Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

デイブ教授の子供じみた嫌がらせと電撃的引用ブラフを暴く

This is the Japanese translation of this site.

 

ケイシー・ラスキン
2023/5/29 6:40

 

この連載で私は、ライス大学の化学教授ジェームズ・ツアーとYouTube科学教育者の「教授」デイブ・ファリーナとの間で最近行われた生命の起源討論について、事後検証を行ってきました。この連載のポイントは、科学の専門家でなくても、誰が討論に勝ったかを理解できることです。この討論で誰が勝ったかについて、強力な指標となる3つの観察を提示します。

  1. ツアーは科学に焦点を当て、ファリーナは人格攻撃に焦点を当てた。
  2. ツアーは合理的な科学的課題を提示し、ファリーナはそれに答えることを拒否した。
  3. ファリーナは子供じみた嫌がらせ、権威に訴える論証、引用ブラフに大きく依拠していた。

前回の投稿では1番目2番目の要素について議論しましたが、ここでは3番目の要素を取り上げることにしましょう。

科学で目をくらませる?

この連載によって、デイブ・ファリーナが科学について議論しなかったと思われることは望んでいません。流れるようなジェームズ・ツアーへの人格攻撃や嘲笑のところどころに、ある程度の科学が現れました。ファリーナは明らかに、質疑応答に備えて、引用しようとしていた指導的な生命起源研究者たちが書いた査読済みの科学論文のリストを明らかに用意していました。というのも、それらの論文が、さまざまな化学物質がプレバイオティック条件下でどのように形成されうるか、というツアーの要求に答えていたと彼は信じていたからです。それはいいでしょう。ファリーナにとってはいいことです。これは正しい方向への一歩でした。

 

ファリーナが、科学の詳細な説明を与えるのではなく、引用に次ぐ引用をツアーに投げつけるという電撃的なアプローチをとったのはここでした。ツアーは、論文の多くではないとしても、いくつかについては返答しようとしましたが、すべての論文に返答するには単純に時間が足りませんでした。

 

しかし、非常に多くの場合、ツアーはなぜそれらの論文がファリーナが主張するような結果を出さなかったのか、あるいは実際に現実的なプレバイオティック条件をモデル化していなかったのかについて、答えを用意していました。ここで明らかになったのは、ファリーナは頻繁に論議に窮し、説得力のないはったり芝居に頼るということでした。

 

ファリーナは時々、自分が引用したばかりの論文にツアーが異議を唱えるのを先回りして防ごうとして、「それではこの人を詐欺師と呼ぶのですか?」とか「著者を嘘つきと呼ぶのですか?」などと言いました。ファリーナがこれを何度も何度も言うので、だんだん壊れたレコードに似てきました。彼があえて、その時々のファリーナの科学的権威への挑戦 (すなわち、その権威についてのファリーナの主張) をしようとするのであれば、ツアーの誠実さを暗に脅かす以外にないことは明らかでした。

 

ファリーナが繰り返した濡れ衣は、ツアーが論文を批判するなら、彼は科学者たちを完全な「詐欺師」か「嘘つき」呼ばわりしているに違いない、というもので、彼はこれについてツアーが反対したり、異議を唱えたりはさせませんでした。ツアーが詳細を話すと、ファリーナは彼を馬鹿にするのでした。ファリーナの権威に同意しなければ、即座に変人、知的に欠陥があると見なされました。

 

他の時には、ファリーナは皮肉でトゥールを嘲笑し、頻繁に身をかがめてツアーの言葉の後にあざ笑うような口調で繰り返すことさえしました。質問への答えがないという事実から注意をそらそうとする人間から予想される子供じみた嫌がらせです。同様に、ツアーが生命の起源に挑戦する数値統計を引用するたびに、ファリーナは「また大きな数字が出しましたね」などとあざ笑うようにつぶやき、単に本質的な論議をしているツアーを軽蔑しました。このような悪ふざけは物見高い観客を喜ばせるかもしれないが、ファリーナの科学に対する信頼を高めることはありません。

 

矢継ぎ早の引用という手法は、彼の論文が実際に彼の主張を裏付けているかどうかについても疑問を提起しました。実際、討論後に調査したところ、ファリーナの論文の少なくともいくつかは、私たちが「引用ブラフ」と呼んでいるものだったことが示されました。

