Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

3つの視点からの「ジャンクDNA」: いくつかの重要な引用

This is the Japanese translation of this site.

 

ケイシー・ラスキン
2024/5/2 16:04

 

まもなく私は、ジャンクDNAについてラトガース大学生物学教授のダン・スターン・カルディナーレ博士と討論します。太平洋時間での午後5時30分です。こちらでご覧いただけます。私たちの前にある質問はこうです。「ヒトゲノムの大部分はジャンクDNAなのか?」以下は、この論題についてのいくつかの重要な引用で、私たちの対話に関連するであろうものです。これらは3つのカテゴリーに分けられます。

  • カテゴリー1: ノンコーディングDNAは「ジャンク」であり、何の機能も持たないと主張する (あるいは広く信じられていることを詳しく語っている) 進化論者からの引用。
  • カテゴリー2: ノンコーディング「ジャンク」DNAの機能を予測する、初期のインテリジェントデザイン理論家からの引用。
  • カテゴリー3: ジャンクDNAが実際に機能を持つという点で、私たちは考え方の変化を経験したと言っている主流の科学的情報源からの引用。

これらの引用の多くは主流の科学論文、書籍、または技術的性格の書籍の章からのものですが、より大衆的なスタイルの主流の科学的あるいは新聞雑誌的情報源からのものも少なくありません。後者の情報源は、査読付きの技術論文ではないものの、かなりの価値があります。

カテゴリー1

ノンコーディングDNAは「ジャンク」であり、何の機能も持たないと主張する (あるいは広く信じられていることをその通りに述べている) 進化論者からの引用。

注: これらの引用の多くは数十年前のもので、ジャンクDNAというアイディアがどのように進化的パラダイムで生まれ育まれたかを示しています。しかし、最近のものもあります。

  • 「現在の証拠は、すべての遺伝物質がDNAであるという考えを妥当なものにしているが (RNAウイルスは例外となりうる)、すべてのDNAが能力を有する遺伝物質であるということにはならない (すなわち『ジャンク』DNAである)・・・」(エレットとハラー、1963)
  • 仮定として:「哺乳類のDNAの99%は真の遺伝物質ではない」(キングとジュークス、1969)
  • 「私たちのゲノムには非常に多くの『ジャンク』DNAが存在する」(大野、1972a)
  • 「哺乳類のゲノムDNAの少なくとも90%は、様々な種類の『ナンセンス』なDNA塩基配列を表現しているように見える。」(大野、1972b)
  • 「ゲノム内で自然選択が働くと必然的な結果として、ゲノム内での生存だけが『機能』である、表現型発現を持たないDNAが出現する。」(ドゥーリトルとサピエンツァ、1980)
  • 「利己的なDNA: 究極の寄生虫・・・それで、要約すると、高等生物のDNAの多くはジャンク同然であるということを示唆する証拠は大量に存在するが、証明はされていない。・・・したがって、利己的なDNAの中には有用な機能を獲得し、生物に選択的優位性を賦与するものもある。寄生というアナロジーを用いると、少し害のある侵襲は、最終的には共生に変化する可能性がある。我々が強調したいのは、利己的なDNAのすべてが有用になるわけではない、ということである。その多くは特定の機能をまったく持たないかもしれない。ある機能を執拗に追求するのはそのような場合には愚行であろう。」(オーゲルとクリック、1980)
  • 「これらの領域は従来、何百万年もの進化によって蓄積された無用の物質と見なされてきた・・・。ヒトの場合、ゲノムの約97パーセントがジャンクである。」( ヤム、1995)
  • 「哺乳類のゲノムには反復配列が散乱しており、ヒトゲノムの場合、その四五パーセントがそういったガラクタから成り立っている。」(コリンズ、2006 [邦訳: 2008])
  • 「現在我々が手にしているゲノム解析の最も印象的な特徴は、明らかに機能しないDNAがいかに多く存在するかということである・・・ダーウィン的観点からは、これらはすべて説明可能である。すなわち、分子的な試行錯誤と同等で、生命の歴史において解剖学的なレベルで行き渡っているものである。」(キッチャー、2007)
  • 「我々のゲノムの50%は・・・非機能的な、トランスポゾンのような寄生DNAで構成される」(アレクサンダー、2008 [邦訳: 2020] [訳注: この引用は初版からですが、邦訳は第2版から訳されています。この文章は第2版で修正されている可能性があります。])
  • 「ゲノムの大部分 (ヒトの場合には九五%) が、きわめて大きな相違を示しているにもかかわらず、存在しないのも同然だ。」(ドーキンス、2009 [邦訳: 2009])
  • 「しかし、ヒトゲノムをデザインした委員会の一員を務めたと認めることは決してないでしょう。あれほどひどいしくじりを犯した大学の委員会は1つもありません。」(デイヴィッド・ペニー、グラウル他 (2013) が引用)
  • 「遺伝学の歴史の大半において、この分野の最も著名な専門家たちは、あなたも、あなたの母親も、あなたの大叔父も、エイブラハム・リンカーンも、すべてのローマ皇帝も、チンギス・ハーンのモンゴル軍の全員も、皆が膨大な量の 『ジャンクDNA』を受け継いでいると考えてきた。2003年、ヒトゲノム全体の配列決定のための13年にわたる記念碑的研究努力であるヒトゲノムプロジェクトの終結と共に我々が発見したことにより、我々のDNAの約98.8パーセントはジャンクに分類された。」(モルトラとロング、2021)
  • 「あなたのゲノムの90パーセントはジャンク」(モラン、2023)

