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エミリー・リーブス
2024/5/7 6:39
1961年、流れ落ちる滝により捕食魚が乗り越えられない障壁が創成されるトリニダードの急峻な渓流で、キャリル・ハスキンズという名前の生物学者が、私たちがグッピーと呼ぶ小さな淡水魚の集団の多様性と個体群構造に気づき、記録しました (ハスキンズ他、1961)。
これをきっかけに、デイヴィッド・N・レズニック教授が率いる一連の美しい実験が始まりました。彼らは下流の淵 (捕食者が蔓延っている場所) のグッピーを捕獲し、上流 (捕食者が稀な場所) に移しました。実験は次のような質問に答えるためにデザインされていました。「適応進化は現実世界でどのように、なぜ、どのくらいの速さで起こるのか?」(レズニックとトラヴィス、2019) レズニックのチームが観察したのは、下流の淵にいたグッピーが上流の新しい環境に置かれると、急速な変化を遂げるということでした。移された個体は性成熟に達するのにより時間がかかり、より大きくなりました。しかし、これが起こる速度は驚くほど速かったのです。チームはダーウィンと呼ばれる単位を使って遺伝的変化の進化速度を計算し、化石から判明した速度のほとんどは0.1~1.0ダーウィンであったのに対し、それらのグッピーは3700~45000ダーウィンの速度で変化したと報告しました。
ダーウィンは1949年にJ・B・S・ホールデンによって定められた進化的変化の単位です。ほとんどの場合、古生物学で化石のマクロ進化的変化を比較するために使われます。上流と下流の環境の明らかな大きな違いは、上流に捕食者がいないことだったため、移されたグッピーで観察された、性成熟までの時間が遅れ、より大きくなったという表現型は、大型の魚による捕食がなかったことの直接的な影響と解釈されました。これは当初、「自然界における進化は、化石記録から推測されるよりもはるかに、数桁のオーダーで急速であるかもしれない」ことの証拠と解釈されました (Science News Staff、1997)。実際、『Science News』は1997年に下記のように報じています。
グッピーが化石記録から推定されるよりもはるかに速い速度で進化したため、レズニックは、このような短い時間スケールでの選択が、主要な進化的変化の背後にあるものとして十分強力であると提唱している。彼は、この研究は「大規模な進化現象と・・・我々が生きている間に見ることができるものとの両立が可能である」ことを実証していると論じている。(Science News Staff、1997)
地味なグッピー
この発表以来、地味なグッピーは私たちの目の前で起こっている進化の例としてだけでなく、急速なマクロ進化的変化が可能であることを実証する例としても持て囃されてきました。しかし、これら初期の分析には多くの仮定がありました。例えば、(私も含めて) 誰もがグッピーの表現型の違いに直接関与しているのは捕食だと仮定していました。このことは、ケネス・ミラーの著書『Finding Darwin's God: A Scientist's Search for Common Ground Between God and Evolution』における実験の要約が例証になっています。ブラウン大学の生物学者でインテリジェントデザインを批判しているミラーは、自然選択 (特に捕食に基づく選択) によって、上流に移されたものに対しては成長期間が長くなると大きな報酬が与えられる、なぜならより大きなメスはより多くの卵を意味するからだ、と説明しています。
グッピーが上流の捕食者のいない環境に移されると、自然選択は、性成熟までの成長期間が長くなる傾向に対して大きな報酬を与えるであろう。すなわち、体のサイズが大きくなると共に一匹のメスが産める卵の数が増えることによる、より多くの子孫を儲ける機会である。(ミラー、2007)
しかしレズニックと彼のグループは注意深い科学者たちで、下流の捕食率の高いグッピーを上流の捕食率の低い環境に移したときに観察された変化の原因として、さまざまな仮説があり得ることに気づいていました。幸運なことに、レズニックと彼のグループは、これらの仮説を検証するための実験をデザインし、実施するという挑戦に臨もうとしていました。
食べられるリスク
捕食主導の選択仮説によれば、捕食が緩和されるとグッピーはより大きくなります。このことは、捕食率の高い下流の淵では、大きな成魚の方が小さなグッピーよりも食べられるリスクが高いはずだということを示唆しています。レズニックのチームは再捕獲できるように個々のグッピーに目印をつける方法を考え出し、グッピーの成魚と幼魚の死亡率を容易に計算できるようにしました。しかし、このデータを収集したところ、これらの異なるサイズのグッピーの死亡率は同程度であることが判明しました。この発見は、変化の原因が直接的な捕食ではないことを示していました。では、何が変化の原因だったのでしょうか?
