Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

進化のほら話 — キリンの首

This is the Japanese translation of this site.

 

ジョナサン・ウィット

2023/3/13 15:33

 

キリンの首は、長く愛されてきた進化論のイコンです。その物語によれば、首の短いキリンの先祖の一頭が、わずかに長い首を持っていたため、サバンナの他の動物が届かないところの葉に届くのに役立ちました。これは彼の生存に有利となり、子孫に受け継がれました。あるいは、メスのキリンが彼の少し長い首を本当に気に入ったので、生殖に有利になったのかもしれません。結果は同じです。彼はその少し長い首を子孫に受け継ぎました。これを数千回繰り返すと、ほら、その系統で重さ600ポンド、長さ6フィートのキリンの首が出来上がります。

 

しかし、悪魔は細部に宿ります。『Nature』誌のある記事では、キリンの漫画のように長い首の進化を率直に「パズル」と評しています。

 

その並外れた長さは困難をもたらすものであり、それなりの事情があるはずだ。キリンの心臓は血液を頭部まで2メートル押し上げる必要があるが、これには血圧を高くしつつ、失神や脳卒中を避けるための管理が要求される。「キリンはこれに見事に適応していますが、大きな犠牲を払っています」と、南アフリカのケープタウン大学の行動生態学者ロブ・シモンズは言う。彼はこの研究に参加していない。

 

一般的な説の1つとして、食料を求めて高い木まで届くように首を長く進化させた、というものがある。「これは広く信じられていることで、実に定着しています」と、シモンズは・・・言う。[しかし] 研究によると、キリンは低い位置から食べる傾向があり、背の高いキリンが食料の競合が最も多い干ばつを生き延びる可能性は高くないことが分かっている。また、異性を巡る競争のためという説もある。首が長い方が異性を引きつけるのに役立ち、雄は首を振り回して激しく戦うからだ。[しかし] 雄の首が雌以上に長いわけではない・・・。1

化石の幻想

化石もあまり役に立ちません。ドイツの遺伝学者ウォルフ-エッケハルト・レーニヒは、化石とキリンの進化に関する文献を調査し、キリンやキリンの祖先あるいは祖先に近縁であると言われている生物の化石は豊富にありますが、短い首から長い首へのスムーズな一連の移行化石は飽くまで欠けていると報告しています。彼は次のように書いています。

 

キリン属やオカピ属につながる化石の鎖輪の連続系列はない。「コンゴの熱帯雨林のキリンとオカピは姉妹群と考えられているが、その起源はまだ知られていない」(ドヴィレールとシャリーヌ、1993年、247ページ)。同様にスタルク (1995年、999ページ) は、「キリン科の祖先については論争がある」と述べている。ウェッソン (1991年、238-239ページ) は、キリンの化石に関するこれらの記述に同意しており、以下のとおりである。「キリンの進化の系統はその途上の中間の分岐を残しておらず、首の長さが中程度のオカピと大きく伸びたキリンの間には、現生であろうと化石であろうと何もない。キリンのいくつかの変種は、すべて同じぐらいの高さである」。

 

オカピは、現存する偶蹄類の一種で、見た目は大型のシカと大差ないことに留意してください。キリンとの間には形態的な大きな隔たりが広がっています。

 

2015年に発見され、その大きな隔たりに橋をかけると称して大々的に宣伝された化石があります。『Live Science』の記事「7-Million-Year-Old Fossils Show How the Giraffe Got Its Long Neck」は大言壮語的で、研究リーダーのニコス・ソロウニアスが少しばかり控えめなだけでした。「実際に、首 [の長さ] が中間の動物がいたのです — 本当のミッシングリンクです」と彼は言いました。しかし、この研究の背後にある進化論者が後に認めたように、彼らはこの生物、サモテリウム・マヨールがキリンの直接の祖先であるとまでは考えていません。