カテゴリー2

ノンコーディング「ジャンク」DNAの機能を予測する、初期のインテリジェントデザイン理論家からの引用。

注: そのような引用は多数存在しますが、最も関連のあるものは、ジャンクDNAが機能的であると広く考えられるようになる前の1990年代後半から2000年代初頭のものです。

  • 「『Science』は『Hints of a Language in Junk DNA』(11月25日号、1320ページ) と報じている。分子生物学者が『ジャンク』と呼ぶ、無意味だと思われているフィラーDNAの鎖は、デジタルコントローラーのコードをデザインしたり書いたりしてきた我々にとっては、必ずしも無用なものには見えない。それらは私にいつも、NOP (No OPeration) 命令の文字列を思い出させる。NOPの何もしない文字列は、初心者には『ジャンクコード』に見えるかもしれないが、プログラムのループに挿入すると、NOPの文字列を使うと正確な時間遅延を達成できる。恐らく、もう少し多くのコンピューター科学者が分子生物学に転向すれば、『ジャンクDNA』の難問はもっと早く解決されるだろう。」(ミムズ、1994)
  • 「[インテリジェント] デザインはサイエンスストッパーではない。実際、デザインは伝統的な進化論的アプローチが妨げるところで探求を促進することができる。『ジャンクDNA』という用語を考慮してみよう。この用語は、生物のゲノムは長い間、方向性のない進化の過程を通してつぎはぎして作り上げられたものであるため、ゲノムはパッチワークであり、その生物にとって必須なのは限られた部分だけであるという見解を暗示したものである。したがって、進化的見地からは、無用なDNAがたくさんあることが予想される。一方、生物がデザインされているのであれば、DNAは可能な限り機能を呈することが予想される。そして実際、最新の知見によれば、DNAを『ジャンク』と呼ぶことは、機能についての現在の知識不足を隠蔽しているに過ぎない。例えば、ジョン・ボドナーは『Journal of Theoretical Biology』の最近の号で、『真核生物のゲノムにおけるノンコーディングDNAは、生物の成長と発達をプログラムする言語をコードしている』ことを説明している。デザインは科学者たちに、進化では奨励されない機能の探究を奨励しているのである。」(デムスキ―、1998)
  • 「ネオダーウィニズム的『物語』は、これら染色体の謎めいた構成要素の影響を解明する上での主要な障害となってきた。・・・利己的なDNAの物語とその同類の枠組みは、経験的証拠との不一致にもかかわらず、それでもなお文献に残っているネオダーウィニズム的進化論の他の「イコン」に加わらねばならない。」(スタンバーグ、2002)
  • 「『ジャンクDNA』がジャンクではないという事実は、進化論のゆえにではなく、進化論にもかかわらず浮上してきたのである。一方、IDの枠組みにおいてリサーチクエスチョンを求めている人々は、DNAのノンコーディング領域の機能をずっと探求してきたものだ。そして今、我々はそれらについてかなり多くのことを知っているのかもしれない。」(ウェルズ、2004)

