Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

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化石の金曜日: 恐竜の羽毛および過剰に宣伝された羽毛の起源についての新しい研究

This is the Japanese translation of this site.

 

ギュンター・ベヒリー
2023/5/26 6:48

 

今回の「化石の金曜日」は、1億年前のビルマ産の琥珀から見つかった羽毛を取り上げます。この化石の羽毛の年代と奇妙なリボン状の構造から、これは現代の鳥類ではなく獣脚類の恐竜か原始的なステム鳥類の羽毛である可能性が示唆されています (ベントン他、2019年)。この化石は、私が2016年まで琥珀と化石昆虫の科学キュレーターとして働いていたシュトゥットガルト (ドイツ) の自然史博物館の琥珀コレクションのために、数年前に入手したものです。鳥類と羽毛の起源という論点については、既に『Evolution News』の以前の記事で何度か議論しています (ベヒリー、2022年a2022年b2023年)。今日はこの機会に、クーパーとミリンコビッチ (2023年) による羽毛の起源に関する最近の研究について議論したいと思います。この研究は、「ほんの数個の遺伝子をいじるだけで、鱗が羽毛に変わる」(スター、2023年) ことの証拠として称賛されました。著者たちは大胆にも、彼らの「結果は、鱗から羽毛への進化的跳躍は、ゲノムの組成や発現に大きな変化を必要としないことを示唆している」と主張しています。これは全くのでたらめです。

これが理由です

その科学者たちは、ニワトリの胚に分子トリガーを注射し、ニワトリの足の網目状のウロコの発生を異所性の羽毛の発生に変えました。 これは、鱗の代わりに羽毛が、異常な場所に発生したことを意味します。それが全てです。この実験から得られた上述の壮大な結論は、どちらも誤りであるか、少なくとも非常に疑わしい、以下の2つの隠れた仮定に基づいています。

  • 羽毛は変形した爬虫類の鱗から派生したものである。
  • 鳥の足の鱗は一次的な鱗であり、退化した羽毛ではない。

最初の主張は、現代の生物学において長く熱い討論の対象でした。多くの教科書は今でも、鳥の羽毛は爬虫類の鱗が長くなったものから派生したと示唆しており、有神論的進化論者のカール・ギバーソンとフランシス・コリンズ (2011年) も著書『The Language of Science and Faith』(批評はラスキン、2021年をご覧ください) の中でこの主張を推進しました。しかし、この今でも一般的な主張は、いくつかの深刻な問題に直面しており、もはや科学の主流におけるコンセンサスの見解を代表していません。

 

1つの問題は、爬虫類が自然な (単系統の) グループを代表しているとは考えられておらず、ウミガメとリクガメ、クロコダイルとアリゲーター、トカゲとヘビなど、非常に多様で遠縁の分類群を含んでいることです。これらの異なる爬虫類のグループは、相同性が疑われ、論争の的になっている非常に異なるタイプの鱗 (例えば、クロコダイルの隣接する鱗とトカゲの重なり合う鱗を比較してください) を持っています。したがってそもそも、羽毛が爬虫類の鱗から派生したという主張はかなり無意味です。さらに重要な問題は、羽毛の発生過程です。その過程は中空のチューブ状のフィラメントから始まり、チューブ壁の分解と展開によって羽毛が形成されるのであって、平らな鱗が伸長して形成されるのではありません。最後に、脊椎動物の様々な外皮構造の間には、形態形成的かつ分子的に著しい違いがあります。そのため、「何十年もの間、これらの皮膚付属器官の相同性、あるいは相同性の欠如に関する討論が助長され、有羊膜類の綱 (爬虫類、哺乳類、鳥類) の域を超えて相同な皮膚付属器官は存在しないと結論する著者たちもいた。つまり、哺乳類の毛や鳥類の羽毛は、爬虫類の重なり合う鱗から進化したものではないということである」(ディ-ポイとミリンコビッチ、2016年)。

生物学的常識

実際、羽毛が鱗から直接進化したものではないという認識は、長年にわたって生物学的常識となっており、声望の高いブリタニカ百科事典でもそのようになっています。その記述は疑問の余地なく明確で、「羽毛は複雑かつ新奇性のある進化的構造である。かつて考えられていたように、爬虫類の鱗から直接進化したものではない」とあります。イースタンケンタッキー大学による鳥類生物学についての教育サイトも、同様に明確に記述しています。「それで、羽毛は鱗から派生したのではなく、むしろ多くのユニークな特徴を持つ進化的新奇性である」。これ以上にあからさまなものはないでしょう!