真実の引き伸ばし

さらに根本的には、研究者たちによりキリンの生理機能が解明されるにつれ、機能するキリンが到来するまでに何百、もしかすると何千もの異なる遺伝子変化が必要であること、その変化の多くが、その生物の生存のために同時に到来する必要があること、そのような大きな飛躍を伴う変化が何百万年もの間に多数発生しなければならないことが、明らかにされています。

 

そうです、自然選択は、このような協調的な突然変異という珍しい出来事が起こった場合、それを保存するために介入することができますが、まず、その珍しい出来事である突然変異が起こらなければなりません。

 

オックスフォード大学の生物学者リチャード・ドーキンスは、無神論と進化論を擁護する多くの著書で有名ですが、キリンの首と首が短い祖先の首の違いは、相対的に「わずか」であると特徴づけています。ドーキンスはこう書いています。「キリンの首は、オカピと同じように (そして多分、キリン自身の首の短い祖先と同じように)、部品が複雑に配置されている。7つの椎骨は同じように並んでおり [レーニヒはこれに異議を唱えています]、それぞれに血管、神経、靭帯、筋肉のブロックが付随している。違いは、それぞれの椎骨がずっと長く、付随するすべての部品が比例して伸ばされているか、間隔が空いていることである」2

 

では、この進化はどれほど難しいことなのでしょうか。

 

ドーキンスの特徴づけは、ダーウィンの弟子なら愛せるでしょうが、注意深いエンジニアや、現役でキリンの生理機能に精通している生物学者にとってはそうではありません。レーニヒが述べているように、ドーキンスは「進化論にとって容認できる程度に生物学的問題を単純化しているが、生物学的事実に関しては現実的でない」のです。

キリンの壮観さ

レーニヒは、首の短い祖先から正常に機能するキリンにたどり着くには、設計あるいは再設計されなければならないいくつかの事柄について記述しています。まず、キリンは牛や他の多くの草を食べる動物と同様に反芻動物です。つまり、半分消化された食塊を吐き戻し、それを噛んでからもう一度食べ物を飲み込むので、固い繊維質の草や葉の消化に役立ちます。しかし、このような芸当をやってのけるには、人の背丈ほどもあるキリンの首に「特殊な筋肉の食道」が必要になるとレーニヒは説明しています。それで、リエンジニアリングのひとつの挑戦となります。

 

レーニヒはさらに、ここで書ききれないほど多くの事柄を挙げています。キリンの進化を論破した彼の著書『The Evolution of the Long-Necked Giraffe』は、緻密で徹底的です。しかし、彼はゴードン・ラットレー・テイラーが著書『The Great Evolution Mystery』の中で、リエンジニアリングの課題のいくつかを簡潔に要約しているのを、役立つように引用しています。

 

19世紀の観察者たちは、キリンは他の動物が届かない葉に届くようになるためだけに長い首と脚を発達させた、と仮定した。しかし実際には、そのような成長は深刻な問題を引き起こした。キリンは血液を頭まで約8フィート押し上げなければならないのだ。たどり着いた解決策は、平均よりも速い心拍数と高い血圧の心臓を持つことだった。キリンが頭を下げて水を飲むと、頭に血液が殺到して苦しむので、これに対処するために特別な減圧機構である奇網を設けなければならなかった。しかし、それ以上に難儀なのは、8フィートの管を通した呼吸の問題である。もし人がそうしようと試みると、彼は死んでしまう — 酸素不足からというよりも、自分の二酸化炭素で中毒するのだ。脱酸素化された呼気で管が満たされ、それを再吸入し続けることになるからだ。さらに、ある研究グループは、キリンの脚の血液にそのような圧力がかかると、毛細血管から流れ出てしまうことを発見した。どうやってそれを防いだのだろうか?それは、細胞間が液体で満たされており、圧力がかかってもそうなっていることによると判明したが、このためにはキリンは丈夫で不浸透性の皮膚を持つ必要がある。これらすべての変化に加え、新しい姿勢反射や捕食者から逃れるための新しい戦略も必要になろう。キリンの長い首には、1つの突然変異だけでなく、多くの突然変異が必要とされ、かつそれらが完全に協調していたことは明らかである。3