RNA複製についてのファリーナの引用ブラフ

重要な例を1つ挙げると、ファリーナは2009年に『Science』誌に掲載された、生命の起源の巨人ジェラルド・ジョイスの共著論文を引用し、彼らは生命の起源の重要な段階である「完全に複製された」RNA (ファリーナの言葉) を産み出したと主張しました。この論文に出会ったのは今回が初めてではありません。スティーブン・メイヤーとブライアン・ミラーの両名がこの論文に答えています。数年前、ミラーはマイヤーへの論駁としてこの論文を引用した別の対話者への回答として、この論文を鋭く解体しました。以下は、ミラー博士が書いたものです。

 

では、ジョイスの実験はどうでしょうか?妥当なプレバイオティック条件下で、知性の介入がなくても、RNA分子が10%以上自己複製できる (メイヤーが異議を唱えている具体的な主張) ことが示されたのでしょうか。

 

いいえ、そうではありません。むしろ、ジョイスとロバートソン、そしてそれ以前にジョイスとリンカーンが実際に行ったのは下記のとおりです。

 

この実験でジェラルド・ジョイスとその同僚たちは、Eと名付けられた特別にデザインされたRNA酵素 (リボザイム) が、別のRNA分子の2つの部分鎖または半分 (RNA基質A'とB'と呼ばれる) を結合できることを実証しました。その結果生じるE'と名付けられた新しいRNA酵素は、元のリボザイムの2つの部分 (RNA基質AとB) を結合することができました。すると、この過程により融合した長い鎖 (つまり、リボザイムEとE') は、(1) 2つの半分 (A'とB'またはAとB) を実験に十分な量で継続的に供給し、(2) 重要なタンパク質酵素を特定の時期に実験に投入すれば、反対側のリボザイムの2つの部分を繰り返し融合することができます。

 

この過程全体を描写した図があります

 

フォークとこの研究者たち自身は、これらの実験が「自立したダーウィン的進化」をシミュレートする自己複製システムを生み出したかのような印象を与えていますが、実際にはそのようなことはありませんでした。10%以上の自己複製が可能なRNA分子や、まして「100%の効率」で自己複製可能で、かつそれを妥当なプレバイオティック条件の下で行えるRNA分子も作られていません。

重合や複製ではなくライゲーション

そもそもジョイスと同僚たちは、純粋に自己複製する分子を産み出したわけではありません。RNAワールドの提唱者たちが思い描いているように、自己複製するRNA分子の出現は、地球上に最初の生命が誕生するための決定的な段階です。というのも、そのような自己複製する分子が出現して初めて、自然選択やランダムな突然変異が起こり始めるからです。

 

さらにRNAワールドのシナリオでは、自己複製するRNA分子は、(1) 初期の地球上でRNAの化学的サブユニットが形成され、(2) それらのサブユニットが特定の方法で結合して、自分自身のコピー (およびコピーに近いもの) を作り出すことができるRNA分子を形成して初めて出現するとされています。RNAワールドの研究者たちは、このような自己複製は、リボザイム (具体的にはRNAレプリカーゼ) が自分の相補的なコピーをテンプレートにして、自由行動するRNAサブユニット (特に活性化したRNAヌクレオチド) から元の鎖のコピーをもう1本産み出すことで起こると思い描いています。

 

とはいえ、メイヤーが繰り返し注意しているように、ジョイスの実験に登場する分子は、テンプレートに沿って自己複製する能力を示していません。つまり、RNAワールドの支持者がRNA分子から生命が誕生する過程において決定的であると思い描いている能力です。このような自己複製を行うためには、リボザイムがポリメラーゼとして機能する必要があります。言い換えると、リボザイムには多くのヌクレオチド塩基を結合して長いRNA鎖を形成する能力が必要です。ジョイスの実験のリボザイムにはこのような作用はありません。むしろ、あらかじめ作られ配列されたRNAの2つの半分または断片の両端の間の単一結合に対し触媒作用を及ぼす (連結する) ものです。このように、ジョイスの実験に登場するRNA酵素は、ポリメラーゼやレプリカーゼではなく、単純なリガーゼとして機能しています。

 