カテゴリー3

ジャンクDNAが実際に機能を持つという点で、私たちは考え方の変化を経験したと言っている主流の科学的情報源からの引用。

注: これらの引用の中には、科学がジャンクDNAの機能を発見するのを進化的思考が妨げたことを認めているものもあります。

  • 「遺伝学者たちは長い間、タンパク質の青写真を含むDNAのごく一部だけに焦点を当ててきた。残り (ヒトではDNAの98パーセント) は、しばしばジャンクとして片付けられてきた。しかし、タンパク質ではなくRNAを通して働く多くの隠れた遺伝子が発見されたことで、その仮説は覆された。」(ギブス、2003)
  • 「長い間、それらはタンパク質を生み出さないので無関係と見なされてきたが、これらの部分の多くは数百万年の進化の中でほぼ無傷のまま保存されてきた。これは、それらが何か不可欠なことを行っていると示唆するものだ。そして実際、その多くは、生物学者がありえると想像していたよりもはるかに幅広い機能を実行する、さまざまな種類のRNAに転写されている。現在では、1人の人間や1つの生物種を次代とは異なるものにしているものの多くは、我々の『ジャンク』DNA内に隠された宝石における変異ではないかと考える科学者もいる。」(ギブス、2003)
  • 「しかし、遺伝子内のイントロンや、遺伝子間の長く伸びたDNAは、『直ちに進化的ジャンクと決めつけられました』とマティックは言う。その決めつけは早計だった。『私たちは次第に、タンパク質をコードしていなくても、明らかに機能的である「遺伝子」が大量に存在し』、RNAだけを産生することを『悟るようになりました』とジョルジュは述べている。・・・『私はこれが、正統派による事実の客観的な分析からの、この場合は四半世紀にわたる脱線という古典的な物語になると思います』とマティックは言う。『これが示唆するもの、特に、間に介在するノンコーディング配列がRNA分子の形で並列情報を伝達している可能性を十分に認識できなかったことは、分子生物学史上最大の過ちの一つとして伝えられるかもしれません』。・・・理解されなかったためにジャンクとして酷評されたものが、実はまさに人間の複雑性の基礎であることが判明するかもしれない」(ギブス、2003)
  • 「我々が期待しているのは、いつの日か、かつては『ジャンクDNA』と呼ばれていたものが、真に『熟練した』細胞制御機構の決定的な構成要素であると考えられるようになることである。」(スタンバーグとシャピロ、2005)
  • 「反復DNAはゲノムにおける機能的意義のない『ジャンク』であるというアイディアは、ここにほんの一部を引用した、広範かつ増え続けている文献と単純に一致しない」(シャピロとスタンバーグ、2005)
  • 「以前はジャンクとみなされていたDNAは、実際には生物学的情報を担っている。」(ピアソン、2006)
  • 「ここではこれらの発見を概観し、それらがどのようにして、以前は単に利己的なDNA、あるいはより通俗的な用語でジャンクDNAとして見られていたゲノムの大きな構成要素、およびそれを担う生物にとってのその重要性についての我々の見解を変える可能性があるかを強調する。」(モルガンテ、2006)
  • 「『ジャンクDNA』という用語は、非常に受けが良かったとはいえ、主流派の研究者たちを長年にわたってノンコーディング遺伝物質の研究から遠ざけてきた。結局のところ、誰がゲノムのゴミを掘り返すことを好むだろうか?だがありがたいことに、嘲笑される危険があっても、人気のない領域を探求する放浪者もいる。1990年代初頭に、ジャンクDNA、特に反復配列への見解が変わり始めたのは、彼らのおかげである。事実、今ではより多くの生物学者が反復配列をゲノムの宝とみなしている。どうやらこれらの転位要素は無用なDNAではないようだ。むしろ、それらは周囲のゲノム環境と相互作用し、遺伝子組み換えのホットスポットとしての役目を果たし、遺伝子発現を制御するための新しく重要な信号を提供することによって、生物の進化能力を高めているのである。・・・これらのこと、および他の無数の例は、反復配列が『ジャンク』とは言い難く、むしろ真核生物のゲノムの重要で不可欠な構成要素であることを実証している。」(マカロウスキー、2007)
  • 「ふつうの人々にはあまり知られていないようだが、過去一〇年間の発見は高校の生物の授業で習ったことの大半を覆している。もしあなたが、DNA分子はたった数千の遺伝子でできていて、大半は『ジャンクDNA』だと思っているなら、それは間違っている。」(コリンズ、2010 [邦訳: 2011])
