Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

子供とチンパンジーが一緒に育てられたとき

This is the Japanese translation of this site.

 

デニーズ・オレアリー
2023/10/17 6:56

 

Xの最近の投稿で、チンパンジーの赤ちゃんと一緒に幼い息子を育てようとしたある夫婦の努力について、私たちの多くが初めて耳にする話が取り上げられました。非難の声を差し挟む前に、この (真実の) 話は、唯物論が多くの人にとって新しく興奮を誘うように思えた1930年代初頭に起こったということをまず言っておきましょう。もし2023年にこのようなことをしようとする人がいたら、直ちに児童保護サービスおよびSPCA [訳注: 動物虐待防止協会のことです。] が呼ばれるでしょう。

タイムカプセルの中へ

しかし、(想像の中で) タイムカプセルに入って、この種のことがまだ新しくてクールだった1931年に戻ってみましょう。

 

心理学者のウィンスロップ・ケロッグとルエラ・ケロッグは、息子のドナルド・ケロッグが生後10ヶ月のとき、霊長類研究センターの近くにあったフロリダの仮住まいで、彼をメスのチンパンジーの赤ちゃん (7ヶ月) のグアと一緒に育てることに決めました。ウィンスロップ・ケロッグは、類人猿を人間化する可能性について書いたことがあり、息子の誕生はその機会になりました。彼は2人の幼児をまったく同じように扱うつもりでした。

 

 

当時は赤ちゃんチンパンジーを人間化するようなプロジェクトにとっては心強い時代でした。しかし9ヵ月後、ケロッグ夫妻は実験を中止せざるを得なくなりました。何が起きたのでしょうか?さまざまな話が伝えられています。これは1951年のロイター通信の記事です。

 

この実験について、ロンドン大学の元心理学教授であるシリル・バート卿が、英国医師会の雑誌『The Family Doctor』の記事で説明した。教授とその妻によって育てられる際、「グアは動物のペットとしてではなく、家族の一員として扱われ、子供とまったく同じ服を着せられ、同じように看護され、訓練され、褒められ、叱られ、罰を受けた」と記事は述べている。しかし2年目になると、子供はまったく自発的に言葉やフレーズを使うようになり、動物には決してできない方法で、年長者の行動を真似るようになった。
― 「LITTLE ‘CHIMP’ PROVES SMARTER THAN HUMAN BABY AFTER 1 YEAR」 、『THE MONTREAL GAZETTE』、『ロイター通信』、1954年7月27日。

もっと微妙な物語

それで、自然な能力の乖離は存在しました。しかし、もっと微妙な物語が後に浮かび上がりました。レイチェル・ニューワーは『Smithsonian Magazine』に次のように書いています

 

ケロッグ夫妻は、9ヵ月間ひっきりなしに子育てと科学的な仕事に追われ、単に疲れきっていたのかもしれない。あるいは、グアが強くなって手に負えなくなりつつあったという事実があり、ケロッグ夫妻は彼女が人間の弟に危害を加えるのではないかと恐れたのかもしれない。最後に、もう1つ別の可能性が思い浮かぶと著者たちは指摘する。グアが人間の言語を学ぶ兆候を見せなかった一方で、彼女の弟のドナルドはグアのチンパンジーの鳴き声を真似し始めたのである。「要するに、ドナルドの言語遅滞がこの研究に終止符を打ったのかもしれない」と著者たちは書いている。
― レイチェル・ニューワー、「THIS GUY SIMULTANEOUSLY RAISED A CHIMP AND A BABY IN EXACTLY THE SAME WAY TO SEE WHAT WOULD HAPPEN」、『SMITHSONIAN MAGAZINE』、2014年7月28日。

 

そう、この雑誌の筆者が言及しているように、もし子供がチンパンジーと一緒に育てられ、彼女がまるでもう1人の子供であるかのように扱われたら、彼の発達は妨げられることになるでしょう。ドナルドは人格形成の重要な時期に、類人猿からではなく、両親や親類、遊び仲間から話すことを学ぶはずでした。最終的には、チンパンジーがしゃべるようになることは決してないでしょうが、少年の発語が遅れるという結果になりかねません。

 

とはいえ、両親はこの件を確かに研究し、1冊の本をものにしました。それは1933年に出版されました。

 

『The Ape and the Child』と呼ばれるこの研究全体は、科学的というよりも歴史的な興味を引くものである。グアの身体的発達は、ドナルドよりもはるかに早かった。グアは大人の行動を真似し、靴を履き、ドアの取っ手を使ってドアを開け、グラスとスプーンで食事をした。身体能力テストにおいても、チンパンジーは人間よりも優れていた。
エスター・イングリス-アーケル、「THE 1931 EXPERIMENT THAT PAIRED A NEWBORN CHIMP WITH A NEWBORN BABY」、『GIZMODO』、2013年12月5日。

 

結局、ケロッグ夫妻はインディアナ州に戻りました。グアは霊長類センターに戻され、1年後に肺炎で死にました。そして筆者たちの中には、ドナルド・ケロッグが1973年に43才の若さで自殺したことに言及する価値があると感じる人もいます。

物質的なものではない

1世紀近く経ってからこの話を見てみると、この実験が、人間の赤ちゃんとチンパンジーの赤ちゃんを別々に研究するのでは観察できなかったようなことを、本当に実証したと考えるのは難しいでしょう。チンパンジーは子供に比べて身体的発達は早いものの、その後知的プラトーに到達し、そこから先に進歩することはありません。さまざまな試みがなされてきましたが、チンパンジーに人間の精神を与えること ー 最初からこれが本当の目標だったのは確かです ー は誰にもできませんでした。なぜなら、人間の精神は物質的なものではないからです。私たちが単純に制御できないものを配って回ることはできません。

 

そして私たちは皆、今日の実験倫理委員会に感謝することができます。少なくとも、それは努力の成果なのです。

 

『Mind Matters』へクロスポストされました。