さらに、前述のように、フォークはリボザイムが大規模な自己複製という芸当を行う能力があることを実証したというジョイスの研究についてメイヤーが気づいていないように描写していますが、メイヤーはすでに、それらが自己複製能力を持たないことを示してこれらの実験を批判しており、『Return of the God Hypothesis』でもそうしています。彼は309ページでこのように述べています。

 

この実験における「自己複製」RNA分子は、実際の細胞内でポリメラーゼと呼ばれるタンパク質機械が行うように、独立したヌクレオチドから遺伝情報のテンプレートをコピーするのではない。そうではなくこの実験では、あらかじめ合成された特定の塩基配列をもつRNA分子が、1つの化学結合に触媒作用を及ぼして、あらかじめ合成された他の2つの部分的なRNA鎖を融合させただけであった。つまり、彼らが解釈するところの「自己複製」は、特定の配列の2つの半分を結合させたにすぎないのである。

 

このような限界があるからこそ、RNAの自己複製のシミュレーションでは10%以上の自己複製を生産可能な分子を産み出すことはできないと強調したメイヤーは正しかったのです。ジョイスの実験で彼のRNAリガーゼにより実行された単一結合は、結果として得られるRNA鎖 (それぞれの鎖には、ヌクレオチド塩基間にそのような結合が60個以上ある) の結合総数の10%にも及びません。実際ジョイス自身も、彼の実験は重合ではなくライゲーションを行うRNA分子の能力を示しただけであり、純粋な自己複製ではないことを認めています。彼が述べているとおり、彼が使用した「指向性進化法の戦略では、複製そのものよりも、単純なライゲーション反応に触媒作用を及ぼす能力の選択が必要であった」のです。

 

したがって、「完全に複製された」RNAを産み出すとしてファリーナが引用している論文は、そのようなことを示していません。それは、RNA酵素が2本の既存のRNA鎖をライゲーション (連結) できる (ただし、そのようなRNA鎖が大量に供給され続けている場合に限られる) ことを示しています。 ここで新しいRNA分子の重合が起こったということはありません。ミラーが述べているように、「多くのヌクレオチド塩基を結合して長いRNA鎖を形成する」能力はありません。それゆえにミラーは、ジョイスが後の論文で、まさにこれらの実験についてコメントしていることを記しています。ジョイスはこれについて、「指向性進化法の戦略では、複製そのものよりも、単純なライゲーション反応に触媒作用を及ぼす能力の選択が必要であった」と認めています。これはファリーナが主張した「完全に複製された」という結果とは大きく異なります。

 

私たちは実際にこの論文に取り組み、動画「Long Story Short: Origin of Life」で、この論文で本当は何が起こっていたのかについての鮮やかな議論を提示しました。詳しくはこちらのビデオをご覧ください。

 

複製の説明にはほど遠い

その「Long Story Short」の動画の作成に協力した生物医学エンジニアのロバート・スタドラーは、最近の『ID the Future』のエピソードで、この論文と「Long Story Short」の動画の批評についてさらに議論しました。彼とエリック・アンダーソンは、この論文が複製の起源を説明することからほど遠いことを説明しました。何が起こっているのかを理解するには、書き起こしが役に立つでしょう。

 

スタドラー: 例えるなら、半分に切断した車があったとして、そこにやってきたもう一台の車が、切断された車の2つの半分を一緒に押しつけ、2つが結合して機能する車になったとします。そして、世界初の自己複製する車を作ったと主張します。この論文でやっているのは、基本的にそういうことです。なぜならそれはリボザイムRNA、RNAの鎖であり、これはそれ自身の2つの半分の間に機能的単一結合を創出して、それらを結びつけてそれ自身の完全なバージョンを創出することができますが、それを自己複製であると主張したからです。

 

アンダーソン: そう、私はこのビデオの例が大好きです。私たちにとって本当に役に立ちますから。・・・彼らは反応を触媒するこのRNAを持っていて、それを特定のヌクレオチドが結合している点で分割しました。それから出かけていって、2本の分子鎖を買います — 文字通り高分子ストアで買うという意味です。そしてリガーゼを使うか、または2本のヌクレオチドをつなぎ合わせて1つにすると、にわかに2つ目が手に入り、それが複製だと主張します・・・。