  • 「以前は、ヒトゲノムの大部分は機能的な目的を持たない『ジャンク』DNAだと考えられていた。過去10年間で、RNA研究の分野は急速に拡大し、それに伴って、この『ジャンク』の中に同定されたタンパク質をコードしないRNA (ncRNA) 遺伝子の数も増加した。コードされたncRNAの多くは、様々な生体機能に必須であることが既に示されている・・・」(ライト他、2011)
  • 「ダーウィニズムにとって厄介だと思って、[2012年のENCODEの結果に] 飛びつく創造論者がいることに気づきました。まったくの逆で、それはダーウィニストにとってはまさに望むところの、生物界に有用性を見出すことなので [・・・] 私たちは、ゲノムのごく一部だけ、主にタンパク質をコードしているゲノムのごく一部だけが、何かをしていると考えていましたが、今は実際にはその大部分が何かをしていることを発見しています。それがしているのは、タンパク質をコードする遺伝子を動作させることです。[・・・] それらを動作させるプログラムは、以前はジャンクと見なされていた残りの部分なのです」(ドーキンス、2012)
  • 「コールド・スプリング・ハーバー研究所のENCODE研究者であるトーマス・ジンゲラスは、[ENCODE] プロジェクトが始まる前は、ヒトのDNAのうち実際に使用されているのは5〜10パーセントだけだと考えられていたと言う。大きな驚きは、DNAのほとんどすべてが使用されているだけでなく、その大部分が遺伝子スイッチであるということであった。このプロジェクトに参加していたワシントン大学の科学者、ジョン・スタマトヤノプロス博士は、ENCODE以前は、『ゲノムの半分、おそらくそれ以上に遺伝子のオン・オフを指示するものがあると言っても、人々は信じなかったと思います』と語った。」(ニューヨークタイムズ、コラタ、2012)
  • 「[ヒトの機能的DNAの推定値である] 80パーセントが100パーセントになる可能性は高いでしょう。私たちには実のところ冗長なDNAの大きな塊はありません。このジャンクという比喩はそれほど有用ではありません。」(ユアン・バーニー、ヤング (2012) が引用)
  • 「私は、ジャンクDNAに関しては、その用語を使うことはもうないと思います。なぜなら、ゲノムのいずれかの部分を、それが機能的でないと言えるほど十分に知っているかのように、切り捨てることができると想像したのは、かなりの思い上がりに他ならなかったと思うからです。ゲノムの中には、Aluのようにランダムな繰り返しの集合でしかない部分もあるでしょうが、これまでスペーサーとして存在すると考えられていたゲノムの大部分はあることを行っており、その大部分は制御に関するもので、それにはエピゲノムが関与し、私たちに多くのことを教えてくれます。」(フランシス・コリンズ、2015年1月13日のサンフランシスコでの第33回J・P・モルガン・ヘルスケア・カンファレンスにて、ブリュネとドゥーリトル (2015) が再引用)
  • 「真核生物種のゲノムは、大量の重複配列で構成されている。その中で最も豊富に存在するのはサテライトDNA (satDNA) で、その単量体ユニットは長い配列に並べられてセントロメア、ペリセントロメア、サブテロメア領域に優先的に配置されるが、間質位置にも存在する。・・・satDNAの機能的意義については長い間議論されてきた。ヘテロクロマチン分画と一致すること、転写活性が欠如していること、また種間で配列が高度に相違していることから、このDNAは『ジャンク』とラベル付けされてきた。しかし、いくつかの証拠により、セントロメアの構造、動原体の組み立て、染色体の対合および分離といったゲノム機能において役割が割り当てられ、この見解は挑戦を受けた。反復DNAの進化は生殖的隔離に関係しており、それゆえ新しい種の発生にも関係している。さらに、反復DNAはゲノムの完全性や核型進化を主導する力であることが示唆されている。長年にわたり、脊椎動物、無脊椎動物、植物においてもsatDNAが転写活性を持つ証拠を提供する研究の数は増加してきた。実際、ヒトではゲノムの97~98%が安定RNA、いわゆるダークマターRNAを産生する。これらの転写物の主な部分はノンコーディングRNA (ncRNA) で、ヘテロクロマチンの維持、セントロメア、動原体の組み立てのみならず、いくつかの生物学的文脈における遺伝子発現調節にも関与している。」(ビスコッティ他、2015)
