Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

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生命の起源: ケンブリッジの宇宙化学者ポール・リマーがツアー-ファリーナの討論を分析する

This is the Japanese translation of this site.

 

ブライアン・ミラー
2023/7/13 13:24

 

ケンブリッジ大学の宇宙化学者ポール・リマーが、ポッドキャスト『Capturing Christianity』で、ジェームズ・ツアーとデイブ・ファリーナの討論を分析しました。リマーは、生命の起源 (OOL) 研究の期待の星として評価されています。彼の寛容で思慮深い態度は、ファリーナとは正反対であることを示しています。彼は、科学を正確性とニュアンスを伴って説明することへの関心も示しています。

 

討論の分析において、リマーは関連する研究についての説得力があり本質に迫る概観を提示し、論点をより明確に理解できるようにしています。リマーのコメントは思慮深く、啓発的だと感じました。特に印象的だったのは、彼とツアーのこの分野に対する評価の違いは、主に科学的な詳細についての理解によってではなく、哲学的な枠組みの違いによって引き起こされていると彼が認識していることでした。

 

 

私はリマーについて多くの肯定的な考えを持っており、討論後の彼の分析を見た多くの人々が、当然のように彼を肯定的に見るようになると期待しています。しかし、視聴者は重大な注意点に気づくべきでしょう。結局のところ、ポール・リマーは生命の起源についての化学的説明をあまりにも信用しすぎています。彼のスタンスは、疑いなく主流のOOL研究分野の一員であることを反映しています。そのコミュニティの外の人々にとっては、この分野を前進させたとリマーが称賛する研究でさえ、生命が自然の過程に起源を持つことは科学的根拠からして不可能であることをさらに確証しているにすぎません。

討論の分析

リマーは、生命の起源についての研究の有用なチュートリアルから始めています。彼は、ジョン・サザーランドによる最初の自己複製細胞に至る段階の推定図と、この分野の現状を含めています。リマーは、生命への道のりを、ダーウィン的に進化する能力を持つものが出現するまで、徐々に複雑さを増していく安定した系の連続的な系列として要約しています。

 

次にリマーは、ツアーとファリーナが提起した具体的な論題を展開します。彼は、初期の地球でAspとLysというアミノ酸がどのように連結したのかというツアーの質問への返答でファリーナが引用した研究を説明します。リマーは、ファリーナが引用した論文がツアーの質問を直接取り上げていないことは認めていますが、それでもそれらはアミノ酸鎖がどのようにして出現し得たかについての手がかりを提供していると主張します。レマン、オーゲル、ガディリ (2004年) が硫化カルボニルの助けを借りて、アミノ酸Ala、Phe、Leu、Ser、Tryを連結させたことを彼は説明します。そして、シン他 (2022年) がチオールなどの触媒を採用して、アミノニトリル (アミノ酸の前駆体) をアミノ酸に連結させたことを説明します

 

リマーは続けて、ファリーナが参照したRNAの起源に関する研究を説明します。討論の中でツアーは、ヌクレオチドがしばしば標準的な3'-5'結合ではなく、2'-5'結合で成長する鎖に加わること、つまりヌクレオチドがリボース分子中の間違った炭素に結合することについて説明しました。ファリーナはこの障害に対して、ハンマーヘッド型リボザイム (RNA酵素) として知られるヌクレオチド鎖が、リボザイムが2'-5'結合をいくつか持っていてもRNA分子を分解できることを検証したエンゲルハルト他 (2013年) を引用して返答しました。

 

リマーは、間違った結合を持つRNAの複製は確実ではないので、生命へのさらなる進歩に大きな障害を提起していると述べます。単一のRNA分子は、生命に関連する反応を促進できる適切な局所環境に移動する前に、ほぼ常に分解されてしまいます。それが生命の起源に何らかの役割を果たすには、何度も複製されなければなりません。

 

それでも、マリアーニとサザーランド (2017年) が2'-5'結合を正しい3'-5'結合に置き換える化学的経路を実証したことから、この挑戦は必ずしも克服できないものではないとリマーは論じます。リマーは、この修正過程は高効率でも確実でもないため、この研究がRNA構築の問題を完全に解決するものではないことは認めていますが、このような研究は、RNA分子がどのようにして出現し得たかについての「手がかり」を提供するものだと主張しています。この研究にはさらに問題があり、以下で説明します。

