123分の1 (10分の1を10123乗したもので、これほど小さい数字を伝える言葉や例えはないのだ!) 以下で微細に調整されている3。そのうえこれらの法則は、高等生命の存在に要求される極めて狭い範囲の値や設定に合致しているため、特定されている。これもまた高度なCSIであり、デザインを示唆している。ノーベル賞受賞者のチャールズ・タウンズが述べた通りである。
科学的見地から見たインテリジェントデザインは、かなり現実的であるように思われます。この宇宙は非常に特殊であり、このように現出したのは注目に値します。もし、物理法則が今あるとおりでなかったら、私たちがここにいることはできなかったでしょう4。
知られている源は1つ
要約すると、前世紀の科学的発見により、生命が基本的に以下のことに基づいていることが示されたのである。
- DNAにおいて生化学的言語でデジタル化された膨大な量のCSI。
- DNAにプログラムされた命令を細胞機構が読み取り、解釈し、実行して、機能的なタンパク質を産み出すという、コンピューターのような情報処理システム。
- 微細調整されたタンパク質で構成された、還元不能なほど複雑な分子機械。
- 宇宙の法則や定数の絶妙なファインチューニング。
言語ベースのデジタルコード、コンピュータのようなプログラミング、機械、その他の高CSI構造は、我々の経験上、どこから来るのだろうか?知られている源は1つしかない。それは、知性である。
ここで簡単に概説したデザインについての論議は、完全に経験に基づいている。それは、我々が経験上、知的な原因から派生すると知っている種類の情報と複雑性を自然界に見い出すことによって、デザインの肯定的な証拠を提供している (このデザインの肯定的な事例については、第16章でさらに詳しく説明する)。IDの結論に同意しない人もいるかもしれないが、この論議が宗教、信仰、あるいは政治に基づくものであると合理的に主張することはできない。これは科学に基づくものである。
注釈
-
- Axe, D. D. (2000) Extreme functional sensitivity to conservative amino acid changes on enzyme exteriors. Journal of Molecular Biology. 301 (3), 585-595.
- Axe, D. D. (2004) Estimating the prevalence of protein sequences adopting functional enzyme folds. Journal of Molecular Biology. 341 (5), 1295-1315.
-
- キッツミラー対ドーバー裁判でのスコット・ミニッチの証言の複写 (ペンシルバニア州中部地区地方裁判所、2005年11月3日の午後の証言)、103-112ページ。
- Robert M. M. (1987) Flagella. In: Neidhardt et al. (eds.) Escherichia Coli and Salmonella Typhimurium: Cellular and Molecular Biology, Vol. 1. Washington, DC: American Society for Microbiology. pp.73-74.
- Penrose, R., & Gardner, M. (2002) The Emperor’s New Mind: Concerning Computers, Minds, and the Laws of Physics. Oxford, UK: Oxford University Press.
(邦訳: 『皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則』、林一訳、みすず書房、1994年) - Powell, B. A. (2005) 'Explore as much as we can': Nobel Prize winner Charles Townes on evolution, intelligent design, and the meaning of life. UC Berkeley News Center (June 17, 2005). https://www.berkeley.edu/news/media/releases/2005/06/17_townes.shtml (2020年10月26日アクセス)