Japanese Translation of EVOLUTION NEWS & SCIENCE TODAY

https://evolutionnews.org/ の記事を日本語に翻訳します。

新しいタンパク質は進化可能か?

This is the Japanese translation of this site.

 

ダグラス・アックス | @DougAxe
2021/10/8 15:52

 

編集者注: この抜粋は、新しく発売された書籍『The Comprehensive Guide to Science and Faith: Exploring the Ultimate Questions About Life and the Cosmos (English Edition)』のダグラス・アックスによる章からの引用です。

 

アミノ酸がつながった長い鎖が、機械のような精度で高度に特定された分子機能を実行できるようにしているものは何だろうか?その答えは、機械のような構造である。図2は、そのような注目に値する構造の (数千のうちの) 一例を示している。この図に描かれているマルチパートマシンは、ATP合成酵素である。22個のタンパク質分子の集合体で、エネルギー分子であるATPを産生する。これは化学変換 (ADPからATPを作る) を遂行するので、生化学者からは酵素の一つとされている。しかし、これは分子機械と呼んでも過言ではない。ATP合成酵素は、毎分8,000回転するローター (c-ring、y、Eと書かれた部分から成る) を持ち、精巧なナノジェネレーターとして動作しているのだ!

図2: 細菌のATP合成酵素の構造。(A) タンパク質の部分を示した模式図。(B) 低温電子顕微鏡法と呼ばれる方法で得られた、ATP合成酵素のさまざまな角度からの画像。(C) 分子の詳細 (ここでは関係ない)。この図は、H・グォ、鈴木俊治、J・L・ルービンシュタイン、「Structure of a bacterial ATP synthase」、eLife 2029:8:e43128 (2019年)、https://elifesciences.org/articles/43128/ (2020年8月24日アクセス) から、CC BY 4.0ライセンスにより引用した。

しかし、アミノ酸のつながった長い鎖が、どのようにしてこのような機械を作るための安定した部品を形成するのだろうか?簡単に言うと、全体が特定の3次元形状に固定されるように、異なったアミノ酸が鎖状に編成されることで可能になる。この過程をタンパク質フォールディングと呼び、フォールドとは全体の形を指す用語である。図3は、その基本を例示したものである。

 

ここで「可能」という言葉を強調したのには理由がある。ランダムな遺伝子はランダムなアミノ酸の配列を特定することになり、それはフォールディングされることなくつぶれてしまうだろう。そのような鎖は、細胞の過程を妨げないように、速やかにアミノ酸に分解される。タンパク質鎖が安定した構造にフォールディングされるには、非常に特殊なアミノ酸配列が必要なのだ。

驚異を測定する

これらの配列がどれほど特殊でなければならないかを測定することは可能である。ランダムな遺伝子に望みはないので、これを行う最良の方法は、ある選択可能な形質を付与するタンパク質を産生することによりその形質を特定する天然の遺伝子から始めることである。選ばれた遺伝子にランダムな突然変異を導入する実験室的な方法がある。この方法は、突然変異が起こる回数を制限したり、突然変異を遺伝子のごく一部に限定したりして、制御された方法で行うことができる。機能するタンパク質を特定するある遺伝子から始めて、その遺伝子をどの程度変異させるかをこの方法で制御すれば、実験者はその遺伝子の変異バージョンを大量に産生することができ、そのうちのいくつかはほぼ間違いなくまだ機能するだろう。

 

このような以前の研究を基に、私は細菌がペニシリン抗生物質を不活性化できるようにする天然遺伝子にこの方法を適用した。この場合の形質は抗生物質耐性であり、実験室で選択するのは非常に簡単である。まず、ペニシリンを少量加えたペトリ皿に細菌を置くだけでよい。ペニシリンを分解できる酵素を特定する遺伝子の変異体を持つ細胞がペトリ皿の上に目に見えるコロニーを形成するのに対し、遺伝子が不活性の細胞は死んでしまう。私は、4つのアミノ酸クラスターを選び、それぞれ10個ずつ実験に使用した。各実験において、1つのクラスターの遺伝子の位置を大きく変異させると、多くの突然変異遺伝子が生じた。それらの遺伝子はそれぞれ、その10ヶ所においてアミノ酸が混然となった変異版の酵素を特定している。クラスターごとにおよそ10万個の変異遺伝子がテストされ、そのうちのいくつかは3つのクラスターで機能することが判明した。4番目のクラスターで機能するものはなかった。おそらく、もっと多くの変異体をテストすれば、4番目のクラスターで機能するものが見つかっただろう。いずれにせよ、私は、これらの結果から、各クラスターで機能する変異体の割合を推定することができたが、この割合は、実際には第4のクラスターについての上限の推定値である。

図3: アミノ酸からタンパク質が構築される様子。アミノ酸は、遺伝子によって特定された配列で正確に1つずつ連結され、長く柔軟な鎖状分子を形成する (右上図)。ほとんどの天然遺伝子で特定されたアミノ酸配列は、左下の例に示すように、鎖全体が明確な三次元構造に折り畳まれるという非常に特殊な性質を持っている。科学者たちは、このような折り畳まれたタンパク質構造の特徴を見やすくするために、簡略化した表現を使用している。最も一般的なものは、右下の図で同じタンパク質 (ベータ-ラクタマーゼと呼ばれる) を示している「リボン図」である。リボン図の各コイルはアルファヘリックスと呼ばれる構造の要素を表し、各矢印はベータストランドを表している。この2つの要素が、ほぼすべてのタンパク質の構造を作り上げており、要素間の接続はターンまたはループと呼ばれている。ループはスパゲッティのようにペラペラに見えるが、通常はタンパク質の他の部分と同じようにしっかりと固定された構造を持っている。(『Undeniable』から許可を得て転載した。)

 

これらの実験に基づく推定値から、私は遺伝子全体が同じように変異していた場合に機能すると期待される変異体の割合を計算した。この割合は、タンパク質の進化にとって非常に重要な意味を持つ別の割合と密接に関係している。しかし、この重要な割合が何であるかが判明したことについて話す前に、 この割合を適切な文脈に置くために、進化的思考を十分に理解する時間を取ることにしよう・・・・・・。

タンパク質に戻る

さて、ここでタンパク質に話を戻すが、タンパク質はこの描像に何を加えるのだろうか?その答えは、それらが生命に目的はないという説明を正しく否定するための常識的な原理を例証しているということである。このような原理は、タンパク質 (あるいは他の専門的な主題) を対象としなくても、十分に理解し、肯定することができる。しかし、タンパク質の中には、それを優雅に肯定するものを見出せるのだ。

 

先に述べた重要な割合は、ランダムに並んだアミノ酸の鎖が、ある特定の機能に適した安定した構造に折り畳まれるために必要な特別な物理的特性を持つ可能性である。これを進化論の用語に置き換えると、新しいタンパク質フォールドによって達成される特定の新しい機能が生物に利益をもたらし、かつその生物における遺伝的ミスによって既存のものとは大幅に異なる遺伝子配列が作られると仮定した場合、この割合は、その新しい遺伝子が、望ましい新しい機能を実行する新しいタンパク質をたまたまコードする確率である。私は、ペニシリン耐性酵素の実験結果を用いて、この確率をおおよそ次のように推定した。

 

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