  • 「残りの部分 ― DNA配列の98.5パーセント ― は、科学者たちが長い間無用なものと考えていた、いわゆる『ジャンクDNA』である。タンパク質をコードしない領域は、ある本の草稿、無用で恐らくは忘れ去られた文書の中のちんぷんかんぷんな文章のように見えた。しかし、新たな研究によって、ゲノムの『ジャンク的』な部分が、それでも重要な役割を果たしているかもしれないことが明らかになりつつある。」(ブランコ、2019)
  • 「偽遺伝子の機能を理解するための課題とドグマを克服する・・・しばしば機能がないと推定されるが、生物学的に重要な役割を果たすことが見出されつつある偽遺伝子の数は増え続けている。・・・偽遺伝子への広範な誤解は、部分的には『偽遺伝子』というラベルによる軽蔑的な推論によって永続化され、頻繁な機能評価からの除外およびゲノム解析からの排除につながってきた。偽遺伝子の研究を単純化する技術の出現に伴い、我々は客観的な再評価を提案する・・・。偽遺伝子としてアノテーションされた領域が後に生物学的機能を発現することが判明する例が増加すると共に、ゲノム上のこれらの領域が偽遺伝子として早計に退けられ、それゆえ機能がないと見なされる危険性が浮上している・・・偽遺伝子が直接研究されているところでは、それらはしばしば定量化可能な生物学的役割を持つことが発見されている・・・」(チータム他、2020)
  • 「かつて『ジャンク』と名付けられたこのノンコーディングゲノムは、何十年もの間、生物の生物学にとって取るに足らないものと考えられてきた。今では、ノンコーディングゲノム内の要素が、遺伝子やそのタンパク質産生物がいつ、どこで、どのようなレベルで発現するかに影響を与える、重要な遺伝子制御機能を果たしていることが広く認められている。」(ファーレイ他、2021)
  • 「我々のゲノムの99パーセント近くは、歴史的にノンコーディング、無用の 『ジャンク』DNAとして分類されてきた。その結果として、これらの配列はめったに研究されなかった。国際的なプロジェクトにより、これらのDNAはジャンクとは程遠いことが明らかにされた。」(モルトラとロング、2021)
  • 「タンパク質をコードする遺伝子のほとんどは、2001年のヒトゲノムプロジェクト (HGP) の最初のドラフトより前に発見された。以前はジャンクDNAと呼ばれていた他の多くのゲノム要素は、その後精査されるようになった。」(ゲイツ他、2021)
  • 「HGPの開始に先立って、大きな論争があった: ジャンクDNA、あるいはゲノムのダークマターと呼ばれていたゲノムの膨大なノンコーディング領域をマッピングする価値はあるのだろうか?主にHGPのおかげで、今ではヒトゲノムの機能的配列の大部分はタンパク質をコードしていないことが理解されている。むしろ、長鎖ノンコーディングRNA、プロモーター、エンハンサー、無数の遺伝子制御モチーフなどの要素が、ゲノムに生命を吹き込むために協働しているのである。これらの領域における変異がタンパク質を変化させることはないが、タンパク質の発現を統制するネットワークを擾乱することはありえる。」(ゲイツ他、2021)
  • 「HGPのドラフトを手にすると、タンパク質をコードしない要素の発見が爆発的に増えた。これまでのところ、その増加はタンパク質をコードする遺伝子の発見を5倍も上回っており、減速する兆しはない。同様に、そのような要素についての出版物の数も、我々のデータセットが網羅する期間に増加した。例えば、遺伝子発現を制御するノンコーディングRNAについての論文は何千とある。」(ゲイツ他、2021)
  • 「『ジャンクDNA』の時代は終わった。この論文の上席著者たちがそれぞれの大学で遺伝学を学んでいた頃、真核生物のゲノムのタンパク質をコードしない部分は、散在する『無用な』配列で構成されており、しばしばsatDNAのような反復配列で編成されているというのが一般的な学説であった。後者は進化の間に、例えば遺伝子の機能を分離し、個別化するための遺伝子重複イベントの結果として蓄積されたのかもしれないとされた。この見解は根本的に変わってきており、我々の研究は、この問題に対して多細胞寄生虫のゲノムの構造的、機能的、進化的側面から取り組んだ最初のものである。」(スティッツ他、2021)