 

それにもかかわらず、爬虫類の鱗、哺乳類の毛、鳥類の羽毛の発生についての新しい進化発生学的研究 (ディ-ポイとミリンコビッチ、2016年) が、大衆メディアの報道で「ヒトの毛、鳥の羽毛は爬虫類の鱗から生まれた」(パンコー、2016年) と誤解を招くような宣伝がなされました。しかし、この研究が本当に示したのは、これらの皮膚構造のいわゆる深い相同性 (ベントン他、2019年) で、これらすべてが個体発生的には胚の皮膚の肥厚したパッチ (プラコードと呼ばれる) から派生したということです。これは、鱗、毛、羽毛が同じような発生経路を共有すること、および初期の先駆的皮膚構造に共通起源を共有するかもしれないことを意味しますが、羽毛が成体の爬虫類の鱗を修正したものに起源を持つことを実証してはいません。私の言葉を鵜呑みにしないでください。より最近のベントン他 (2019年) の研究が強調していることは以下の通りです。「さらに、羽毛の形態形成とCBPの両方が鳥類の鱗のそれよりも基部にあり、鳥類の鱗の分子プロファイルは羽毛に似ているが、爬虫類の鱗とは異なるため、羽毛が爬虫類の鱗から進化したというのは不適切である」。

 

2つ目の仮説に関しては、鳥の足の鱗は一次的な鱗ではなく、羽毛が退化したものであるという証拠が増えつつあります。以下はドゥアイリー (2009年) からの引用です。「羽毛に関しては、有鱗目の鱗とは独立に進化した可能性があり、それぞれが最初の竜弓類の粗面化したβ-ケラチン化表皮に起源を持つと仮定される。鳥類の重なり合った鱗は、鳥のある種では足を覆っているが、進化の後期に羽毛から二次的に派生して発達した可能性がある」。ベントン他 (2019年) はさらに詳しく説明しました。「獣脚類の進化において、足の羽毛は足から大腿部にかけて減少し、鱗がそれに取って代わった。同様に、このような鱗は白亜紀の哺乳類には毛とともに存在し、センザンコウでは全身に、ラットやネズミなどのげっ歯類では尾に沿って存在する。これらの鱗は一般に、祖先の爬虫類からの原始的な残存物と解釈されるが、古生物学的、遺伝学的証拠から、羽毛や毛から二次的に派生したものであることが示唆されている」。

無知な人々には印象的

したがって、クーパーとミリンコビッチ (2023年) による新しい研究は、進化生物学の主流が爬虫類の鱗から鳥類の羽毛への進化をもはや支持していないことも、鳥類の足の鱗が退化した羽毛であると信じられていることも知らない、無知な人々にとって印象的に聞こえるだけの、過剰に宣伝された科学の最近の例に過ぎない、と結論づけて差し支えないでしょう。だから、単純な変異で鳥の足の鱗が羽毛に戻っても、何ら驚くことはありません。このような誤解を招く研究は、私が進化生物学の大げさな主張への信仰を失った主要な理由の1つです。ほとんどがごまかしなのです。

 

では、「鱗から羽への進化的跳躍は、ゲノムの組成や発現に大きな変化を必要としない」という壮大な主張についてはどうでしょうか?これももちろん全く馬鹿げています。現実には、動物界で知られている中で最も複雑な外皮構造である羽毛の創成に、多数の遺伝子の協調的な変化を必要としたことに疑いはありません。

 

それは、ケラチン構造の差異、枝 (羽枝) と小枝 (小羽枝) の洗練されたパターン形成、そして発生期に羽毛を形成する高度に特定されたプログラム細胞死、さらに新しい遺伝コードを必要とする多くの生物学的新奇性が関係しているからです。単純な発生スイッチがこのようなトリックを実行できるという考え方全体が、まさしく滑稽というしかありません。単純なスイッチが行うのは、二次的に羽毛が退化した身体領域で、羽毛を形成する既存のコードを再活性化することだけです。これは生物学的新奇性の進化的起源とは何の関係もなく、羽毛の起源を説明する力はゼロです。私が言った通りのごまかしです!

参考文献