Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

ある有神論的進化論者からの、スティーヴン・メイヤーの本に対するとっくに回答済みの批判

This is the Japanese translation of this site.

 

ケイシー・ラスキン
2024/5/15 16:04

 

私は最近、スティーブン・メイヤーの著書『Return of the God Hypothesis』(ROTGH) が3年前に出版されたとき、スコット・ブキャナンという有神論的進化論者がさまざまな批判的反応をまとめ、自身のブログに投稿したことに気がつきました。ブキャナンは自称有神論的進化論者で、化学工学の博士号を持ち、『BioLogos』のファンです。彼の書評は、メイヤーが最近のピアーズ・モーガンのインタビューで好意的な注目を集めているため、現在再び流布されています。それがROTGHを論駁していると主張する人もいます。ブキャナンの書評は、この本に対する効果的な批判になっているのでしょうか?いいえ、そうではありません。それは、私たちがとっくの昔に取り上げたROTGHに対するいくつかの批判の焼き直しに過ぎず、提起している他の論題も、私たちが別の文脈ですでに取り上げています。以下は、その論議と私の回答の要約です。

低レベルの言説

ブキャナンはクリスチャンなので、彼のブログが不快な修辞、悪罵、非進化論科学者を「不正直」「嘘つき」などと呼ぶ個人攻撃を使っているのは二重に残念なことです。彼のROTGHの書評も例外ではなく、メイヤーや他のIDの人々を「不正直」、「無能」、「不正直の極み」の発露と呼ぶ資料を肯定的に引用しています。彼はメイヤーの読者まで攻撃し、「メイヤーが読者に期待する壮絶な無知の度合いには驚嘆せざるを得ない」と述べています。彼は書評の中でROTGHへのリンクを張る気にもなれませんでした。その言説のレベルが、ブキャナンの出自を物語っています。

 

ROTGHを読んだことのある人は、メイヤーの論議が4つの部分からなることをご存じでしょう。

  • (1) ユダヤ-キリスト教的世界観は科学の勃興に不可欠であった。
  • (2) ビッグバンと宇宙の始まりの証拠は、第1原因を必要とし、それはデザインを指し示している。
  • (3) 生命が居住可能な宇宙をもたらした自然のファインチューニングは、デザインを示唆している。
  • (4) 生命と動物のボディプランの起源は、知的原因によってのみ説明され得る情報の注入を必要とする。

ブキャナンの書評は論議 (1) に異議を唱えておらず、基本的にメイヤーの物理学に基づく論議を支持しています。ブキャナンが、「メイヤー博士が宇宙論に関して提示 している物理学は、その限りでは結構であると私は思う」と言っている通りです。ブキャナンが主に問題にしているのは論議 (4) だけで、生物学的デザインを網羅しているROTGHの2つの章、生命の起源についての9章とカンブリア爆発についての10章です。

 

ブキャナンの投稿のタイトルは、「Scientists' Responses to Stephen Meyer's 'Return of the God Hypothesis'」であり、多くの「科学者たち」からの反応を集めたことを示唆しています。しかし、ブキャナンが焦点を当てているROTGHの書評は3つだけで、そのうちの1つだけが科学者によるもので、それはダレル・フォークです。フォークは思慮深い生物学博士で、『BioLogos』の上級顧問であり、彼のROTGHの書評に私たちは数年前に回答しています

 

他の2つの書評は科学者によるものではありません。1つは『BioLogos』のプログラム統括責任者のジム・スタンプによるもので、彼は賢明で思慮深い学徒ではありますが、科学者ではありません。3番目の書評は仮名「Puck Mendelssohn」によるもので、無神論者、弁護士、中小企業経営者と自称し、『Amazon』でIDの書籍の口汚い書評を投稿することで有名です。ブキャナンの書評は、「科学者、哲学者、無神論者のネット荒らしが『Return of God Hypothesis』に返答する」というタイトルの方が正確になったでしょう。

 