 

スタドラー: この実験では遺伝性のものは伝達されないということも、本当に重要な限界です。結合を行う分子であるリボソームが、その情報をそれら2つのパーツの組み合わせに伝達していないという意味です。それが行っているのは、それらを結合させるだけで、あとは離れてそれぞれが自分のことをするのです。

 

アンダーソン: そうですね。そしてその反応が、試薬を使い果たすまで試験管の中で継続していくだけで、その後完了します。

 

スタドラー: その通りです。

しかしまだある

ジョイスはどのようにして、必要な結合されるRNA鎖を継続的に供給させたのでしょうか?それは現代の生化学とインテリジェントデザインを通してでした。つまり、無誘導のプレバイオティック条件をシミュレーションしたことによるのではありません。ミラーは続けます

 

では、これらのことからすると、ジョイスとその同僚たちはどのようにしてオリジナルのリボザイムEとE'の完全なコピーを多数作成したのでしょうか?彼らの実験におけるRNA酵素の複製の生産は、RNA分子が自己複製する能力ではなく、生きた細胞から得られる複合タンパク質酵素に依存していることが判明しています。具体的には、ジョイスと同僚たちは、RNA酵素の複製を増やすために、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 (RT-PCR) の手順を採用しました。この手順では、逆転写酵素とDNAポリメラーゼという2つの複合タンパク質酵素と、プライマーなどの他の分子ツールを使用する必要があります。実際、最も効率の良いリボザイムのコピーを多く作るには (各部位に反対の塩基を持つ相補的なRNA鎖を作るのではなく)、この過程でRNAをDNAに変換して、DNAからRNAを再構成する必要があります。しかしその過程では、前述のようにRNA逆転写酵素とRNAポリメラーゼが必要になりますが、これらはいずれも生きた細菌由来のものです。メイヤーが私に語ったところによると、「ジョイスと彼のチームは自己複製するRNA分子を作ったわけではありません。むしろ彼らは、タンパク質-酵素を介した複製システムを知的にデザインしました」。これらのタンパク質は、既存の生きた細胞から抽出しなければならなかったので、メイヤーは、「これらの実験は、非生物のRNA分子から最初の生命の起源に向けた決定的なステップをシミュレートするには、既存の生きた細胞から得られたタンパク質酵素を使用する必要があるという、逆説的な結論を導くものです」ともコメントしています。

研究者の干渉

これらの実験でRNA分子の自己組織化や自己複製の能力が実証されないのには、もう1つの理由があります。決定的なステップがすべて外部からの、つまり高度に知的な化学者、特にジェラルド・ジョイスとその同僚たちからの、多くの場合機能的な特定の配列の情報を入力するという形での誘導に依存していたのです。

 

最初にジョイスが、お互いの半分をつなぐことができるEとE'という大きなリボザイムを知的にデザインしたことを考えてください。2001年に行われた実験では、ジョイスはまず、さまざまな塩基配列を持つ100兆個のRNA分子をランダムに集めて前駆体のリボザイムを構築しました。そして、応用化学によるスクリーニングを繰り返して、核酸連結を行うことが可能で、かつその効率が最高の数個のRNAを選び出しました (ロジャースとジョイス、2001年)。

 

次に、彼はこれらのRNAの特定の領域の塩基配列を選択的に変更して、複製された鎖の半分を結合する能力を高めました。例えば彼は、リボザイムが基質分子の相補塩基対 (AとB) と十分に強く結合し、かつ、2つのRNAの半分が結合した後に、より大きなリボザイムが分離するのを妨げるほど強くは結合しないようにすることを望みました。このように、ジョイスは自分の知能を駆使して、ランダムに集められた分子の中から自分の求める機能を実行する分子を選んだだけでなく、厳選された領域を修飾することで、これらのリボザイムの機能を最適化しました (ポールとジョイス、2002年)。

 