 

パーシバル・デイヴィスとディーン・ケニヨンは、これらすべての重要性を明快に引き出しています。

 

要するに、キリンは単なる個々の形質の集合体ではなく、相互に関連する適応のパッケージを体現している。すべてのパーツを1つのパターンに統合する総体的なデザインに則って組み立てている。そのような適応のパッケージはどこから来たのだろうか?ダーウィン理論によれば、キリンは自然選択によって保存された個々のランダムな変化の蓄積によって現在の姿に進化した。しかし、時間があったとしても、ランダムな過程がどのようにして統合された適応パッケージを自然選択に提供したかの説明は困難である。ランダムな突然変異は、色のような比較的孤立した形質の変化を適切に説明できるかもしれない。しかし、キリンが他の何らかの動物から大進化するような大きな変化には、協調的な適応の広範な組合せが必要であろう。4

宝くじに当選した魔物

これは、キリンの首についての進化的物語を堅持するのであれば、キリンの系統が何百万年もかけて一連の宝くじで大穴を当てたと信じることから進んで、その系統の様々な祖先がそれぞれ、同時に多数の宝くじで大穴を当て、それを何度も繰り返してみせたことを信じなければならないということを意味します。

 

この膨大な違いを把握するために、アメリカ合衆国の大統領が夏の旅でアメリカのハートランドのあちらこちらを巡り、州が運営する宝くじのある (すべての州にあるわけではない) 45州のそれぞれで宝くじを購入したと想像してください。その夏の後に、大統領が購入した宝くじはすべて大当たりだったことが判明しました。大統領の側近たちはこれを「悪運」のせいにしていますが、45州の宝くじ委員がネズミの臭いを嗅ぎつけ、勇気が十分あれば調査を開始するであろうことには賭けてもいいでしょう。彼らは、これらの当選はすべて大統領に有利なように何らかの方法で操作された、つまり知的にデザインされたと合理的に推論するでしょう。見込みが低く、あまりにも低く、かつ誰かにとってあまりにも有利であれば、合理的な人々は他の説明を探し始めるのです。

 

キリンの場合は、ちょっとした推論で十分事足ります。盲目的な進化は、先を見通すことができず、将来の何らかの利点のために一群の変化を協調させることはできません。盲目的であり、小さな有用な段階を一度に一つずつ進めていかなければなりません。例えば、少数の巨大な突然変異が陸上哺乳類をクジラに変えたと考える進化論者はいないでしょう。

 

しかし、生物学的移行、あるいはより大きな移行におけるたった一つの重要な段階を成功させるためにも、大量の変化が同時に必要になるとしたらどうでしょう。私たちは、そのような挑戦に対応できる能力を実証している原因を一種類だけ知っています。それは悪運や自然選択ではありません。キリンという工学的驚異は、長い首およびすべてが、知的にデザインされたものなのです。

 

この記事は、著者の許可を得て雑誌『Salvo』からクロスポストしたものです。

注釈

  1. Jones, N. (2022) How the giraffe got its neck: 'unicorn' fossil could shed light on puzzle. Nature (London). 606 (7913), 239-239. 文中の参照は削除しました (日本語版要約: 「キリンの首が長くなったのはモテるからかもしれない」、『Natureダイジェスト』2022年9月、小林盛方訳)。「異性のための首」仮説に反対するさらなる証拠についてはこちらをご覧ください: Black, R. (2021) Giraffe necks not for sex. National Geographic. 15 Jan.
  2. Dawkins, R. (1996) Climbing Mount Improbable. W. W. Norton (London). 103.
  3. Taylor, G. R. (1983) The Great Evolution Mystery. Harper & Row. 157.
  4. Davis, P. & Kenyon, D. (1993) Of Pandas and People, The Central Question of Biological Origins, 2nd ed. Haughton Publishing Company (Dallas, TX). 13.