Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

ジム・ツアーが生命の起源に関するスティーブ・ベナーの二重基準と不正確な解説を暴く

This is the Japanese translation of this site.

 

ブライアン・ミラー
2023/2/21 9:54

 

私の最近の記事 (こちらこちら) では、 YouTuberのデイブ・ファリーナが合成化学者ブルース・リプシュッツの研究をどのように誤認させたか、また同僚の合成化学者リー・クローニンが自分の研究と生命の起源の謎の関連性をどのように歪曲させたかを要約しました。今回は、別の合成化学者であるスティーブ・ベナーが、他の研究者の生命の起源についての研究を自身の研究と比較して評価する際に適用した二重基準について、ジェームズ・ツアーが暴いたことを要約します。以下のツアーのビデオをご覧ください。

もし、ベナーが自分の実験を他の人々に当てはめたのと同じ基準で評価したなら、生命の起源を理解しようとする彼の試みが価値あるものを何も生み出さなかったことを認めたことでしょう。この分野の第一人者である彼の失敗は、とりわけ特筆に値します。

ツアーへのベナーの不正確な批判

ベナーは、ファリーナによるインタビューの冒頭で、ツアーのビデオの内容を完全に誤り伝え、自分がそれらを注意深く見ていないことを実証しました。そして、市販の超高純度化合物から出発し、厳重な管理下で相互作用させ、最後にその寄せ集めから生物学的に有用な分子を抽出するという実験に対するツアーの批判を肯定しました。そのような研究は、初期の地球で起こったかもしれないこととは何の関連性もありません。

 

そしてベナーは、プレバイオティクスの化学者は「そのような批判が当てはまらないように懸命に努力している」と主張しました。ツアーは、同じような非現実的な実験を行っている数多くの合成化学者を挙げて、この分野についてのベナーの描写が全く不正確であることを実証しました。生命にとって有用なものを生成する実験はすべて、非現実的な化学混合物から出発しており、研究者が厳重に制御するようにしなければならず、 現実的な分子と条件から出発する実験はすべて、生命の起源に一切寄与できない無数の有機分子の御しがたい混合物を生み出します (こちらこちらこちら)。

ヌクレオチドの合成

次にツアーは、ヌクレオチドの一部であるリボースを産生するベナーの実験を分析しました。その実験では、ホルムアルデヒドとグリコールアルデヒドをホウ酸塩や他の鉱物の存在下で反応させ、その生成物が識別されました。反応ではリボースが生み出されましたが、膨大な数の他の生成物の1つに過ぎず、そのリボースは数日以内に分解されました。ツアーは、この実験の成果を「ジャンク」とみなしました。そのような実験ではすべて同様に、現実的な自然条件下で、リボースが他の化合物から分離してから核酸塩基やリン酸塩と結合し、微量でない濃度でヌクレオチドを形成することは不可能です。

 

ツアーは次に、ヌクレオチドを生成するためにベナーが提唱した経路が、ベナーが避けるように懸命に努力したと述べたまさにその介入に依存していることを暴露しました。ベナーは、『Life』誌に掲載された2019年の記事で、リボースがアミド三リン酸 (AmTP) と反応して、人間の介入なしにリボースにリン酸塩を付与することができたと主張しました。とはいえこの反応は、ベナーのリボース合成実験の生成物ではうまくいきません。代わりに、超高純度のリボースを市販で購入する必要があります。

 

加えて、ベナーはAmTP反応の詳細を公開せず、単にクリシュナムルティ他 (2000年) を引用しています。しかし、その論文には、反応を促進するために必要だった膨大な研究者の介入が詳細に記されています。ツアーは、AmTPやジアミドリン酸のような他のリン酸化剤が、初期の地球に起源を持つことがありえないことも暴露しました。これらの分子がプレバイオティクスに関連するというすべての主張の基礎は、引用を追跡してもどこにも見当たりません。

 

最後の問題として、ツアーは、その反応を可能にするために塩化マグネシウム (MgCl2) が使われていることを確認しました。この化合物は、ヌクレオチドの鎖状結合を阻害するという課題があります。同様に、リボースの産生に必要な化学的条件は、核酸塩基の産生に必要なものとは異なります。したがって、ヌクレオチドの合成には、自然界では起こり得るよりもはるかに調整されたタイミングと条件で、異なる環境に分子を輸送することが必要になります。

玄武岩ガラス上のRNAの形成

ベナーはインタビューの後半で、彼の同僚が、「純度の高い出発物質や人間の不断の介入」がなくても、ヌクレオチドが古代の岩石上で長鎖状に結合し得ることを実証したと主張しました。ツアーは、ベナーが言及した2022年の研究をいかに完全に誤り伝えているかを詳述しました。それには複数の理由があります。

鎖の形成は、実験条件を注意深く制御することなしには決して起こらなかったでしょう。そのような非現実的な条件でも、実験で生成された鎖には多くのヌクレオチド間違った結合でつながった鎖が含まれていたのですから、生命の起源についてのシナリオには、その鎖は何の役にも立ちませんでした。自分と同僚の研究についてのベナーの記述は、ほぼ全体が誇大広告でした。無方向性の過程を通して生命の起源を説明する上での主要な課題のいずれかが解決されたという主張についても、同じことが言えます。

 

ベナー、クローニン、そして他の多くの研究者たちは、ベナー自身が設立した応用分子進化財団が書いた生命の起源実験への批判を心に留めておくといいでしょう。

 

「近年、生命の起源を研究するコミュニティは分裂している」と、『Astrobiology』誌のオンライン版に掲載された研究の共著者であるスティーブン・ベナーは述べた。

 

「あるコミュニティでは、熟練した化学者の手による難しい化学反応を必要とする複雑な化学的スキームで、古典的な問題を再検討している」とベナーは説明する。「彼らの美しい作品は、『Nature』や『Science』などの名高い雑誌に掲載される」。しかし、まさにこの化学の複雑さのゆえに、生命が地球上で実際にどのように始まったかを説明することはできそうにない。