以下では、この3人の評者が提起した5つの主な点について議論します。

1. ダレル・フォーク、RNAワールド、生命の起源

ブキャナンは、RNAワールドの実験に基づくメイヤーの生命の起源の議論についてのダレル・フォークの言葉を引用しています。フォークは、RNA分子が「100%の効率」(フォークの言葉) で自己複製できることを2014年のある論文が示したため、これらの実験についてのメイヤーの議論は時代遅れだと論じました。ブライアン・ミラーが、フォークへの強力な反論をこちらに書いています。「ダレル・フォークはRNAワールドの実験と・・・スティーブン・メイヤーをひどく誤認しています

 

ミラーは、メイヤーがROTGHで、自己複製するRNAを全く示さなかった非常によく似た実験を取り上げたことを示しました。フォークが挙げた実験についても同じことが示されており、自己複製するRNAは存在しませんでした。その実験は、単に1つのRNAが別のRNAを半分にしたもの2つを連結することを示したものでした。しかし、そのシステムは自己複製RNAではありませんでした。実際、その実験はRNAを現代の生命機械、明らかに生命の起源においては存在しなかったであろうものを使って複製しました。

2. ダレル・フォークと四肢の起源

ブキャナンは、フォークが挙げた、ROTGHが出版された後に発表された2021年のCellの論文も引用しています。その論文は、遺伝子の変化が鰭を四肢に変えたことを示すと主張したものでした。私はこの論文とフォークの主張に対して詳細に返答し、四足動物の四肢のようなものは何も産み出されておらず、その論文はそのようなことを示すという主張すらしていないことを示しました。産み出された2つの「骨」が、四足動物の四肢の骨と相同であるという主張もしていません。この突然変異の表現型は、野生では何の生存利益も提供しない可能性が高いでしょう。詳細は以下をご覧ください。

3. ジム・スタンプとカンブリア爆発

2021年、ジム・スタンプはスティーブン・メイヤーを『BioLogos』のポッドキャストに出演させてROTGHについて議論し、後にそのポッドキャストに「ガイド」を投稿しました。後者にはメイヤーの発言に対する攻撃が含まれており、ポッドキャスト中にそれに答える機会はメイヤーにはありませんでした。デイヴィッド・クリンホファーがこの事件をこちらで取り上げています。ブキャナンは、『BioLogos』のカンブリア爆発についての記事にリンクしているスタンプの「ガイド」を引用しています。これらの点の多くは、「FAQ: カンブリア爆発は現実のことで、進化にとって問題である」で回答されています。『BioLogos』の記事の具体的な問題点には、以下が含まれます。

  • カンブリア爆発の長さが数千万年であったというのは誤りで、この主張には何年も前の次の記事で答えています。「How "Sudden" Was the Cambrian Explosion? Nick Matzke Misreads Stephen Meyer and the Paleontological Literature; New Yorker Recycles Misrepresentation
  • カンブリア爆発を「不完全な」記録の「アーティファクト」として、または単に「鉱化構造」の起源を表すものとして言い抜ける様々な方法に頼っています。ところが、カンブリア紀の指導的な専門家たちは、これらのアドホックな説明を却下し、カンブリア爆発は現実の事象であったと信じています。 詳細はこちらこちらをご覧ください。
  • カンブリア紀の動物の先駆者とされるものとして、様々な先カンブリア時代の化石を挙げています。ギュンター・ベヒリーと私は、なぜこれらの「先カンブリア時代の動物」がカンブリア紀の形態の先駆者ではないのかについて書きました。こちらこちらこちらをご覧ください。スティーヴン・メイヤーは『Darwin's Doubt』の中で、先カンブリア時代の動物の化石が欠如していると信じる専門家についてもこのように記しています。「グラハム・バッドとセーレン・イェンセンが述べているように、『既知の (先カンブリア時代/カンブリア紀の) 化石記録は誤解されておらず、カンブリア紀の始まり (約5億4300万年前) の直前までの化石記録からは、それよりも古い豊富な堆積物から見つかるはずなのに、説得力のある左右相称動物の候補は知られていない』。それゆえ、彼らはこう結論している。『左右相称動物の進化史の深部において期待された、潜在的に彼らの漸進的な発達を示し、何億年も引き延ばして先カンブリア時代に至るダーウィン的パターンは、奇妙なことに具現化できなかった』」。