レズニック他がさらに多くの実験を完了し、その結果のレビューを発表したときに話を進めましょう (レズニックとトラヴィス、2019)。彼らは以下のように報告しました。
直接の捕食がグッピーの生活史に影響を与えるのではなく、グッピーが示したのは密度依存選択でした。ということは個体群密度が生活史形質に影響を与えていたことを意味します。捕食の少ない上流の淵では個体数が増えましたが、それは個体群密度の増大を意味します。このことにも選択効果があるのかもしれません。彼らのアブストラクトをそのまま引用します。「我々は、捕食の少ない集団における生活史、行動、生理機能に対する選択の主体が、高い個体群密度とそれから連鎖する生態学的影響であることを示した」(レズニックとトラヴィス、2019)。言い換えると、グッピーの個体群が密集すると、特定の対立遺伝子を保有するある個体が繁殖上有利になり、個体群内の対立遺伝子頻度が変化するというメカニズムだとされています。
異なる小川や淵からのグッピーの独立した個体群も、下流から上流に移された後、相似する対立遺伝子頻度が変化しました。アブストラクトより:「この勾配は多くの河川で繰り返されている。すなわち、それぞれの河川で、生活史、行動、形態、生理機能において、グッピーの個体群間に同じ多様化が見られる」(レズニックとトラヴィス、2019)。これは、小川Aのあるグループのグッピーと同じ対立遺伝子頻度の変化が、小川Bの別のグループのグッピーで観察されたという意味です。これは、そのような変化がランダム突然変異 (RM) によるものであれば、予想されません (ヴァン・デル・ジー他、2022年)。結局のところ、RMがまったく同じ変化を何度も繰り返す可能性はあるのでしょうか?
新たな突然変異は観察されませんでした。その代わりに集団内の既存の対立遺伝子頻度が変化しますが、これは常在する遺伝的変異に基づく自然選択 (NS) によるものだという仮説が立てられています。彼らが言うには、「導入された6つの個体群における生活史の急速かつ反復可能な進化は、この進化が新たな突然変異ではなく、常在する遺伝的変異によって促進されたことを意味する」。これは適応能力が生物の個体群そのものに組み込まれていたことを意味します。NSの「主体」によって選び取られた、何か新しく有用なことをするRMは存在しませんでした。
では、これはどのような種類の「進化」なのでしょうか?
これらの反復可能かつ相似的な変化は、典型的には自然選択の驚異的な現れであると考えられており、多くの科学者は、常在する遺伝的変異は、現在それを維持しているメカニズムと同様に、究極的にはランダムな突然変異から生じたと考えています。このように、捕食者がグッピーの進化をどのように形成したかという直接的・間接的仮説の両方において、RM/NSが究極の原因として識別されています。これは公平でしょうか?レズニックの仕事は、グッピーの個体群には常在する遺伝的変異がすでに焼き付けられており、ランダムな突然変異の役割は残されていないことを示しています。変異が焼き付けられていたということは、新規性が発生したのは歴史を遡り、変異が反応する環境圧力に直接接触しにくい状況においてということになります。しかし待ってください、RM/NSの両方が、進化と考えられ、マクロ進化の例となるものには必要ではないのでしょうか?
適応情報の源は不明
新規性の生成の起源がランダム突然変異であると同定することは、ダーウィン的マクロ進化の真正な実例を提供する上で極めて重要です。それなのに、ここで示されたのは、個体群が既存の遺伝的変異を利用していかに急速に適応するかという例です。したがって、これらの結果はダーウィン的マクロ進化にとって好都合な証拠にはなりません。それどころか、「私たちの目の前で起こっている進化」の例として以前喧伝されたものが、単なる個体群動態の一例に過ぎないことを実証しています。このことは、個体群間で遺伝的多様性が保存されている場合には、固有の環境に対して個体群内の個体が異なる最適化を示すことを意味しています。多くの人々が知りたがっている本質的な疑問が残っています。すなわち、適応を可能にする常在変異や遺伝的多様性の源は何なのでしょうか?
これは、いくつかの疑問が解決されたところで、最も重要な疑問が存続したまま残されているということです。ランダム突然変異 (RM) は、グッピーにおける急速な相似的変化の原因としては排除されました。自然選択の一形態である、捕食主導の選択も可能性としては排除されました。しかし、常在する遺伝的変異が究極的にどこから来たのかという未解決の疑問が残っています。次回の投稿では、この疑問についてさらに探求していきます。