それからジョイスは元のRNA酵素 (Tと呼ばれる) を改変して、2つの新しいリボザイム (EおよびE'と呼ばれる) を産み出しました。これらのリボザイムは、それぞれの半分を2つ結合する能力があります。EはA'とB'を結合してE'を形成し、E'はAとBを結合してEを形成します。彼自身が認めているように、彼は自分が特徴づけるところの「合理的なデザイン」アプローチを用いて、この相互依存性のある交差触媒システムを創造しました。特に彼は、2つの酵素の「対領域」のRNA塩基配列を、相補塩基対により基質に束縛されるように配置しました。さらに、EとE'の2つの半分の間の切れ目の端に近い領域は、リボザイムを介した結合が確実に起こるように工夫する必要がありました (リンカーンとジョイス、2009年)。

 

これらはみな、リボザイムが結合するために、あらかじめ作成された、特定の配列を持つ半分 (AとB、A'とB'の両方) をジョイスが必然的にデザインしなければならなかったことを示唆しています。実際、核酸連結が確実に起こるためには、2つの半分の間にある分離するポイントがちょうどよい位置にある必要がありました。前述したように、あらかじめ作成された半分が相補塩基対によりリボザイムの反対側の塩基に束縛されるには、リボザイムのヌクレオチド塩基の配置を正確に決める必要がありました。これらの特定性を達成するためには、ジョイスが繰り返し、活発に、知的に実験に干渉することが要求されます。

 

この交差触媒システムをデザインした後、ジョイスはリガーゼ・リボザイムの効率を改良しようとして「指向性進化法」を用いました。彼のチームはまず、オリジナルのリボザイムの特定の位置を変更して、2009年の研究ではEとE'の多数の変異体を生成し、2014年版の実験ではEの多数の変異体を生成しました。そして、最も効率的な基質結合 (リガーゼ) 機能を発揮する変異体を分離し、それらを差異化的に複製しました。2014年の実験では、変異体が反対側のリボザイムの半鎖だけでなく、自身の半鎖とも結合する能力も検証しました。

 

この過程には、研究者の広範な誘導とインテリジェントデザインが必要であることは明らかです。例えば、ジョイスとその同僚たちは高度な実験技術を駆使して、オリジナルの酵素の何兆個もの変異体と何兆個もの基質の複製を生成しました。それから、「反応してビオチン化した生成物をストレプトアビジン・アガロース樹脂に捕捉することで選択する」など、同様に高度な手順を実行して、最も効率的に基質を結合する変異体をタグ付けして捕捉したのです (ロバートソンとジョイス、2014年)。高度な訓練を受けた知的な技術者が置かれた高度な実験室以外で、ましてや知的な誘導の源が存在しないと思われるプレバイオティックな地球上で、これに匹敵するプロセスが発生することはあり得ないと言っても過言ではありません (こちらこちら)。

 

実際、メイヤーは『Return of the God Hypothesis』(310ページ) で次のように論じています。

 

・・・ある結果を確実にし、他の結果を排除するために、化学者が反応順序を設定したり、干渉したり、あるいは化学システムに制約を加えたりするときは常に、事実上そのシステムに情報を入力している。それどころか、そうすることで生物学に関連した化学や情報を生成するためにはインテリジェントデザインが必要であることをうっかりシミュレートしている。

 

さらに、メイヤーはこの批判を、『Return of the God Hypothesis』での議論 (309ページ) でジェラルド・ジョイスのリボザイム工学実験に具体的に当てはめています。彼はこう述べています。

 

リンカーンとジョイスは、これらのRNA鎖の塩基配列を知的に配置した。彼らはこの限定的な形の複製でも、可能にするために特定の配列の機能的情報を生成したのである。したがってこの実験は、限定的なRNAの自己複製能力であっても情報量の多いRNA分子に依存していることを示しただけでなく、機能的情報が生じるための既知の唯一の手段はインテリジェントデザインであるという仮説への付加的な支持にもなった。

これはファリーナが喧伝しつつも彼が主張するものを示していない論文の重要な一例に過ぎません。この論文は、「完全に複製された」RNAシステムを示していませんし、行われたことはプレバイオティック条件下では起こりませんでした。