ブキャナンは、スタンプの「ガイド」を引用して孤児遺伝子について議論し、それらがジャンクDNA配列から派生したものであるとも主張しています。私は『BioLogos』の科学者たちからのこれらの論議にこちらで返答し、「ジャンクDNA」から遺伝子がどのようにして「デノボ」に生じるのか誰にも知らないと指摘しました。なぜなら、これには多数の自発的な協調突然変異が要求されるからです。ある論文は「ダーウィンの錬金術」になぞらえました。これが偶然に起こる可能性は非常に低く、「デノボ」な遺伝子の起源のような魔法のように聞こえる表現に頼っても、問題は解決しません。

4. 「Puck Mendelssohn」と化石記録

前述のように、Puck Mendelssohn (以下「PM」) は『Amazon』のレビュアーで、IDの本に対して、憎むべき罵詈雑言と人身攻撃に満ちた、意地悪く無礼な書評を頻繁に投稿しています。ブキャナンは、ROTGHについてのPMの『Amazon』の書評の大部分を転載し、しかもそれを肯定的に、「多くの情報を詰め込んだ」「詳細な批判的書評」と呼んでいます。ところが、先に述べたように、PMの書評はメイヤーやIDの人々を「不正直」、「無能」と呼び、ROTGHの読者さえ攻撃して、次のように述べています。「メイヤーが読者に期待する壮絶な無知の度合いには驚嘆せざるを得ない」。どうやらブキャナンは、このような人身攻撃を推進したいようです。

 

PMの書評の大部分は、メイヤーの進化の扱いに焦点を当てています。彼は『Darwin's Doubt』を「カンブリア爆発に関する古生物学的、遺伝学的証拠の甚だしく誤った表現」と呼び、メイヤーが「その速度と説明の難しさの両方を誇張している」と主張しています。皮肉なことに、PMは次いで 「カンブリア紀についてのダグ・アーウィンとジェームズ・バレンタインによる優れた本」を引用しています。私たちもその優れた本を引用しましたが、それはその本がカンブリア爆発の急速さについてのメイヤーの見解を支持し、それが不完全なサンプリングや保存によるアーティファクトではなく、現実の 「未解決」の事象であることを認めているからです。詳しくは以下をご覧ください。 

ROTGHに対するPMの最大の不満は、メイヤーの次の一節にあります。

 

動物のカンブリア爆発は特に印象的とはいえ、それは新しい生命体の唯一の「爆発」とは程遠い。最初の有翅昆虫類、鳥類、顕花植物、哺乳類、その他多くのグループも、化石記録において突如として現れ、化石を含む堆積岩のより低い、より古い層にある推定上の祖先との明らかなつながりはない。

 

これらのグループが化石記録に突如として現れることは、文献に十分に記載されています。詳細はこちらか、書籍『Theistic Evolution』中のメイヤーとギュンター・ベヒリーによる章「The Fossil Record and Universal Common Ancestry」をご覧ください。

 

PMは特に哺乳類についてのメイヤーのコメントに憤慨していますが、多くの権威が第三紀における主要な哺乳類群の「爆発」あるいは「爆発的多様化」を挙げています1。古生物学者のナイルズ・エルドレッジは、「あらゆる類の欠落がある。種から種へ徐々に移行する途中の中間種が存在しないだけでなく、食肉類の科のあいだ、哺乳類の目のあいだといった、大きなグループ間にも欠落がある」と記しています2

 

PMの主な不満は、メイヤーがトーマス・ケンプの著書『The Origin and Evolution of Mammals』を引用すべきだったというものですが、メイヤーは共著の教科書『Explore Evolution』の中で、最初の哺乳類についての進化論的説明について長文の批判を行なっています。そこで、メイヤー他は実際にケンプの本をまさしく引用し、深刻な不正確さを指摘しています。

 

