Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

ビッグバンは2つのテストを乗り切る

This is the Japanese translation of this site.

 

ギリェルモ・ゴンザレス
2023/11/2 11:04

 

2022年の夏、天文学者たちは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) による非常に遠くの (したがって非常に若い) 銀河の最初の観測から得られた知見を共有しました。当時『Evolution News』で報告されたように (こちらこちらこちら)、彼らは、成熟しているように見えながら非常に若い銀河がこれほどたくさん見つかったことに大きな驚きを表明しました。ビッグバン理論を長年批判してきたエリック・ラーナーは、この機会をとらえ、これらの新しいデータはビッグバン理論を反証するものだと主張しました。

 

スティーブン・メイヤーが2022年9月に指摘したように (こちら)、JWSTの最初の観測結果が額面通りに受け取られ、銀河形成が予測と一致しないことが示されたとしても、ビッグバン理論の反証にはなりません。それは、銀河形成の理論に修正が必要であることを示しているだけです。ビッグバン理論は、宇宙マイクロ波背景放射、軽元素 (H、He、Li) 同位体の豊富さ、ハッブル・ルメートルの赤方偏移-距離の法則という3つの観測的支柱に基づいているからです。これらの観測とその歴史的文脈についての詳細は、『Evolution News』への私の2つの投稿 (こちらこちら) をご覧ください。初期の銀河形成の観測は、せいぜいビッグバン理論の弱いテストを提供するにすぎません。

忍耐を学ぶ

私は、最新の科学的発見の過大評価について忍耐することを学びました。「落ち着くのを待ちましょう」と私は言います。これらは天文学者たちが見た中で最も遠い銀河であり、彼らがJWSTで行った最初の観測に含まれています。天文学者たちは、データを適切に較正し、関連するバイアスを統計的に説明しなければなりません。このすべてが非常に面倒で時間がかかります。考えられる別の懸念は、初期のJWSTの銀河赤方偏移がフィルターを使った測光に基づいていたことです。この方法は分光ほど信頼性は高くありませんが、より簡単に行えます。分光赤方偏移が徐々に零れ落ちてくるにつれて、結果はより確実な基礎の上に置かれるようになります。

必要な帳尻合わせ

さて、何人かの天文学者たちは、必要な帳尻合わせを行ったようです。ある研究では、一連の宇宙論的シミュレーションとJWSTによる遠方の銀河の観測結果を比較しました1。その結果、標準的な初期銀河の成長モデルは、非標準的な宇宙論やその場しのぎのモデルの微細調整が関係しなくても、JWSTの観測結果を説明できることがわかりました。特に彼らのシミュレーションでは、このような初期においては、滑らかに変化する星形成よりも、バースト的な星形成を考慮に入れる必要があることが示されています。それを無視すると、初期における明るい銀河の数の推定にバイアスがかかる可能性があります。

 

別の最近の研究 (未査読) は、JWSTによる初期の観測で、遠方の大質量かつ成熟した銀河と思われたものは誤って解釈されていたと結論しました2。彼らが研究した銀河は、ダブルブレイク (高赤方偏移のライマンブレイクとバルマーブレイク) と呼ばれる、スペクトルのある特徴によって選ばれました。そのうちの5つの銀河については、その色が星形成銀河の輝線に起因するものであったため、大質量のダブルブレイク銀河と誤って分類されることになりました。彼らは、初期の研究よりも多くの銀河を、複数のフィールドにわたって観測したため、統計的な扱いが格段に良くなりました。フィールド間の宇宙的変動は、最大質量を大幅に過大評価する原因になる可能性があります。彼らが調査したダブルブレイク銀河は標準宇宙論と矛盾しない、と彼らは結論しました。

 

あまり注目されてきませんでしたが、他に2つの最近の研究が、ビッグバン理論の鮮やかで簡潔なテストを提供しています。そのうちの1つ3は、古代の星団の年齢を決定したものです。明らかに、ビッグバン理論と矛盾しないためには、最も古い星の年齢が宇宙年齢を超えることはできません。これまでに、宇宙マイクロ波背景放射の観測によって、最も正確で精密な宇宙年齢 (138億年±0.6億年) が得られています。

 

M92は、天の川銀河にある約160の既知の球状星団の1つで、約33万個の星を含むと推定されています。これは近くにあるので、天文学者たちは1世紀以上にわたって研究を続け、10年ごとに、より良い観測ツールやモデルが導入されてきました。この最新の研究では、138億年±7.5億年という年齢が得られ、観測結果は星団内の星がほぼ同時に形成されたことと矛盾しないと判断されました。現在までのところ、これが最も正確で精密に決定された同年代の星の集団の年齢です。引用した誤差の範囲内では、M92が形成されたのはビッグバンの最大7.5億年後であり、標準宇宙論に従ってM92が形成されるには十分な時間になります。もしM92が、例えば165億年±7.5億年であることがわかれば、ビッグバン理論に対する大きな挑戦を投げかけることになるでしょう。

最良の年代測定

最近の研究4は、133億年以上の最良の年代測定が要約しています (表2をご覧ください)。これから分かるのは、非常に異なる方法が採用されているにもかかわらず、それらが一貫していることです。その中には、個々の星、球状星団、局所銀河群の超微弱銀河、核クロノメトリー (ウランとトリウムの存在比)、白色矮星の冷却期間などが含まれています。どの値も、マイクロ波背景放射から導出された年齢と明確に矛盾してはいません。現在、個々の恒星の中で最も古い記録を持っているのはHD 140283です。チマッティとモレスコが引用した2013年の研究 (彼らの表2の最後から2番目の値) は、この星の年齢を144.6億年±8億年としています。しかし、より最近の研究5では、より正確なGAIA探査機の視差 (距離を求めるため) を使って、その年齢が140億年に近いことを確認しています。しかし、正確な年齢や誤差は与えていません。

 

要約すると、ビッグバン理論は強いテストと弱いテストに合格しています。理論と観測の間に緊張関係がないと言っているのではありません。緊張関係は存在し、それが宇宙論を興味深いものにしているのです。

注釈

  1. Sun, G., Faucher-Giguere, C.-A., Hayward, C. C., Shen, X., Wetzel, A., & Cochrane, R. K. (2023) Bursty Star Formation Naturally Explains the Abundance of Bright Galaxies at Cosmic Dawn. Astrophysical journal. Letters. 955 (2), L35-.
  2. Desprez, G., Martis, N. S., Asada, Y., Sawicki, M., Willott, C. J., Muzzin, A., Abraham, R. G., Bradač, M., Brammer, G., Estrada-Carpenter, V., Iyer, K. G., Matharu, J., Mowla, L., Noirot, G., Sarrouh, G. T. E., Strait, V., Gledhill, R., & Rihtaršič, G. (2023) Lambda$CDM not dead yet: massive high-z Balmer break galaxies are less common than previously reported. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society. 2023年10月投稿。
  3. Ying, J. (Martin), Chaboyer, B., Boudreaux, E. M., Slaughter, C., Boylan-Kolchin, M., & Weisz, D. (2023) The Absolute Age of M92. The Astronomical journal. 166 (1), 18-.
  4. Cimatti, A. & Moresco, M. (2023) Revisiting the Oldest Stars as Cosmological Probes: New Constraints on the Hubble Constant. The Astrophysical journal. 953 (2), 149-.
  5. Spite, M., Spite, F., & Barbuy, B. (2021) 12 C/ 13 C ratio and CNO abundances in the classical very old metal-poor dwarf HD 140283. Astronomy and astrophysics (Berlin). 652, A97-.