  • 「共著者でクイーンズランド大学の研究者ティム・マーサーは、彼の見解では、ncRNAの機能解析は・・・確立されてきた、と言う。・・・問題がジャンクや転写ノイズといった大雑把な記述から移るにつれ、課題は分化、発生、疾患におけるncRNAの役割を明らかにするために、その機能性を探索するという実用的なものへと移っている、とマーサーは言う。彼は、新しい世代の科学者たちがこの分野の業績を築くための『大変な仕事』を腰を据えて行うようになると見ており、そこでは技術開発と応用が問題となっている。例えば、既存の方法とこれから開発される新しい方法を組み合わせることが重要になるだろう。そして、それは探検家となることを意味する。ちょうどアマゾンの熱帯雨林が進化によって様々なレベルで形作られているように、ncRNAを含むヒトゲノムもこれらの力が形作ってきた。熱帯雨林とゲノムは、どちらも活気に満ちている。ゲノムは絶えず転写されており、アイソフォームが出現し、スプライシングが行われ、遺伝子は他の遺伝子と交錯している。ゲノムは、かつて『遺伝子間の砂漠の中の遺伝子の島』と呼ばれていたものとは程遠い。」(マルクス、2022a)
  • 「ノンコーディングRNAはどのようにして廃品置き場から去り始めたのか・・・ノンコーディングRNAに焦点を当てた研究コミュニティは成長し続けている。この分野についての懐疑論にはある程度の歴史がある。・・・一部の人々にとって、ノンコーディングRNAはジャンクである。時が経つにつれて、彼らは定評のある廃品置き場から去っていった。」(マルクス、2022b)
  • 「ジャンク。一部の人々の見解では、それがノンコーディングRNA (ncRNA) であり、転写はされるがタンパク質には翻訳されない遺伝子である。クイーンズランド大学の研究者ティム・マーサーは、ncRNAについての彼の論文の1つで、2人の査読者が『これは良いものだ』と言い、3人目が『これはすべてジャンクだ。ノンコーディングRNAは機能的ではない』と言ったことを回想している。マーサーの見解によれば、ncRNAをめぐる討論は、一般に、『すべてジャンクだ』から『どれが機能的なのか?』『それらは何をしているのか?』へと推移してきた。」(マルクス、2022b)
  • 「ncRNAがジャンクの領域から重要なものへと移行した最も重要な理由の1つは、lncRNAの機能喪失実験や、RNA干渉 (RNAi) などの手法を用いて、研究室が見てきたことにある。これらの実験は、『lncRNAが真正の細胞機能を持つことを示す鍵』となってきた。変異したときに強い表現型を示すlncRNAは少ないが、多くは遺伝子発現をどのように変化させるかを研究することで評価できる制御的役割を持っている。ncRNAについてのそのような洞察を得るには、直交的な方法が重要なのだ、と彼女は言う。『研究によっては厳密さに欠けるため、懐疑的な見方をする研究者もおり、私たちはこの偏見を克服するために、可能な限り最良の証拠を産み出すという挑戦に直面しています』。」(マルクス、2022b)
  • 「遺伝子中心の進化モデルへのさらなる挑戦は、反復的であり、タンパク質をコードしておらず、したがって自然選択の対象にはならないであろうことから、長らく無関係な『ジャンクDNA』と考えられてきたものが、実際にはゲノムの進化、エピジェネティクス的発生、遺伝子の制御を形成する上で重要な役割を果たしているという認識が高まっているという事実である。」(コーニング他、2023)
  • 「分子生物学におけるクーン的革命: 複雑な生物のほとんどの遺伝子は制御RNAを発現している・・・簡略化したクーン的用語で言うと、『遺伝子はタンパク質をコードし、そうしない配列は主にジャンクである』という分子生物学創設以来の支配的パラダイムは、『遺伝子はタンパク質と制御RNAをコードし、後者は発生経路のエピジェネティクス的制御に必要である』に置き換えられるべきであろう。RNAは遺伝子とタンパク質の単なる中間体ではなく、遺伝子制御の主要な担い手であり、遺伝の一因でもある。」(マティック、2023)
  • 「物語は未だに展開中であるが、我々は、ヒトや他の複雑な生物のゲノムはジャンクに満ちているのではなく、むしろ制御RNAを特定することに大部分を充てている高度にコンパクトな情報スイートであると結論した。これらのRNAは分化と発生の軌跡を促し、脳機能を支え、世代を超えた経験の記憶を伝えるが、その多くは長年にわたる遺伝的プログラミングの概念や進化論のドグマに反している。」(マティックとアマラル、2023)