教科書の中には、哺乳類型爬虫類のようなグループの出現順序を示す画像の縮尺を変えているものがある。これにより、実際よりも特徴の大きさを近く見せ、系統学的に密接で、異なるタイプの動物間の移行が容易であるかのような印象を与えている。特に、哺乳類型爬虫類から哺乳類への系列を提示する際にはしばしば、ある頭蓋骨を拡大し、他の頭蓋骨を縮小して、実際よりもサイズが似ているように見せている。

― 『Explore Evolution』、29ページ

 

彼らは、この進化の系列とされるものが、ケンプが提示するほど整然としたものではないことを示す下記の図を用意しています。

ケンプが爬虫類から哺乳類への進化の事例をいかに誇張しているかを考えると、メイヤーがROTGHでこの本を引用しなかったのには十分な理由がありました。

 

メイヤー他の教科書はさらに、これらの哺乳類の祖先とされるものの多くは、順番に現れてはいないと述べています。「クラドグラムが予言し、長い期間をかけて順にきちんと到着しているべきであった5つの「中間」形態は、実際には化石記録の中に同時に、突然出現している」。それで、哺乳類の進化の事例は、PMが私たちに思わせようとしているほど明快ではありません。

 

また、哺乳類に関してブキャナンは、クジラの化石が進化の良い証拠になると主張しています。この論議については何度も取り上げてきました。例えば、「Adam and the Genome and Whale Fossils」をご覧ください。

5. 「Puck Mendelssohn」と新しい遺伝情報の起源

PMは、盲目的な進化メカニズムが新しい生物学的形態を生成するのに必要な新しい情報を産み出すのに苦闘せざるを得ないというメイヤーの論議も攻撃しています。彼は、ランダムな突然変異が新しい機能性タンパク質を産み出すことの難しさを示したダグラス・アックスの2004年の研究結果をメイヤーが引用したことに焦点を当て、アックスの「不合理な見解は、この分野で働く科学者の、一人残らず全員によって却下され、それ以来数十年間、何の支持も得られていない」と主張しています。しかし、偶然の突然変異が新しいタイプのタンパク質を産み出すことを困難と見る点で、アックスは決して1人ではありません。タンパク質進化分野の指導的存在だったダン・トゥフィックが、2021年に悲劇的な死を遂げる前に、『American Society for Biochemistry and Molecular Biology Today』の2013年の記事に寄せたコメントを考慮してみましょう。

 

全体として、タンパク質進化の分野が必要としているのは、アミノ酸のランダムな配列が、いかにして我々が今日タンパク質として認識しているような洗練された実体に変化したかを説明する、妥当で確固たる仮説である。それが出来るまでは、トゥフィックが言うように、タンパク質の台頭という現象は「奇跡に近い何か」であり続けるだろう。[強調追加]

 

PMは、β-ラクタマーゼ酵素の機能を進化させることは、アックスが主張するよりもはるかに容易であることが判明したとされる2017年の研究によって、アックスの結果は反駁されたと力説しています。

 

アックスが1077個の配列に1個しか発生しないと外挿したのと全く同じ酵素活性が、108個の配列だけをスクリーニングして2回発見された (シャハサヴァリアン他、『FEBS Journal』、2017年2月、634-653ページ)。69桁である。小さな誤差ではない。

 

私たちはシャハサヴァリアン他 (2017) について十分に承知していますが、PMはこの研究をひどく誤解しているか、誤って伝えています。アックスの仕事では、β-ラクタマーゼ酵素の希少性は配列1077個につき1個と測定されました。この数字がこれほど低いのは、活性部位の活性を支える安定した構造を得るのが難しいからです。ランダムな配列によって安定した構造を産み出すことは非常に難しいので、アックスの測定は十分に妥当です。実際、ブライアン・ミラーと私がこちらに記したように、ティアンとベスト (2017) は、機能的に安定なタンパク質が、β-ラクタマーゼについてのアックスの結果よりもさらに稀であることを発見した研究があることを報告しています!

