Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

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唯物論はいかにして無限の科学的無知を証明するか

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ロバート・J・マークス2世

2021/4/26 10:24

 

科学は、物理学、化学、数学、その他の分野からの溢れんばかりの法則に基づいています。私の理解では、科学的唯物論の前提は、科学はすべてを説明してきた、あるいは説明するだろうということです。科学的唯物論 (科学主義とも呼ばれる) の最終的な結論は、化学者のピーター・アトキンスが哲学者のウィリアム・レーン・クレイグとの討論で尋ねた「あなたは科学がすべてを説明できることを否定するのですか?」という質問によく表れています。

 

科学がすべてを立証できるという科学主義の前提は、自己反駁的です。慎重に分析すると、科学的に証明できず、今後も証明できない真理が無限に存在することがわかります。

 

スティーブン・ホーキングは、「これまでほとんどの人は、究極の理論があり、それはいずれ発見されるだろうと暗黙のうちに仮定していた」と述べたときに、この真理の氷山の一角を見ていました。この「万物の理論」(Theory of Everything) と呼ばれる理論は、宇宙のあらゆる物理的側面を一つの巨大な傘となる理論の下に結びつけるものです。今でも探求している人がいます。しかしホーキングはその探求を放棄しました。彼は立場を変えたことを擁護するために、クルト・ゲーデル (1906-1978) を引き合いに出しました。

 

もし、有限の原理として定式化できる究極の理論がないとしたら、大いに失望する人もいるでしょう。私も以前はそのように考えていましたが、考えを改めました。今では、私たちの理解の探求に終わりはなく、常に新しい発見への挑戦があることを嬉しく思っています。それがなければ、私たちは停滞することでしょう。ゲーデルの定理のおかげで、数学者の仕事は常に存在するのです。

スティーブン・ホーキング、「ゲーデルと物理学の終わり」、テキサスA&M大学にて (公開講座、2002年3月8日)

 

チャールズ・ダーウィンを抜きにして進化論を語ることができないように、クルト・ゲーデルを抜きにして超数学を語ることはできません。ホーキングがゲーデルの (第一) 不完全性定理を引き合いに出したことには、さらに深い意味があります。ホーキングが物理学にはまだまだ多くの発見が残されているだろうと言うのは正しいことです。しかし、ゲーデルは証明不可能な真理があることも示しましたし、さらに劇的なことには、科学的証明が到達できない無限の証明不可能な真理があることを示しました。

 

このことを裏付けるゲーデル不完全性定理の結果を紹介します。有限の前提条件 (公理) があれば、証明できない真理 (定理) の存在が明らかになるのです。矛盾しているように聞こえますが、ゲーデルの証明におけるこれらの真理は証明不可能であることを証明できます。公理は、証明可能な証明で満たされたゲーデルの泡を膨らませていると考えることができます。泡の中には証明不可能な真理もあることが明らかになっており、その証明は泡の外にあるかもしれません。

 

一つの解決策は、ゲーデルの泡の中の証明不可能な真理を、仮定の真理として公理のリストに加えることです。証明できないなら、仮定してみましょう。10億個の公理から真理の泡が生まれたとすると、増補された公理リストには10億と1個の項目があることになります。この新しいリストから、さらに大きな泡が生まれます。大きな泡は小さな泡を包摂します。大きい泡には、大きい泡の中では証明不可能な別の真理が含まれています。そこで、先ほどと同じように、この証明不可能な新しい真理を公理の集合に加え、10億と2個の公理を持つことになりました。泡はさらに大きくなります。続けて、無限の数の公理を元のリストに追加することができます。泡は新しい公理を仮定するたびに拡大し続けますが、常に新たな証明不可能な真理を含んでいます。公理的仮定のコレクションに追加される新たな証明不可能な真理は常に存在することでしょう。

 

最初の泡には、私たちの宇宙では証明不可能な真理が含まれています。ホーキングは物理学におけるゲーデルの定理について語ったときに、私たちの宇宙の法則によって生成された最初のゲーデルの泡についてのみ言及していました。真理であり証明不可能であることを証明するのは難しいことです。しかし、そのような候補はたくさんあります。数学での「すべての偶数は2つの素数の和である」というゴールドバッハの予想は、ほぼ確実に真理ですが、厳密な証明はされていません。歴史的に数学者が次々とこの問題を解こうと試みるにつれ、ゴールドバッハの予想に証明は存在しないという証拠は増し加わっていきます。これは、コラッツ予想リーマン仮説双子の素数問題など、他の未解決の数学問題と同様です。

 

しかし、科学についてはどうでしょうか?超弦理論TOEを提供します。しかし、その理論が正しいのか間違っているのか、経験的な証明は今のところありません。ある物理学者に、「超弦理論は数学的に美しいから、もしそれが真理でなくても、そうあるべきだ」と言われたことがあります。もし、超弦理論が真理ならば、証明できないかもしれません。並行宇宙についても同じことが言えます。

 

よくある主張は、「神の存在は証明できない」というものです。しかし、ゴールドバッハの予想のように、創造者の存在を示す証拠は圧倒的です。多くの有神論者は、神はこの宇宙の証明可能な泡の外側にある真理だと信じています。

 

科学主義の主張は、数学的に表現された物理法則の基礎の上に構築されています。これらの公理的な法則のリストは、1枚の紙に書くことができます。量子力学シュレディンガー方程式電磁気学マクスウェル方程式アインシュタイン一般相対性理論ニュートン力学、さらには超弦理論も含まれています。これらの方程式は、微積分、微分方程式、確率などの数学の基礎の上に構築されています。ここで考えられていない公理があると考えられるなら、リストに加えてください。最終的な公理の勘定は有限となり、私たちの宇宙における最初の真理の泡を作るのに必要なのはそれがすべてです。

 

ゲーデルの定理がここに当てはまるか疑問に思う人もいるかもしれません。これは当てはまります。私たちの宇宙におけるすべての測定値は有限の精度であり、したがって、ゲーデルが形式的体系の分析で考慮した自然数の傘の中に収めることができます。このため、ホーキングがゲーデルの定理をTOEの探求に適用したことは、証明不可能な真理が無限に存在するという主張と同様に、的確なものです。

 

科学的唯物論者は、すべての真理は科学によって証明できると考えています。有名な話ですが、この科学主義の主張自体、科学では証明できません。この主張は科学的というよりもむしろ哲学的です。科学的唯物論者は、一貫した議論をするためには、この非唯物論的な信念を唯物論的真理のリストに加えなければなりません。それでも皮肉なことに、科学主義の前提にこの追加の公理を加えると、証明不可能な真理は無限にあるという不可避の結論が導かれます。

 

それで、科学主義の信奉者が、あれやこれやの科学的ブレークスルーが将来起こると予言しても、それが全くの間違いである可能性もあるのです。

 

謝辞: この論題についての、親友のダニエル・アンドレス・ディアス・パチョンとの会話に感謝します。