Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

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超保存エレメント: 新しい論文、同じ古い結果

This is the Japanese translation of this site.

 

コーネリアス・ハンター
2021/12/2 6:25

 

機能的な制約のない保存構造が発見されれば、進化論は絶対に反証されます。少なくとも、私の友人のスティーブ (本名ではありません) は、20年前に私にそう説明してくれました。進化論者で生命科学の教授であるスティーブは、進化論は反証不可能であるように見えるという問題に答えていました。進化論は、その予測がどれだけ間違っていることが判明しても、その理論は無傷のままです。失敗した予測がこのように無視されるとき、それは最初から予測ではなかったということを意味します。少なくとも、ハードな予測ではありません。もし、ハードな予測が誤りであったことが判明すれば、理論は簡単に修正することができます。予測が正しいとか誤りということがそれほど問題にならないのは、ソフトな予測だったからです。

 

さて、ソフトな予測は、それ自体は悪いことではありません。しかし、ある理論の予測がすべてソフトだとしたらどうでしょう。その場合、高校で何を学んだかにかかわらず、この場合の科学は検証可能でも、反証可能でもありません

そのような理論の一つ

問題は、進化論がそのような理論の1つであるように思われることです。おそらくそれは、起源についての高度な理論では避けられないことなのでしょう。実際、科学哲学者のイムレ・ラカトシュは、科学における反証不可能性がありえることを認めています。ラカトシュにとって、科学的研究プログラムは、補助諸仮説の防護帯に囲まれた「ハードコア」信念によって特徴付けられます。

 

テストの矢面に立たされなければならないのは、またこうして強化された核 (コア) を守るために調整されたり再調整されたり、あるいはすっかり取り替えられなければならないのは、補助諸仮説から成るこの防護帯なのである1

 

ラカトシュは心当たりがあったのかもしれませんが、彼の科学モデルは、科学と呼ばれる検証可能で客観的、経験的に動かされるものに対する現代の見解とほとんど適合しません。経験的証拠から全力で守られた「ハードコア」なコミットメントを持つことに同意する (あるいは認める) 進化論者がどれほどいるでしょうか。間違いなく、私の進化論者の友人であるスティーブはそうではありません。

 

スティーブは、進化論は完全に反証可能であると確信していました。機能的な制約のない保存構造さえ見つかればよいということです。スティーブによれば、それは進化論のハードな予測でした。しかし、この予測は正確には何を意味するのでしょうか、そしてなぜそれが重要なのでしょうか?

 

保存された構造には機能的な制約がなければならないというこの予測は、異なる近縁種間で同じ種類の構造 (遺伝子や内臓など) を見つけた場合、その構造は共通祖先から継承され、その生物にとって何らかの重要性を持っていなければならないことを意味します。その構造は有用でなければならず、その生物の繁殖上の有利性に影響を与えずに、任意に変更したり除去したりすることはできません。つまり、そのような構造には機能的な制約があります。

つまりこういうことです

スティーブによれば、進化のハードな予測は、保存された構造には機能的な制約があるということです。機能的な制約のない保存構造が見つかれば、この理論は絶対に反証されることになります。スティーブによれば、この予測はソフトではありません。

 

この予想がどうなったかを説明する前に、なぜこの予想が重要なのかを説明する必要があります。スティーブの提案は、インテリジェントデザインと進化、より一般的には、目的論と反目的論の間の核心的概念であり、核心的区別だからです。

 

少なくとも古代のエピクロスとその信奉者までさかのぼると、反目的論は常に即時的な有用性と結びつけられてきました。歯は噛むためにあるのではなく、たまたま噛むのに便利だったから歯が存在するということです。この考え方は、ダーウィンの重要な概念である自然選択に内在するものでした。選択は、その生物の現在の適合性に寄与する構造にのみ働きます。その構造には何らかの有用性がなければなりませんし、特に生殖の改善に直ちにつながる有用性がなければなりません。もしその改良が、条件が変わった将来のある時代にやって来るのであれば、進化はその構造を選択する力を持ちません。

 

一方、インテリジェントデザインや目的論的な見解では、そのような即時的な有用性どころか、どんな有用性も必要としません。タイヤ修理キットは、ある製造会社から出た全ての自動車モデルにおいて保存されているかもしれませんが、将来タイヤがパンクするという稀な事象を除いて、有用性はありません。

目的論対反目的論

実のところスティーブは、進化のハードな予測の提案において、目的論と反目的論を区別する重要かつ根本的な概念に迫っていたのです。

 

しかし、この予測は反目的論を何度も否定してきました。それは決して進化論や反目的論のハードな予測ではなく、むしろ失敗した根本教義なのです。例えば、いわゆる超保存エレメント (ultra-conserved element、UCE) について考えてみましょう。UCEは15年ほど前 (スティーブが「ハードな」予測について述べてからそれほど経たない頃) に発見されたもので、異なる種の間で単に類似しているだけではなく、事実上同一、あるいはほとんど同一の、DNAの長い部分のことです。また、これらにはしばしば、機能的な制約がありません。現在進行中の一連のテストでは、UCEは変異させられたり、完全に削除されたりしていますが、多くの場合、生物の適合性にはほとんど影響がない、あるいは影響を認識できないことが分かっています。最近のレビューでは、次のように結論付けられています。

 

現在のところ、超保存配列がなぜこれほど高度に保存されているのか、また、この保存性を維持するために進化的選択が正確にどのような機能に作用しているのかについて、未解決の疑問が残っている。現在までに、マウスで欠失させたすべての超保存されたエンハンサーのうち半数は、潜在的に有害な表現型という結果を示しておらず、また、任意の超保存されたエンハンサーの喪失が、生存能力、生殖能力、妊孕力の低下をもたらすという直接的な証明はない2

 

UCEは、機能的な制約のない保存された構造です。とはいえ、進化論的には問題は微塵も存在しません。このレビューで説明されているように、単純により多くのUCEの有用性を探索し続けなければならないのです。これはそもそも進化論や反目的論のハードな予測では決してなかったということはご覧の通りです。これは、失敗によりむしろ自然の目的論を確認することになった進化的予測の長いリストに加わりました。

 

ああ、スティーブは今でも進化論者です。

注釈

  1. Lakatos I. (1970) Falsification and the Methodology of Scientific Research Programmes. In: Lakatos I, Musgrave A. (eds.) Criticism and the Growth of Knowledge: Proceedings of the International Colloquium in the Philosophy of Science, London, 1965. 91-196. Cambridge University Press. 191. (邦訳: 「反証と科学的研究プログラムの方法論」、『批判と知識の成長』所収、森博監訳、東京: 木鐸社、1985年、191ページ)
  2. Snetkova, V., Pennacchio, L.A., Visel, A. & Dickel, D. E. (2022) Perfect and imperfect views of ultraconserved sequences. Nature Reviews Genetics. 23, 182-194. 2021年11月11日。doi: 10.1038/s41576-021-00424-x. Epub ahead of print. PMID: 34764456.