 

いずれにせよ、シャハサヴァリアン他 (2017) はアックスを反駁するために着手したわけではなく、根本的に異なる問題を研究していました。その論文は、大量の抗体ライブラリーから始めています。それらは、私たちの免疫系細胞によって作られる特殊なタンパク質で、安定するようにデザインされているものの、自由に変異して異なるものに付着することが可能な特定の部分を持っています。PMの主張にもかかわらず、彼らは完全にランダムな配列を使用したのではなく、代わりに既存の抗体タンパク質のセグメントを使用し、その「活性部位」のみを変異させました。繰り返しますが、抗体は安定した骨格を提供するようにデザインされています。つまり、機能性タンパク質を産み出す上で最も難しい部分である安定した構造を得ることは、すでに解決されているのです。

 

つまり、シャハサヴァリアン他 (2017) は、抗体断片によって提供される安定した構造から始めました。これが、β-ラクタマーゼ酵素を産み出す上でほぼ間違いなく最も難しい部分なのです。それから彼らは、抗体の可変領域 (抗体が何らかのものを許容するようにデザインされているところ) を変異させ、108から109個の抗体のうち1個が、通常はβ-ラクタマーゼによって破壊される抗生物質薬物に付着できることを発見しました。抗体の定常領域が結合部位の安定した構造を提供していたのですから、これは驚くことではありません。安定した構造が所定の位置にあれば、機能的な結合部位を生成するのははるかに容易です。

 

したがって、シャハサヴァリアン他 (2017) は本当に何もないところからβ-ラクタマーゼ酵素を創出する可能性を測定したわけではありません。そのようにするためには、安定した構造 (非常に難しい) と結合部位 (難しいが、それほどではない) の両方を創出する難易度を測定する必要があったでしょう。彼らが測定したのは後者だけで、両方を合わせたものではありませんでした。したがって、これは実際にはアックスが測定したのと同じ困難な課題 (両方を生成する) を測定したのではなかったのです。

 

最後に、PMは新しいタンパク質が進化できる証拠としてCOVIDの進化能力を挙げています。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の突然変異は非常に一般的ですが、常にスパイクタンパク質の全体的な形状や構造を保存しています。つまり、そう、全体的な形状や 構造を変えないとすれば、限られた範囲でタンパク質を変異させることはできるのです。実際、特にメイヤーとアックスは、タンパク質の折り畳み構造を変えないのであれば、突然変異は既存のタンパク質の機能を修正し、最適化することさえできることを肯定する点において、非常に明確です。むしろ彼らは、突然変異が蓄積するにつれて、それらによって折り畳みの構造が、新しいフォールドが生じ得るよりもずっと前に分解・破壊されてしまうため、突然変異・選択メカニズムには新規のタンパク質折り畳みを部分的にも生成する能力が欠けていると主張してきました。実際、新しいタンパク質を得る上で最も難しいのは、新しい折り畳みを進化させることです。つまりPMは、私たちが非常に困難だと言っていること、すなわち新しい構造を持つ新しいタンパク質の折り畳みの進化の例を挙げていないのです。

6. インテリジェントデザインへの誤ったフレーミング

最後に、ブキャナンの書評には、IDについての物語と大きなフレーミングが含まれていますが、それは誤りです。彼は、IDは数多くの「科学者たち」によって反駁され、常にその「戦略」を変え続けており、破滅しかかっていると主張しています。しかし、彼のIDへの理解は情報不足が激しく、非常に不正確で、深刻な誤解に満ちています。事実に基づく情報を提供しましょう。