前提の違い

ツアーとリマーの見方の違いは、その出発点における前提の違いに起因しています。リマーは彼が受けた科学的な教育により、生命が自然の過程に起源を持つ可能性のみを考慮するように訓練されました。リマーは暗黙のうちに、生命にデザインが見られることについての質問への返答においてこの事実を認めています。彼は本質的に、化学や生物学、あるいは他のあらゆる自然現象が精神を必要とする限りにおいてのみ、生命の起源は「精神」を必要とすると論じています。これは、彼が他の場所で書いた、「生命が最初に地球上でどのように始まったかという疑問への・・・完全な生物学的説明」がいつか見つかるだろうという予言と整合しています。彼は、生命の存在を可能にする物理法則の背後にある明らかなデザインを超えてデザインの証拠を吟味したくはないと述べています。その結果、彼は実験が初期の地球で起こり得たことと完璧に一致するか、あるいはその化学がプレバイオティクス的に妥当かどうかさえ気にしていません。彼が考える進歩とは、単に起こったかもしれないことへの手がかりを見つけることです。

 

対照的にツアーは、生命の起源の理解における進歩とは、自然に起こる可能性があり、生命を次の段階へと促すのに十分な量と純度の分子を産み出す化学的過程を実証することだと考えています。ツアーは、そのような研究は存在しないと説得力を持って論じています (例えば、こちらこちらをご覧ください)。

 

ツアーの視点から、リマーが参照した研究 (こちらこちらこちらこちら) で使用された手続きを注意深く分析すると、これらの研究は、自然には決して生じ得ない濃度と純度の注意深く選ばれた分子から始めることによって、化学系を生命へと向かわせたに過ぎないことが明らかになります。また、実験には細心の注意を払ってデザインされた実験プロトコルが採用されていますが、古代の地球で起こり得たこととの類似性はわずかです。

 

もしこの実験がより現実的な化学混合物や環境条件を用いたものであれば、生物学的に関連するものは産み出されなかったでしょう。さらに、その結果の産物が古代の環境に堆積したなら、単に生物学的に無用なアスファルトに分解されたことでしょう。スティーブン・ベナーはこの傾向を「アスファルトのパラドックス」と表現しています。言い換えれば、この研究は興味深くはありますが、現実的な自然環境を模倣したものではありませんし、やがて生命を産み出す可能性のある化学的混合物を産み出したものでもありません。

確率のパラドックス

ファリーナとリマーが引用したハンマーヘッド型リボザイムの研究は、RNAワールド仮説にさらなる克服しがたい障害を提起しています。2'-5'結合を持つリボザイムは主にRNAを分解することが示されており、ベナーが「確率のパラドックス」と呼ぶものにつながります。ベナーはこれを以下のように説明しています。

 

実験によると、(適応度について) ランダムな配列のプールの中では、RNAの破壊を触媒するRNA分子は、欠陥の有無にかかわらずRNAの複製を触媒するRNA分子よりも、より生じやすくなる。

 

もし、ランダムに配列されたRNAのシステムが初期の地球に出現したとしたら、生物学的に有用なリボザイムは、システムがより単純な分子に分解されるにつれて、速やかに消滅したことでしょう。

将来のプレゼンテーション

前述したように、ポール・リマーは思慮深く、礼儀正しい人です。彼の声を聞くべきでしょう。彼はOOL研究の分野で働く科学者の視点から討論を分析するよう求められたのですから、彼のプレゼンテーションで間違ったことは何も言っていません。しかし、その分野で働いていない人たちは、彼が引用した研究に生命の化学的起源が可能であるという説得力がない理由をたくさん見つけることができます。おそらく今後の議論では、リマーは自身の哲学的枠組みがどのようにOOLの研究の結果の解釈を形作っているのかを探れるでしょう。理想的には、同じ枠組み内で活動していない科学者たちが、なぜこの分野の現状をまったく異なる仕方で評価しているのかを説明することもできるでしょう。

 

OOLの研究者たちとも思慮に富んだ対話をしてきた者として、私はそのような会話に加わることができればとても嬉しく思います。しかし、私はポール・リマーのキャリアを危険にさらしたくはありません。OOLの研究分野で働く人にとって、その分野の根本的な弱点についてあまり率直に公言することは賢明ではないでしょう。そうすると、自分のキャリアが危うくなるからです。