プレバイオティックに産生された「機能的RNA」についてのファリーナの引用ブラフ

もう一つの例として、ファリーナとツアーは、ファリーナが引用したエンゲルハルト、パウナー、ショスタクによる2013年の『Nature Chemistry』の論文「Functional RNAs exhibit tolerance for non-heritable 2′-5′ versus 3′-5′ backbone heterogeneity」について口論になりました。通常の生物学では、RNAが使っているのはその骨格に沿って連続するヌクレオチド間の3′と5′の炭素間の結合のみで、連続するヌクレオチド間の2'-5'結合ではRNAは使えなくなります。モンモリロナイト粘土を使ったテンプレートではヌクレオチドが連結できることを示す実験もあるようですが、その結合は通常の3'-5'結合と不要な2'-5'結合が混在しています。ファリーナはこの論文の言葉を繰り返し引用し、2'-5'結合を持つRNAであっても「機能的」、つまりリボザイムになりうることを示していると主張しました。ツアーは、「機能的」というのが何を意味するかは一概には言えない、そしてとりわけそのRNAは結局非直線的な構造へと枝分かれしていき、直線的で整然とした構造を持つリボザイムや現代のRNAのように機能することは全くないので、本当は役に立たないと返答しました。

 

私たちの動画「Long Story Short: Origin of Life - Replication」では、この論文に正面から取り組み、なぜこの種のRNAが何らかの機能的な生物学的RNAのようには見えないのか、また機能しないのかを、下の画像を使って示しています。

「Long Story Short」動画の注釈では、これらのリボザイムの働きがいかに貧弱で、2'-5'結合が多ければ多いほど効率が落ちるかを説明しています [訳注: この注釈は動画の7:19に表示されています。注釈を一覧にしたものがここにあります]

 

エンゲルハルト、パウナー、ショスタクは、結合を切断できる比較的単純なリボザイムを利用しました。正しい結合 (3'-5') を持つリボザイムは、48時間で80%の結合を切断することができました (図3b)。次に、間違った結合 (2'-5') を10%持つリボソームを試しました。これは48時間で60%の結合を切断できました。間違った結合を25%持つリボソームは、48時間で約25%を切断しました。間違った結合が50%では、48時間で結合の数%しか切断できませんでした。

 

論文の著者であるエンゲルハルト、パウナー、ショスタクは、何らかの機能が得られたことに興奮していますが、彼らが非常に高速で非常に多くのことができるタイプのリボザイムに取り組んでいなかったことは明らかです。すべては、「機能的」RNAをどう定義するかにかかっています。機能が極めて単純 (すなわち特定されていない) であれば、不適切な2'-5'結合がいくらかあっても許容されるでしょう。しかし、その機能がより特定されたものであれば、悪い結合はその機能をひどく妨げる可能性があります。ファリーナが主張する (実際にはそうではない)「完全に複製された」RNAは、2'-5'結合を許容できるのでしょうか?それは疑わしいでしょう。そうした疑念を抱く人たちの一人は、ツアーとファリーナの両者が討論中に引用した権威、スティーブ・ベナーかもしれません。エンゲルハルト他 (2013年) を引用して、ベナーは今年初めにこう書いています。

 

衝撃玄武岩質ガラスに形成されたRNAの詳細な分析によると、2'5'結合と3'5'結合が混在している。この問題の深刻さはまだ明らかではない。この結合の混在は矯正できると考える者もいる。そうでない者もいる。

― スティーブ・ベナー、「RETHINKING NUCLEIC ACIDS FROM THEIR ORIGINS TO THEIR APPLICATIONS」、王立学会フィロソフィカル・トランザクションズ B、378巻: 20220027 (2023年)。

 

結局のところ、機能的な2'-5'リボザイムが創成されたと誰もが信じているわけではないようです。

結語

深刻な問題が未解決のままであるかは、時には科学的に掘り下げてみないとわからないことがあるのは事実です。しかし、ファリーナがツアーに論文を投げつけていた際の速射砲のような速さと詳細に乏しいスタイルは、何かがあったことの手がかりを与えてくれます。さらにファリーナは、論文に異議を唱えるだけでも著者を「詐欺師」などと呼ぶことになるというようなフレーミングをツアーに押し付けようとしました。彼は子供じみた嫌がらせと嘲笑を使いました。ツアーが言っていることに答えようともせず、ツアーの言葉を馬鹿にしたのです。ある人々が嘲笑に頼り、相手に自身の意見を語らせようとせず、注意深い分析なしに単に次から次へと論文を投げつけるとき、それは多分、彼らが良い論議を持っていないことを示しています。