  • 私たちの運動には文字通り毎週新しい科学者が加わっており、私たちの科学者のコミュニティは拡大しています。つい2週間前、私たちはIDの査読済み論文のページを更新し、IDを支持して発表された150以上の査読済み論文を記載しました。また、私たちの非常に活発な科学研究プログラムについての興奮を誘う新しいページも掲載したばかりです。ブキャナンは恐らくIDの科学的進歩について何も気づいておらず、そのために彼のフレーミングは非常に不正確なのです。
  • ブキャナンは、IDの宗教や公立学校教育政策との関係について不正確な物語を提供しており、これは私たちが何度も取り上げてきた誤った主張です。ID支持者は神を信じるかどうかについて非常にオープンで、私たちはこの点について何も隠したことはありません。また、IDがデザイナーを特定できないと主張する私たちの理由は「戦略的」なものではなく、原理的なものであり、デザイン検出の科学的手法を通して学べることの限界を尊重したいという願いに由来するものです。詳細については、「Principled (not Rhetorical) Reasons Why Intelligent Design Doesn’t Identify the Designer」をご覧ください。
  • また、私たちはIDの宗教的なつながりを「偽装」したこともなければ、IDに有神論に好意的な、より大きな意味合いがあることを否認したこともありません。2005年のキッツミラー対ドーバー裁判における私たちのアミカスブリーフは、私たちが常に言ってきたことを論じています。すなわち、IDはより大きな宗教的意味合いを持つ科学理論であり、このことによって進化論やビッグバン宇宙論と大いに似たものになっています。詳細については、「Any larger philosophical implications of intelligent design, or any religious motives, beliefs, and affiliations of ID proponents, do not disqualify ID from having scientific merit」をご覧ください。
  • 『Discovery Institute』は、ドーバー裁判以前も以後も、IDを公立学校に押し込もうとすることに反対してきました。詳細については、こちらこちらこちらをご覧ください。

結局、ブキャナンの論評は不十分です。彼は、私たちが以前に決定的な反駁を行った論評や 論議を引用しています。ブキャナンが、非常に無礼なID批判者からの、このような不快な悪罵と人身攻撃を支持することに頼っているのは残念なことです。しかし、彼の大仰な修辞にもかかわらず、この書評にはメイヤーの論議への深刻な挑戦はありません。

注釈

  1. 以下の各文献をご覧ください。
    • Ward, P. D. (2006) Out of Thin Air: Dinosaurs, Birds, and Earth's Ancient Atmosphere. Joseph Henry Press, Washington DC, p. 224. (邦訳: ピーター・D・ウォード、『恐竜はなぜ鳥に進化したのか 絶滅も進化も酸素濃度が決めた』、垂水雄二訳、文藝春秋、2010)
    • Grimaldi, D. and Engel, M. S. (2005) Evolution of the Insects. Cambridge University Press, Cambridge, p. 37.
    • Rice, S. A. (2007) Encyclopedia of Evolution. Checkmark, New York, p. 6.
    • Colbert, E. H. (1969) Evolution of the Vertebrates: A History of the Backboned Animals through Time. John Wiley & Sons, New York, p. 123. (邦訳: エドウィン・H・コルバート、『脊椎動物の進化』、田隅本生訳、築地書館、2004)
    • Eldredge, N. (1989) Macroevolutionary Dynamics: Species, Niches, and Adaptive Peaks. McGraw Hill, New York, p. 44. (邦訳: ナイルズ・エルドリッジ、『大進化: 適応と種分化のダイナミクス』、高木浩一訳、マグロウヒル出版、1992)
    • Martin, R. A. (2004) Missing Links: Evolutionary Concepts and Transitions Through Time. Jones & Bartlett, Sudbury, pp. 135, 139, 179.
    • Godinot, M. (2015) Fossil Record of the Primates from the Paleocene to the Oligocene. In: Henke, W. and Tattersall, I. (eds.) Handbook of Paleoanthropology: Principles, Methods, and Approaches. 2nd ed. Springer, Berlin, pp. 1137-1259.
    • Feduccia, A. (1995) Explosive evolution in tertiary birds and mammals. Science, 267 (5198), pp. 637-638 (February 3, 1995).
    • O'Leary, M. A., et al. (2013) The Placental Mammal Ancestor and the Post-K-Pg Radiation of Placentals. Science, 339, pp. 662-667 (February 8, 2013).
  2. Eldredge, N. (1982) The Monkey Business: A Scientist Looks at Creationism. Washington Square Press, New York, p. 65. (邦訳: ナイルズ・エルドリッジ、『進化論裁判: モンキー・ビジネス』、渡辺政隆訳、平河出版社、1992、85ページ)